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ボーフム市の公共住宅を視察する [都市デザイン]

筑波大学の大村先生が学生を連れて、ボーフム大学のウタ・ホーン教授のところを訪れている。ということで、数日ご一緒させていただくことにした。今日はボーフムの住宅プロジェクトを2事例、視察した。

最初に訪れた住宅は都心から南東にある事例であった。ボーフム市が所有する公的な住宅会社によって建設、運営された事例で高齢者を主要ターゲットにした事例であった。高齢者のために1階〜2階は、歯医者やクリニックなどがテナントとして入っている。路面電車の停留所が目の前にあって、アクセスは良好である。家賃は補助金なしで1平方メートル当たり8ユーロ。これは50平方メートルでは400ユーロ。まあまあ高い。

次に都心に近いとはいえ北側にある社会住宅を訪れる。この社会住宅は1平方メートル当たり4.3ユーロ。これは50平方メートルでも215ユーロ。随分と安い。このプロジェクトは補助金を州政府から得ている。北側ということであるが、優れたデザイン、公園と隣接していること、家賃が安いこともあり人気は高く、20戸近くの住宅に100世帯以上が応募をしたそうだ。これだけ需要があれば家賃をあげればいいと思うのだが、この点に関しては質問するのを忘れた。公共交通(路面電車)の乗り場に近く、さらにそこの住民の便宜を図るために銀行や商店などが1階のテナントに入っている。

ドイツは連邦政府の方針で家賃を11%以上は上げることができない。どんなにリノベーションに投資をしても上げることはできないそうだ。その結果、家主がリノベーションをすることを躊躇するような仕組みになっている。これは経済政策としては効率的ではないが、一方で賃貸する側からすれば家賃が急に上昇しないという事実は安心できる。その是非はともかくとして市場経済に譲歩しないドイツらしい制度である。

全般的に住宅を公共財、公共政策の重要な柱として位置づけるドイツと、住宅を民間による供給にほとんど任せる日本とでは同じレベルで比較はできない。ここらへんは、特に小泉政権の民営化推進以降は、我々に民営化=是という考えが植え付けられたためにより理解を遠ざける。しかし、このドイツの公共性を大切に捉える考え方は、成長が成熟化し、これから人口減少を迎える我が国が学ぶべき視点でもあると思われる。
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