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椎名林檎 [ロック音楽]

私は何を隠そう椎名林檎のファンである。どこが好きかというと、あの楽曲の素晴らしさで、曲づくりに関しては、世界的な観点からみても天才だと思う。彼女が例え、アイスランド人でも、セネガル人でも、ミャンマー人でも、そして英語ではなく、その国の言語で歌っていたとしても、私はファンになっているだろう。ロック・ミュージシャンとしては傑出している。というか、少なくとも最初の2枚のアルバムの天才性は、度肝を抜くレベルの高さである(その後のアルバムはたまに、その片鱗を見せつけるが、この2枚の迫力はほとんど感じられなくなっている。アラニス・モリセットやリッキー・リー・ジョーンズで見られた現象と似ている。アラニス症候群とでも命名するべきか)。

この2枚のアルバムは、基本的にセットで捉えられるべきもので、本質的には2枚組としての1つのコンセプト・アルバムである。作曲した時期がむしろ2枚目の方が早いものが含まれるなど、1枚目を出す前からほとんどの曲が揃っていたと考えられ、デビュー以前から、非常に戦略的にどのようなアルバムをつくっていくかを把握していたと思われる。SMというコンセプトで、一枚目がM、二枚目がSである。しかし、一枚目に「丸の内サディスティック」が入っていたり、極めてM的な内容の「浴室」が二枚目に入っているなど、特にMとSと含まれている曲との関係性は見出せない。まあ、SにしろMにしろ、全般的に、「して」、「しててね」という要望系が多いことに気付く。彼女は基本的には常に、相当、Sであると思われる。もう一つの特徴は、自分の身体に関する表現が多いことで、「モルヒネ」、「病床パブリック」などが典型的である(あとアルバムには入っていないが「眩暈」などがそうですね)。彼女は、対象を客体化する能力に長けており、それは自身の身体にまで及ぶ。これらの曲では、自分の身体をあたかも遊体離脱して、上から観察しているかのような、医者が患者を診察するような描写をしている。その観察力の鋭さが、その詩にやくざの睨みのような凄みを内包させることに成功させており、油断して聴いているとびびる。

ともかく、この2枚のアルバムがつくりだす世界観は、まさに椎名林檎の世界で、私小説のようなものなのだが、彼女の狂気的なエモーションが、音と詩を媒介させて、比類なき音楽をつくりだしている。この狂気さを、しかし、天才的な才能がしっかりとフレームに押し込め、しかも彼女のオリジナリティが極めてユニークな椎名林檎だけしかつくりだせない音楽を紡ぎ出すことに成功している。そして、そのオリジナリティが日本的である、すなわち日本の風土をくみ取っていることに、日本人として震えるような感動を覚えるのである。さきほど、アイスランド人でも、セネガル人でもファンになっていると書いたが、それは楽曲を好きになっているということで、幸いにして椎名林檎が日本人であるため、日本人は彼女の優れた楽曲だけでなく、それに加えて詩を始めとした彼女の和風的なエッセンスもアプリシエートできるのである。私は別にそれほど日本人であることを幸せだとは思わないが、旨い寿司を食べた時と椎名林檎を聴く時には、ああ幸せと思ったりする。

と夜長に少し、椎名林檎を考察してみたが、改めて分かったのは、椎名林檎というのは、相当怖いということである。DVDでは楽屋裏でおどけて、なんとも可愛くみえる人が、こんなに怖いというのは、やはり女性は恐ろしい(ってこんな結論になってしまいすいません)。

無罪モラトリアム

無罪モラトリアム

  • アーティスト: 椎名林檎,亀田誠治,川村“キリスト”智康係長,森“グリッサンド”俊之本部長
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1999/02/24
  • メディア: CD
勝訴ストリップ

勝訴ストリップ

  • アーティスト: 椎名林檎,亀田誠治
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2000/03/31
  • メディア: CD
Electric Mole (通常版) [DVD]

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  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • メディア: DVD


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