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ワールド・ベーシック・クラシックの監督人事迷走にみる日本プロ野球界の問題 [スポーツ]

ワールド・ベーシック・クラシックの監督が原巨人監督に決定した。星野仙一氏にほぼ内定していたにも関わらず、イチローが強烈なメッセージを発した。「勝つためには足並みを揃えることが必要。WBCを北京のリベンジと捉えているようなら、とても足並みを揃えることはできない」。星野仙一を監督にする出来レースの人事に対しての批判であり、恐ろしいほどの正論である。その正論さが世論を動かし、たまらず星野氏は監督を固辞。いつもはにこやかに笑顔をマスコミに振りまく星野氏が、監督人事のコメントをテレビのレポーターから求められた時は、政治家のように憮然として一言も発しなかったのは印象的であった。

このイチローのメッセージが強烈なのは、その内容に留まらない。従来の日本社会であれば、このようなおかしい人事があっても、若い人間が口出しをすることは考えられない。せいぜい陰で「やってられないよな」と愚痴をいうくらいが関の山である。ましてや、マスコミで堂々と発言をするなんてことは、むしろそういう発言をした方が「世間知らず」、「青臭い」と非難されるくらいである。しかし、イチローの発言は今回、そのようには世間で受け取られてはいないようである。批判の範疇に入る王監督でさえ「イチローの言うことは分かる」と理解を示したそうだ。世間では、生意気だというよりかは、むしろ、爽快感、「よく言った、偉いぞ、イチロー」という雰囲気が蔓延しているように思われる。これは凄いことだな、と思う。なぜなら、イチローというのは、こういう世間的な常識でさえ覆されるくらい、年長の人も含めて、その言動に敬意をもたれているということが分かったからである。そして、イチローがこのような発言をする背景には、星野氏が北京オリンピックで選手から疎んじられていたことが推察される。推測の範疇をでないが、イチローが個人的な気持ちであのような発言をしたとは思えない。おそらく、代表に選ばれる選手の気持ちをイチローは代弁したのだと捉えるべきであろう。したがって、野村監督の「イチローが監督すればいいじゃない」というのは、半分鋭い指摘ではあるが、半分は外していると思う。

今回の監督人事で興味深かったのは、ほとんど誰もこの監督をやりたがらない、という事実である。有力候補であった落合監督も野村監督もやりたがらなかった。野村監督は原監督に決定した後は、話が来たらやりますよ、とテレビで発言していたが、それ以前の発言を踏まえると、とても本音とは思えない。原監督は一件、妥当な選択とは思われるかもしれないが、巨人という超巨大戦力で独走できない監督が優秀であるというのはちょっと疑わしい。むしろ、巨人ほど戦力が整っているチームを率いているにも関わらず、あまり勝てない監督、というふうに捉えるべきであろう。少なくとも前半の戦いぶりからして短期決戦に強いとはとても思えない。それに比して、下馬評にものぼらなかった西武をリーグ優勝させた渡辺監督、戦力ではるかに劣る中日というチームで選手をやりくりして優勝させた経験のある落合監督の方が、おそらく監督としては優れているだろう。やる気の問題という点があるのなら、唯一現役監督で手を挙げたバレンタイン監督にやらせるのがベストではなかったのだろうか。彼はどうみても原監督より優れた監督であろう。私はあまり野球に詳しくはないが、それって素人目にも明々白々だと思うのだが。原監督がロッテを率いて、バレンタイン監督ほどの成績を残せるかどうかは甚だ疑わしい。なぜ、サッカーでは外国人監督がオーケーなのに野球だと駄目なのだろうか。所詮、野球もアメリカから輸入したスポーツではないか。

今回のWBCの監督人事で、また出てきたのがナベツネである。まったくの私見であるが、彼こそがここ二十年くらい、プロ野球をつまらなくした張本人だと思っている。逆指名制度やら、フリーエージェントやら、彼は球界の戦力の格差拡大を促し、プロ野球の楽しさを大いに失わせた。そもそも、全然、野球が好きでなく、ルールもろくにしらなかったような人物が、プロ野球の影のドン(あまり影ではないか)となっていることこそが、日本のプロ野球の悲劇であり、大リーグとの大きな違いである。このナベツネがWBCに口を挟んでいるということで、もうWBCへの興味は個人的に相当減殺された。しかも、なぜか加藤コミッショナーという元外交官がWBCの監督人事を任されている。なんなんだ、このへんてこりんな人事システムは。そもそも加藤コミッショナーとナベツネだと、どうみてもナベツネがボスで加藤コミッショナーは小間使いのような感じだ。どうせならナベツネがコミッショナーになった方がすっきりする。どうせ、彼のしたい放題なのだから。それにしても、こういう状況をみると、サッカーに比べても野球は旧態依然であるという印象を受ける。大リーグにイチローをはじめとした多くの人材が逃げ出すというのは、大リーグの方が高いレベルの野球ができるというよりかは、こういう旧態依然のシステムに辟易とするところもあるからではないのか。新日本石油の田沢投手は、日本のプロ野球を経ずに大リーグに直接挑戦するという決断をしたそうだが、自社の新聞の部数を伸ばすためだけに野球を使う、というようなせこい人、野球を好きでない人が牛耳っている日本のプロ野球は、やっぱり魅力がないよね。ファンからしてもプレイヤーからしても。

とはいえ、中日と巨人のCS第一戦のダイジェスト版をみたが、凄い試合だった。これこそが野球の本質的な魅力である。こういう野球を高いレベルでやるには、妙な私利私欲をシステムに導入させないことであろう。野球にはそれほど関心はないが、素晴らしい競技であると思う。その素晴らしい競技の競技者であるプレイヤーに思い切って能力を発揮させる場、そして、そのような機会をつくるために監督候補などが一肌脱ぎたいと思わせる環境を提供することこそがコミッショナーの使命だと思う。


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