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槍ヶ岳(百名山61座登頂) [日本百名山]

登山者憧れの山、「いつかは槍ヶ岳」と合言葉のように呟かれる山、その槍ヶ岳に遂に挑戦することになった。個人的には最長歩行距離、最高標高差、さらに国内最高地点へのチャレンジでもある。私は太股の痙攣(ピキキ現象)、膝の痛み、高山病という三大ハンディを有しており、そもそも登山が向いていない体質だ。加えて、もう還暦を迎えた。その私が槍ヶ岳に挑戦することになったのは、それを一日遅らせるとそれだけ不利になるだろうという切迫感からだ。
最近、単独行が多いが、槍ヶ岳は会社時代の友人と二人で行くことにした。この友人は、もうベテランの域に達しており、パートナーとしては大変心強い。しかも、彼は松本にアパートを借りているので、前泊、後泊を彼の家でさせてもらった。前回、下山後、一挙に帰るのは体力的に厳しかったこともあったので後泊させてもらうことは有り難い。
さて、登山ルートであるが、一日目は上高地バスターミナルからインし、槍沢コースで槍沢ロッジにて一泊。そして、二日目に槍ヶ岳山荘にて荷物を置き、槍ヶ岳にチャレンジ。その後、槍ヶ岳山荘にて泊まり、三日目は飛騨沢コースを下り、新穂高温泉にてアウトというものにした。そのため、友人の車と私の車とをそれぞれ出し、まずは友人の車を新穂高温泉の無料駐車場に駐め、私の車で二人であかんだな駐車場まで移動。私の車はあかんだな駐車場にて駐車し、そこからバスで上高地バスターミナルにまで移動した。あかんだな駐車場は8時20分発のバスに乗ることができ、8時50分に上高地バスターミナルに到着する。
登山開始は9時ちょうど。すぐ河童橋に着く。穂高の山々の展望が素晴らしい。そこからは、梓川に沿って気持ちのよいカラマツ林の中を歩いて行く。明神を通過するのは9時50分。梓川の灰色がかったエメラルド・グリーンの色が美しい。そして、徳沢に到着するのが11時。ここのミチクサ食堂で、昼食を取る。私が注文したのは、窯焼きのピザ。取り立てて美味しくはないが、大自然の中なので、その見えないスパイスで美味しく感じられるので、お店的には得である。

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<河童橋の美しい景色を見ながら登山をスタートする>

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<いきなり美しい森の中を歩いて行く>

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<登山道は梓川に沿って設けられていて、気持ちがよい>

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<ミチクサ食堂>

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<ミチクサ食堂で注文したピザ>

さて、45分ぐらい休憩した後、また歩を進める。横尾山荘に到着したのは12時25分。ここはそのままスルーする。横尾まではほぼ平らな散歩道のようであったが、徐々に山道っぽくなってくる。槍ヶ岳が初めてその姿を現す槍見河原に到着したのは13時20分。そこから15分ぐらい歩くと一ノ沢に架かる木橋がある。この橋の麓でちょっと休憩をする。ここからは登りもだんだん増してくる。槍沢ロッジに到着したのは14時20分。一日目は登山道は極めて歩きやすく、ほどよい疲労感が溜まるぐらいであった。槍沢ロッジはなんと入浴ができる。15時から数時間だけだが、この入浴ができるというのは本当に有り難い。石鹸やシャンプーは使えないが、それでも疲れた筋肉をほぐすことができる。入浴後、夕食までに生ビールを飲む。生ビールは1000円と高額だが、溜まらなく美味い。生きていることが嬉しくなるような時間だ。夕食は17時からである。この宿はヘリコプターで物資が運ばれるので、夕食も豪華だ。唐揚げ、豆腐ハンバーグ、キャベツレタス、さつまいも、きんぴらゴボウ、ほうれん草と栄養のバランスも取れている。

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<横尾山荘>

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<槍見河原から槍ヶ岳を望む>

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<谷に流れ込む瀬が登山者の目を楽しませる>

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<一ノ沢>

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<槍沢ロッジ>

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<槍沢ロッジは清潔感のある山小屋。入浴もできるし、充電もできる>

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<槍沢ロッジでの夕食>

この日は夕食を取ったらすぐ18時ぐらいに寝る。さて、ここで3時ぐらいに起きられればいいのだが、起きたら0時ちょっと過ぎであった。これはロッジが暑すぎたからである。流石に早すぎるので、ふとんの中でもんもんと過ごす。3時ぐらいになると、さすがに人々が動き始め、4時頃には床を出る。パッキングを終えて5時の朝食後、5時30分に出発する。ちなみに朝食も塩鮭や海苔などもあって豪華であった。槍沢ロッジも既に標高が1820メートルあるのだが、これから槍ヶ岳山頂の3180メートルを目指さなくてはならない。これはなかなかの標高差だ。ということでゆっくりと登っていく。しばらく歩くとババ平というテント場に着く。ここらへんはずっと槍沢沿いに深い谷を登っていく。水俣乗越は6時40分。天狗原分岐は7時30分頃。この頃になると、随分と下山する登山者と道を譲り、譲られで登っていくことになる。インバウンドの登山者も多いが、台湾から来たと思しき中年の女性カップルがいきなり登っている私にリュックでぶつかってきた。思わず「痛い!」と言うと、後続の仲間の女性が私を睨んできた。どうも「登り優先」という認識を持っていないようだ。台湾の若い男性はそこらへんがしっかりと対応できているので、まあ、例外的なケースなのかもしれないが、不快な思いをする。

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<ババ平や槍沢ロッジから30分ぐらい歩いたところにある>

ジグザグのレキの坂道が続くが、それほど厳しくはない。ゆっくりと一歩一歩、確かめるように高度を上げていく。9時頃には目の前に槍ヶ岳が屹立するのが望め、登ろうという意思を強化させてくれる。坊主の岩には9時20分頃に到着。ちょっと休憩をして、山荘までの厳しい坂道を上がっていく。槍ヶ岳山荘に着いたのは11時10分。槍ヶ岳はもう目前に聳え立っている。この山荘からは、もう絶景をみることができる。

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<ジグザグのレキ道を登っていく>

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<槍ヶ岳が姿を現すと、スタミナ・ドリンクを飲んだように元気が出てくる>

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<とはいえ、最後の小一時間は標高も高いこともあり相当、厳しい>

さて、いつもは1000メートルを登ると太股の筋肉が痙攣するのがほぼ習慣となっているのだが、今回はまったくピキキの「ピ」の字もないように上手く登っていくことができた。昨日、ロッジで入浴して筋肉をしっかりと解せたからかもしれない。 
 山荘に荷物を置き、昼食を取り(レトルトのカレーライス)、軽装になって山頂を目指す。カメラも持って行くのを止めて、携帯のカメラで撮るようにする。山荘から山頂までは98メートル。これはほぼ垂直という感じで、はしごと鎖場を登っていく。ただ、個人的にははしごと鎖場はむしろ楽で、それらがない時に、しっかりとどこに足場とするのかを判断する方が難しかった。見るからに登山経験が浅い若者のグループが先に登っていたのでやたら時間がかかった。これは、山頂の面積が狭いので頂上にいられる人の数が限られているからだ。しかし、天気がよいので、待っているのはそれほど苦痛ではなく、寒くもなかった。とはいえ、天気が悪かったら、このはしご待ちなどは厳しいだろう。さて、山頂には山荘を発って30分ほどで到着。その展望は素晴らしいに尽きる。ただ、携帯カメラは画面が暗すぎて、操作をすることができず、頂上の写真は友人の携帯カメラで撮影してもらった。

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<槍ヶ岳山荘>

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<槍ヶ岳山荘から常念岳を望む>

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<岩にへばりついているように山頂を目指す登山者達>

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<山頂での記念写真>

 下りも前述した若者グループがぐずぐずしているので時間はかかった。まあ、しかし、他人のことはいえないが、登山経験が浅くて槍ヶ岳に来るのは無謀だと思う。今日のように天気がよければそれほど危険ではないかもしれないが、ちょっとでも条件が悪かったら結構、危ないと思う。
 さて、山荘に戻ったのは13時30分頃であった。夕食は17時ということもあり、どっと疲れも出てきたので一眠りをしてしまった。これがいけなかった。というのは、起きたら頭痛がしたからだ。これは高山病か?と心配になる。どうも、高度に慣れないうちに寝てしまうのは高山病になるから、してはいけないことのようだ。そうでなくても高山病になりやすい質なのに愚かである。しかし、深呼吸をゆっくりと何回かしたら徐々に治ってきた。友人が麦酒でも呑もうか、と言ってちょっと躊躇したが、どうもおしゃべりは高山病にはいいらしいので、ゆっくりと生ビールを飲むことにする。これは結果的に大丈夫であった。そして、夕食を食べて、ちょっと談話室で時間を潰し20時頃に就寝する。とはいえ、この日も1時前に起きてしまった。なんか睡眠のリズムが今ひとつになっている。
 4時頃に起床し、パッキングをして、明るくなってきた4時30分頃から日の出を見ようと外にでる。見事な朝焼けであるが、どうも槍ヶ岳が邪魔になってアングル的に日の出は見られないようだ。そばで立っているオジさんにそれを確認すると、「そればかりはしょうがない」と言われる。それで、山荘に戻ったのだが、実際は見られたようだ。こういう適当なことを言う輩には気をつけないといけない、ということを還暦になって再認識する。5時からは朝食。この山荘もヘリコプターで物資を運ぶだけあって贅沢だ。オクラ、焼き魚、ソーセージ、きんぴらゴボウ、卵焼き、お新香がつく。ここはご飯だけでなく、お味噌汁がお代わり自由なところが嬉しい。

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<徐々に明るくなってくる空に映える槍ヶ岳>

 5時40分には出発する。下りは飛騨沢コースを選んだ。常念岳や乗鞍、笠ヶ岳といった近場の山だけでなく、八ヶ岳や富士山までもを展望することができる。素晴らしい天気の中、標高を下げていく。キャンプ場の中を歩いて、少し行くと大喰岳と槍ヶ岳の鞍部にある飛騨乗越に着く。ここからは、レキの急坂をジグザグに下りていく。笠ヶ岳、さらには黒部五郎岳、白山を展望するという絶景の中をゆっくりと膝を痛めないように気をつけて下りていく。千丈沢乗越との分岐点は7時に通過する。そして、しばらく行くと飛騨沢が右手を流れ始める。その後は、樹林帯に入る。この樹林帯はずっと新穂高温泉まで続いていく。樹林帯の中は日影であり、その点ではとても有り難いが、展望も得られず、ひたすら歩いて行かなくてはならない。まあまあ、退屈である。とはいえ、集中を切らすと浮き石とかを踏んだり、濡れた岩で滑ったりするので油断はできない。

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<槍ヶ岳山荘からは富士山をも展望できた>

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<山荘からの笠ヶ岳の雄姿>

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<飛騨乗越から八ヶ岳を望む>

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<飛騨沢コースは途中から樹林帯をひたする歩くことになる>

 槍平に到着したのは9時ちょうど。ここでゆっくりと休む。槍平小屋ではコーヒー・バッグではあるがコーヒーを呑めたりするのは嬉しい。ここの標高は1990メートル。1000メートルは下りたが、さらに900メートルは下りなくてはならない。うーむ、なかなか厳しい。

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<槍平山荘>

 とはいえ、結果的に槍平小屋から新穂高温泉までの下りはそれほど厳しいと感じるものではなかった。ただ、疲労から踏ん張りが効かなくなっているので、その点だけが辛かった。時折、沢を越える時は気をつけないといけないが、それ以外は敢えて危険箇所はなかった。そして13時には穂高平小屋に到着する。ここで中華麺を食べる。中華麺は本当、チャーシューとメンマと葱という非常にシンプルなものだが、炭水化物を欲している身体には嬉しい。穂高平小屋からは近道があったが、あまり管理がされていないということと、5分ぐらいしか短縮できないということで、遠回りではあるが林道を歩いて戻る。新穂高温泉に到着したのは13時30分頃であった。新穂高温泉に置いてあった友人の自動車に同乗し、そのままあかんだな駐車場に行く。そこで自分の自動車を拾い、松本へ。槍ヶ岳に登頂し、無事に下山できた満足感が身体を包む。登山の醍醐味である。

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<幾つかの沢を越えて、新穂高温泉に向かう>

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<穂高平小屋での中華麺>

 さて、飛騨沢コースであるが、メリットとしては、槍沢コースに比べると標高差はあるが、距離は短い。また、バスに乗らずに自家用車のあるところまでそのまま下りることができるといった利点がある。加えて、槍沢コースに比べると登山者が圧倒的に少ない。これは、自分のペースで歩けるということだ。一方、デメリットとしては、槍沢コースに比べると圧倒的に歩きにくい。熊笹などの沿道の草木はある程度、手入れはされているが、それでもしょっちゅう身体に当たり、気になる。さらに景色は槍沢コースの方が圧倒的に優れている。水場も多く、歩いて楽しいのは圧倒的に槍沢コースの方だ。槍沢コースはしょっちゅう山小屋が出てくるのも嬉しい。ということで、特に登りは槍沢コースを行くのをお勧めする。ただ、下りは自家用車の駐車場に時間を気にしないでアプローチできるなど、状況に応じては選択肢に入れてもいいかもしれない。あと、登山ピーク時は槍沢コースの混み具合は相当、ストレスになるかもしれないので、こちらを選択肢に入れておいてもいいであろう。


<槍沢コース>
登山道整備度 ★★★★★ 素晴らしく歩きやすい。
岩場度 ★★★☆☆ 山荘直前ではなかなかの岩場を登らせられる。あと、槍ヶ岳山荘から槍ヶ岳は岩場度は100%。
登山道ぬかるみ度 ☆☆☆☆☆ まったくないと言ってよい。
登山道笹度 ☆☆☆☆☆ まったくない
虫うっとうしい度 ★★☆☆☆ 多少、虫はいる。
展望度 ★★★★★ 天気にもよるだろうが、素晴らしい展望が得られた。
駐車場アクセス度 ★★★★★ (駐車場へのアクセスは素晴らしい・・・あかんだな駐車場。ただ、そこからバスに乗って上高地バスターミナルにまで移動しなくてはならない)
トイレ充実度 ★★★★★ (コース沿いに多くの山荘、テント場があり、トイレには困らない)
下山後の温泉充実度 N/A (このコースでは下山しなかった)
安全度 ★★★★☆ 登山道は非常に安全で怪我をするようなところはないが、登山客が多く、またマナーをあまり理解していない素人登山者が外国人を含めて多いので、その点は問題。

<飛騨沢コース>
登山道整備度 ★★★☆☆ 登山道は整備されているが、多少、歩きにくいところが数カ所散見される。
岩場度 ★★★★☆ 下山直後はなかなかの岩場を下らせられる。
登山道ぬかるみ度 ★☆☆☆☆ 樹林帯に入った後、多少ある。
登山道笹度 ★★★☆☆ 樹林帯に入った後は、熊笹が結構、生えており歩きにくい箇所が数カ所ある。
虫うっとうしい度 ★★★☆☆ 樹林帯に入った後は、虫が多少、鬱陶しい。虫除けスプレーを使った。
展望度 ★★★☆☆ 樹林帯に入るまでは素晴らしいが、樹林帯に入ると、展望はあまり得られなくなる。
駐車場アクセス度 ★★★★★ (駐車場へのアクセスは文句なし。ただ、駐車場から登山口までは結構、距離がある)
トイレ充実度 ★★★☆☆ (コース沿いに幾つかの山荘、テント場があり、これらでトイレを使えるが、そうでないところは多少、困るかもしれない)
下山後の温泉充実度 ★★★★☆  (新穂高温泉の温泉は相当、いいのではと個人的には考えている)
安全度 ★★★☆☆ 危険箇所は特にはないが、浮き石、濡石などで足を掬われる可能性がある。

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