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阿藤誠の『現代人口学』 [書評]

副題は「少子高齢社会の基礎知識」。まさにその通りで、非常に分かりやすく、かつ包括的に人口問題を整理している良書である。これから少子高齢化がさらに進む日本人必読の書ともいえよう。

筆者は、老年従属人口負担の増大を「一大マグマである」と形容しているが、高齢化による社会保障制度の問題がいかに深刻な問題であるかがよく理解できる。また、日本企業の伝統的な雇用システムである年功序列も不適合であることも理解できる。まあ、いろいろなことがよく理解できる教科書としても適切な書であろう。

本書から考察されるのは、高齢化問題への対応方法は「高齢者の定義を変えること」が一番妥当であろうということだ。現在の高齢者のような社会保障を、我々そして若い世代が受けることはもはや不可能なのである。高齢者の労働参加を促すという方法論しかないように思える。それに加えて、現行の「贅沢すぎる」高齢者への社会保障は段階的に少なくさせていくしかないであろう。社会保障制度の前提であった人口構造が大きく変化してしまったのである。高齢者は死ねというのか、といった感情論を持ち出さずに、しっかりと状況を把握して、冷静なる議論をすることが求められる。また、少子化対策に関してもその是非をしっかりと両極から整理していて、その問題点が明瞭に理解できる。少子高齢化問題に関して議論をする基礎的な情報を得るために本書はうってつけであると思われる。

現代人口学―少子高齢社会の基礎知識

現代人口学―少子高齢社会の基礎知識

  • 作者: 阿藤 誠
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 単行本



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