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マックス・リンデガーに再会する [サステイナブルな問題]

オーストラリアのクイーンズランド州にあるエコ・ビレッジを計画したマックス・リンデガーに会って、いろいろと話をする。二年半ぶりの再会である。日本の農業政策、特に減反政策などを推進してきたことに対して、マスコミなどが問題であると取り上げつつあることなどを話す。米が余っているのに、日本人は米の消費量を減らし、代わりに小麦などを消費するようになっている。同様に日本酒の消費量を減らし、ワインの消費量が増えている。トヨタなどの優れた日本車や江戸切り子などの優れたガラス工芸品、セイコーなどの時計を擁しているにも関わらず、象徴としてのベンツやバカラ、ローレックスを有り難がる。馬鹿だよねえ、本当に。消費者としての行動は極めて非国民だ。非国民ということは、まあどうでもいいかもしれないが、あまり賢くない。というのは日本で飲むなら日本酒の方がワインより安くて旨いからだ。そもそも、ワインの美味さなどが日本人にそうそう分かってたまるか。分かるのは川島なお美を初め、ごく少数の人間だけだろう。

オーストラリアの経済が最近、好況なのは鉱業が好調だからだ、との説明も受けた。一方で自動車産業とかは壊滅的な状況であるそうだ。そりゃ、これだけオーストラリア・ドル高だと国際競争に晒される産業は相当きついだろう。20年ほど前は100円が43豪ドルくらいであった。現在は105豪ドル。日本が超低金利を続けてきたこともあるが、ちょっとこの差は大きい。その結果、観光産業はきついようだ。確かに、私が20年以上前に来た時と比べると2倍以上高い、ということは実感できる。というか、インフレもあるので、実質的には3倍近いような印象を受ける。よほどの金持ちでなければオーストラリアにはそうそう来られないであろう。アメリカのほうがはるかに安上がりで観光ができるような状況になってしまっている。

加えて、日本人と韓国人は、欧米人よりはるかにまじめでしっかりと仕事をするというような話も聞いた。ただし私的には、日本人でも随分と時間にルーズだったり、しっかりと課題ができなかったり、口先だけだったりの学生をよく知っているので、ちょっとそこらへんを褒められても、お尻がむずむずする。まあ、誤解されていることは、こちらにとっては都合がよいので、特に否定するようなことは言わなかったが。

マックスは最近では、タイ、インド、カンボジアなどでパーマカルチャーの指導をしている。カンボジアで米作をしている農民は、化学肥料を使っている。化学肥料を購入する額が高く、米をつくると赤字になる。赤字になってもつくり続けている。どうしてか、と聞くと、どうすればいいか分からないから、という。ポルポト政権下で知識階級を皆殺しした結果だろうか。知恵がある者、先生となるような者がカンボジアにはいない。マックスは、しかしカンボジアの農村では藁や牛糞が使われていないことに気がついた。これらを使って堆肥をつくり、有機農業にすればいいじゃないか、と言うと、何だそりゃ、みたいな反応が返ってきた。そこで、堆肥をつくり、化学肥料を使わない農業を実践させたところ、うまくいくようになったそうだ。自分では当然だと思っていることも、意外に気付かれていないことが多いんだ、ということをマックスは指摘した。そうかもしれない。私も自分が当然だ、と思ってもそういうことを理解していない学生に結構、出くわす。当然なことを説明することを怠ってはいけない、ということを認識させられた。

まあ、そういうような話を90分ほどした。充実した時間を過ごすことができた。長女が風邪なので家族を紹介できない、という話をすると、自分の畑から風邪に効くから、と言って、柑橘類、自家製蜂蜜、そしてブロッコリーや水菜、といった野菜を取ってきてくれた。ちなみに、これらは抜群に美味しく、マックスがパーマカルチャーを実践するようになったきっかけが、「美味しいものを食べたいから」と言ったことが非常によく理解できた。そうそう、マックス・リンデガーとの取材記事を掲載した『サステイナブルな未来をデザインする知恵』が鹿島出版会からそれほど好評ではなく発売中です。おそろしく売れていないので、宜しければご購読下さい。希少な読者になれます。


サステイナブルな未来をデザインする知恵

サステイナブルな未来をデザインする知恵

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 鹿島出版会
  • 発売日: 2006/04/14
  • メディア: 単行本



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