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ベルリンがなぜダメなのか [ドイツ便り]

ベルリンは驚くほど市役所の事務手続きが出来ない。私は以前、デュッセルドルフに住んでいたことがあるのだが、そこと比較しても恐ろしく業務がこなせていない。ということで、これは国の違いではなく、何かベルリンには特有の事情があると思われる。
その点を知り合いの現地の人に聞いたら、それはあるあるであった。ベルリンは第二次世界大戦後、二つの都市に分離された。ベルリンはドイツ最大の都市ではあるが、実際はまったく交流もなかった都市をいきなり1990年にがっちゃんこして、一つの都市になりなさいみたいにしたような都市だ。まったく縁もなかった男女がいきなり、結婚して、しっかりと家庭を築きなさい、と言われたようなものだ。しかも、社会制度も法制度も価値観まで違っていたのだから、そりゃ、上手くいくと思う方がおかしい。しかも、ちょっと前までは感情的には敵対さえしていたのだ。
さて、ベルリンが統一した時、そのイニシチアブを取ったのは西ベルリンであった。というか、ドイツの再統一は基本、旧東ドイツの旧西ドイツ化なので、当然、ベルリンでも旧西ベルリンの考え方が広められた。さて、ここで旧西ベルリンがしっかりとしていれば、まあそれでも多少は、今ほどベルリンは酷くならなかったかもしれない。しかし、問題は旧西ベルリンも超絶、ダメダメだったのだ。これは、どうしてかというと、もう旧西ベルリンは存在すればいいだけであったので、存在するためには、西側はどんどん空輸で物や富を運んだし、どんなに仕事ができなくても、それが糾弾されることはなかった。それは、存在さえすればそれが価値になったからである。地図上にあればいい。そういう状況に45年間いたら、それはどんなにしっかりとしていた人でも、組織でも骨抜きになるだろう。それは、ある意味で社会主義よりも競争社会ではなかったのだ。
したがって、ベルリンは、建前上は資本主義になったのだが、資本主義的に活動していた人はそれまで東はもちろん西にもいなかったのである。顧客サービスの意識があまりないのはドイツ全般に言えることではあるが、それでもベルリンは酷すぎると憤怒していたが、それは、ベルリンは別にそんなことをしなくても生き延びられたのだ。まさに、天から物が降ってきた都市だったので、人にペコペコする理由や愛想を振りまく理由がなかったのである。うむ、そう考えると納得だ。ただ、逆にそのようなサービスのニーズがないかというと、ある。市場経済のロジックがしっかりと機能すれば、徐々にベルリンもよくなっていく可能性がない訳ではない。ただ、役所は相当、厳しいであろう。ベルリンの市役所がなぜ事務ができないかは、もう歴史的な要因に根付いているからだ。実際、ドイツでもなぜベルリンの市役所が仕事をできないか、の研究なども為されているようだ。ちょっと、文化人類学的にも面白いテーマだと思う。余裕があったら読んでみたいものである。

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