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なぜドイツでは人口12万程度の都市に路面電車が走っていられるのだろうか [都市デザイン]

ドイツはヘッセン州のヴュルツブルクを訪れる。人口が12万程度ではあるが、鉄道の結節点でもあり、この地方の中核的都市として位置づけられる都市である。この都市にはなんと路面電車が走っている。しかも結構、頻度が高く、祝日の昼間であったが、結構、乗客も乗っていた。中心市街地では、トランジット・モールになっており、結構、多くの人が路面電車を待っていた。非常に不思議だ。

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(ヴュルツブルクのトランジット・モール)

日本で人口が12万人で地方において拠点性を有している都市というと、掛川市、焼津市、豊川市、草津市、延岡市、会津若松市、上田市か。こうやって列挙すると、まあ路面電車が走ってもおかしくないかもしれない都市の格があるなと思うのと同時に、しかし実際、走らせたら大赤字になるだろうな、とも思う。なぜドイツでは人口12万で路面電車が運営できるのであろうか。まあ、その回答はひたすら大赤字でも運営しているからである。私が知っているのは人口が50万人のシュツットガルト市の例だが、この都市でも運賃収入は3割にも満たなく、残りは州政府、連邦政府からの補助金で賄っている。これは、まさに公共交通が「公共」であるという理解があるからで、日本のように公共交通に事業採算性を求めるのは世界でも極めて希有な例なのである。よく考えなくても、道路は事業採算性をまったく求められていないのに、どんどん整備されるのに公共交通が事業採算性が求められているのはおかしな話であることは分かる(高速道路は事業採算性を求められているが、新たに整備されるものは半永久赤字であることは明らか)。

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さて、ここでポイントは公共交通を整備するとどのような便益が、そこで住む市民に得られるかということになる。まず、それは中心市街地へのアクセス性をあげることで、その中心性を高め、だらしなくスプロールするエネルギー効率や都市経営効率の低い都市構造を改め、よりコンパクトな都市構造を誘導する。また、それによって自動車が運転できない若者や高齢者の移動性が格段に向上するし、自動車が運転できても運転したくない人達(例えば、お酒を飲んだ場合)に移動の多様性を提供もする。そして、それは都市アメニティを高めるうえでも優れている。なんか、路面電車が走っている都市ってわくわくするではないか。東京がさいたま市や横浜、千葉などと比べてちょっといいなと個人的に思うのは、都電荒川線や東急世田谷線が走っていることである。都電荒川線なんかは、都電モナカといった銘菓(意外に美味しい)まであったりして、この事実だけで、キャラとしてのコンテンツも優れていることが分かる。横浜市営地下鉄モナカは売れなさそうだし、千葉モノレールは不味そうだし、さいたま市などは地下鉄もモノレールもない。私は現在、自動車を使わずに毎日のように路面電車を使う生活をしていて、非常に快適な思いをしているので、そういうこともあって公共交通への思い入れが強くなっているのかもしれない。

まあ、論理的に思考しているわけでなく、徒然に路面電車のメリットを列挙してみたが、まあ、それでも十分、公共のお金を使ってでも整備した方が好ましいのではないか、という気がする。少なくとも、例えば東京にしても、下北沢に幅員20メートル以上の道路を整備するよりかは路面電車を、例えば銀座から桜田門を通って、桜田通りを五反田まで南下させるルートや、銀座から半蔵門を通って、新宿通りを四谷三丁目まで行き、そこから早稲田まで北上するルートや、今、いらないほど広幅員にしてしまった山手通りに通らせたりすることの方が、その国際競争力を高めるうえでもはるかに賢明だと思うのだがいかがであろうか。そして、人口12万のヴュルツブルクでさえ路面電車が走らせられるのであるから、日本の地方都市も郊外を一生懸命開発するのではなく、路面電車の可能性を真剣に検討するといいと思われる。路面電車がいやなら、トランジット・モールを整備してバスを走らせてもいい。何しろ、公共性の質の高さが都市の魅力であることは、もう定義のように明らかであるので、そこをじっくりと考えることが人口縮小時代に都市が生き残るための極めて重要な要件であるからして、公共交通をしっかりと整備することを考えた方がいい。ということを、ヴュルツブルクという街を訪れて考えさせられた。


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