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ヴェルニゲローデというハルツの宝石のような町を訪れる [地域興し]

ハルツ山岳鉄道の起点はヴェルニゲローデ(Wernigerode)というハルツ山系の麓町である。人口は約3万5千人という小都市だ。ここに一泊した。このブログでも紹介した池内紀氏の『ドイツ町から町へ』という名著でも、このヴェルニゲローデは紹介されている。それによると、ハルツ地方には、おしりに「ローデ」とつく町が多いそうだ。これは、「森をひらいた」という意味だそうだ。森をひらいた、ということは近くに豊富な木材があるということで、このヴェルニゲローデをはじめとしてクヴェードリング、ゴスラーといったハルツ山系周辺の街は木組みの家並みが美しい。

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(1583年に建てられた木組みの家。現在は1階はカフェになっている)

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(広場と駅を結ぶ歩行者専用道路)

これは大雑把な意見であるが、ドイツの都市の景観は戦災に遭わなければ大抵美しい。とはいえ、ほとんどの都市が第二次世界大戦で破壊されてしまっているので、そのような都市や町を探すのは難しい。加えて、旧東ドイツの社会主義時代には、歴史や伝統を軽視した開発が進められた。友人でベルリンの都市史の論文を執筆したフランク・ルーストは、ベルリンはむしろ第二次世界大戦より社会主義時代に都市の破壊が進んだと指摘する。そういう中、東西ドイツの国境に近く、ベルリンからも離れていたこのヴェルニゲローデは第二次世界大戦での戦禍もそれほど受けず、社会主義の開発拠点にもならず、歴史に取り残されたかのような街並みと雰囲気を残すことに成功した。そして、今日まで残った建築には1498年に建設された市庁舎などが含まれる。この木組みの市庁舎は町の中心の広場に面して建っており、素晴らしい存在感を放っている。他にも、街並みを構成するカラフルで多彩な木組みの家々が興味深い。おそろしく斜めになっている家もあるが、斜めな状態を活かしてリハビリなどもされている。

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(市庁舎)

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(間口が非常に狭い家)

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(傾きまくっているが、その状態を活かしたまま使われている)

ローデンブルグを始めとしたロマン街道の町々やバンベルグの町を知らないのでいい加減なことは指摘できないが、このヴェルニゲローデという町ほど、そこを歩くだけでわくわくさせ、その個性的な家々が集まることによってつくりだす調和が生み出す景観の何ともいえない素晴らしさはドイツ屈指ではないかと察する。このヴェルニゲローデと同じ日に訪れた近くのクヴェードリングは教会や城とともに街並みが世界遺産に指定されているがヴェルニゲローデの方がしっかりと街並み整備等に投資がされており、一観光客としてはこちらの方がよい印象を受けた。少なくともクヴェードリングに比べて、このヴェルニゲローデの市庁舎の方が遙かに立派で建築的にも優れている。ちょっと電車で来るにはどこからも遠いというのが何だが、訪れる価値は極めて高い町だと思う。ハルツ山岳鉄道で来られた際には、是非ともこの街並みを堪能する時間を取っておくことをお勧めしたい。

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(市街地を離れた高台に町を見下ろすように城が建っている)
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