SSブログ

ボンを訪れ、駅前は都市の玄関であり、しっかりと整備すべきだということを再確認する [都市デザイン]

ボンを訪れる。1991年にベルリンに首都を移すまで、1949年から西ドイツの首都であった都市である。人口31万強。フランスの首都はパリ、イギリスの首都はロンドン、スペインの首都はマドリード、イタリアの首都はローマ、ポルトガルの首都はリスボン、オランダの首都はアムステルダム、デンマークの首都はコペンハーゲン、ロシアの首都はモスクワ、オーストリアの首都はウィーン、スウェーデンの首都はストックホルム・・・。いうまでもなく、ヨーロッパの国々は、その首都をその国が擁する最強の都市に指定していた。ドイツの最強の都市は比肩するものもなくベルリン。ベルリンの人口は400万人と、次点の都市ハンブルグの180万人の倍を擁する。しかし、ベルリンは東ドイツに位置づけられた。となると、西ドイツはどこを首都とすべきであろうか。人口という観点からはハンブルグ、ミュンヘン、ケルンが突出している。しかし、ハンブルグ、ミュンヘンは地理的に北、南すぎる。そうするとケルンか。

しかし、実際、ボンの対抗馬となったのは、ケルンの次に人口規模が大きいフランクフルト・アム・マインであった。ミュンヘン、ベルリン、ハンブルグといった大都市からほぼ等距離にあり、地理的にも国の中間に位置する。フランクフルトで問題がないと思われたのだが、当時の西ドイツ首相であったアデナウアー首相の政治的判断でボンになったそうだ。ちなみに、アデナウアー首相は前ケルン市長。ケルンは日本でいえば京都のような歴史文化都市。ケルンでいいとも思われるのだがボン。ボンの何が素晴らしいのか、ということでその魅力を知りに訪れたのである。

さて、ボンの中央駅を降りると、その駅のあまりの貧弱さにちょっと驚く。ルール地方のドルトモントはもちろんのこと、人口規模が同程度のボーフム駅と比べてもちょっとあまりにも貧弱である。屋根は低いし、暗いし、なんかイギリスをイメージさせる陰鬱さである。これが、元首都の玄関口なのかと唖然とする。素晴らしい都市を体験できるだろうと期待に胸膨らませたのに、いきなり袖にされた気分である。天気はよかったが、駅前からマルクト広場への道もなんか魅力に欠けた。マルクト広場は、この都市の心臓的な空間であるが、たいへん魅力的な旧市役所の建物があるのと同時に、新しく建てられた現代的な建物がそれらの歴史建造物とミスマッチを起こしており、ドイツの中心市街地の広場としては、低レベルであるのに驚く。ブリュッセルのグラン・プラザとは比較もできないが、例えば、ハイデルベルグやゲーリッツ、フライブルグなどボンよりも小さいドイツの都市の広場に比してもずっとレベルが低い。

IMG_3564.jpg
(ボンの駅前。ちょっとしょぼすぎないか)

IMG_3637.jpg
(駅の連絡通路も貧相だ)

IMG_3642.jpg
(駅前の景観。無粋な建物が目の前に建つ。左手に見えるのが駅舎)

IMG_3613.jpg
(マルクト広場。戦後建てられた安普請の建物のチープな意匠が気になる)

なんかなあ、何でこの都市が首都だったのか、という疑念だけが膨らむ。その後、ボン大学に行き、その素晴らしくデザインされたキャンパスを見たり、栗並木が続くモールを見て、その都市のクオリティの高さに感心したりしたが、それでも駅の貧弱さは納得できない。別に首都だから立派にする必要はないかもしれないが、ドイツだって、ベルリンの中央駅なんか、もう成金のように立派なものをつくって見栄を張っているではないか。その見栄の張り具合は、第三者としても痛快なものを感じたりする。首都なんだから、格好つけるのはそんなに悪くないと思う。もちろん、でかくしたり、装飾にいたずらに凝る必要はないだろうが、来訪者が気持ちよくなるくらいのホスピタリティを駅は有するべきだと思う。首都だったんだから。駅の裏口なんか、本当にみすぼらしくて悲しくなる。まあ、謙虚さを演出しているのであれば、それはそれで含蓄ぶかいが、外国人なんてそもそも、そんな奥深い謙虚さを理解するほどの洞察力は往々にして持っていない。単にケチなんだろうとか、センスが不足しているんだろうと思われるのが関の山である。駅というのは、その都市の玄関口である。玄関をしっかりとさせるというのは、来訪者へのホスピタリティ、その都市の矜恃を示すことになるのだ。そういう点では、ボンの駅は全然、駄目。まあ、立派な建物にする必要はないだろうが、動線、アメニティといった点では改善の余地が大きい。すごくもったいない。

IMG_3633.jpg
(栗並木のモールのアメニティは高い)

IMG_3636.jpg
(しかし、これが首都の玄関口の駅の裏口かね)

ということで、ボンがなぜ首都になったのか。また、なぜベルリンに首都を移した際、ボンに残ろうと多くの人々が判断したのかは、今回の短期訪問では理解に至らなかった。まあ、これは宿題として自ら課しておき、またそのうち、この続編をブログに書けたらと思う。
nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0