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ケビン・デュラントのトレードについて考える [スポーツ]

ミドル・レンジ・シューターとしては現時点のNBAで最高峰のケビン・デュラントが衝撃のトレードでブルックリン・ネッツからフィニックス・サンズへ移籍した。一年前は、ケビン・デュラント、ジェームス・ハーデン、カイリー・アービングと超スーパースターを揃え、史上最強の誉れも高かったネッツだが、一年後は「そして誰もいなくなった」状態になってしまった。ケビン・デュラントはまだ3年間、契約が残っているのでトレードに出す必要もないのに、ネッツはデュラントの主張に屈服してしまった。そして、そのトレードはミケル・ブリッジ等と複数のドラフト権というネッツには極めて不利なものであった。せめてデアンドレ・アイトンを含むことはできなかったのか。

さて、ケビン・デュラントは素晴らしい選手ではあるが、なかなか人間的には難しいところがある。オクラホマ・サンダースではラッセル・ウェストブルック、ジェームス・ハーデンという素晴らしい選手に恵まれていたが、優勝できなかった。そして、ウェスタン・コンフェレンスのファイナルで3勝1敗から大逆転を喰らって負けたゴールデンステート・ウォリアーズに移籍し、余裕で2連勝する。しかし、これらの優勝でケビン・デュラントはMVPを受賞したりしたにもかかわらず、チームの中核的存在はステフェン・カレーであり、彼が主人公のチームのままであった。当たり前だろう。ステフェン・カレーだけでなく、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンといったウォリアーズの核メンバーは皆、生え抜きなのである。ケビン・デュラントは素晴らしい選手であるが、助っ人的な位置づけである。そりゃ、ファンからすれば有り難いけど、生え抜きの選手ほどは応援できない。

ケビン・デュラントは自分がいつまでも外様的な位置づけに不満を持ち、生え抜きのスター選手がいないブルックリン・ネッツにカイリー・アービングの誘いに乗って移籍する。これは、ウォリアーズのファンは、ウォリアーズ・ファンの私からすれば、ケビン・デュラントとの優勝はあまり面白くなかったので、ケビン・デュラントがいなくなったことを、むしろ歓迎したくらいである。彼がいると逆に強すぎて応援しがいがなくなるからだ。さて、生え抜きのスターのいないネッツには、ジェームス・ハーデンも加わり、史上最強のチームとの誉れも高かったのだが、この3人が一緒に試合に出た数は極めて少なく、プレイオフでも1シリーズしか勝てないという悲惨な結果となった。ハーデンはアービングがワクチン接種を拒み、試合に出ないことに嫌気が差し、フィラデルフィアに移籍する。そして、このワクチン接種だけでなく、人種差別のリツイートなどで多くの批判を浴びたことや、長期契約を結べなかったことで、ネッツにいたくなくなり、ダラスへと移籍する。ネッツとしてはここまではある程度、そのようなシナリオは描いていたであろう。しかし、その後、チームの柱として期待したケビン・デュラントもトレードに出すような状況に追い込まれてしまった。いや、別に長期契約を結んでいたのだから出さなくてもよかったとは思うのだが。

さて、そのケビン・デュラントが移籍したのは、フィニックスである。フィニックスにはネッツと違い、生え抜きの若きスーパースターがいる。デビン・ブッカーである。また、他にもアンドレ・アイトンといった生え抜きのスター選手がいる。さて、しかし、フィニックスのリーダーはクリス・ポールであろう。38歳のベテラン・ポイントガードは生え抜き選手ではないが、その強いリーダーシップとカリスマ性でフィニックス・サンズのファンの心を掴んでいる。ケビン・デュラントはゴールデンステート・ウォリアーズにいた時は、カリーや下手をしたらトンプソンのようにファン、そして街から感謝されていないことが不満であったにも関わらず、ほとんど同じような条件のフィニックス・サンズにまた移籍することにしたのである。確かに、デュラントが移籍する前年に優勝していたゴールデンステート・ウォリアーズと、まだ優勝したことがないフィニックス・サンズとは大きな違いがある。しかし、サンズも2021年には決勝にまでは進出している。当時と主力はほぼ同じメンツで、ミケル・ブリッジがケビン・デュラントに変わっただけであれば、優勝が期待されるのが当然であるし、そこで優勝したとしても、ケビン・デュラントは傑出した助っ人以上には感謝されることはないだろう。

なぜ、ケビン・デュラントは感謝されないのか。それは、彼がチームの核となって、そのチームを背負ってチームを牽引しようとしないからである。だから、ちょっと面白くなくなるとすぐそのチームを放棄して、他に逃げようとする。彼がオクラホマ・サンダースを優勝に導いたら、人々の評価は変わったであろうが、その機会も放棄した。それであるにも関わらず、チームやファンが感謝しないと、それも面白くない。ブルックリン・ネッツでも、そこでもう少し、少なくとも契約しているあと3年間は頑張ればいいのである。いや、頑張りたくなければそんな長期契約を結ばなければいいのに、それを結んで、トレードに出せと要求するのは、あまりにも身勝手ではないのか。このコミットメントのなさが、ケビン・デュラントのカリスマ性の低さに繋がっているのではないだろうか。この20年間では最高のバスケ選手であるレブロン・ジェームズもチームを4回変わっているが、カリスマ性を持っているのは、彼が常にチームを背負うという強い意志を持っているからである。そして、マイアミで優勝した後は、一度は後にしたクリーブランドに戻り、優勝をもたらした。そこで、彼が優勝トロフィーを掲げ「クリーブランド、この優勝は君たちのものだ(Cleveland, this is for you)」と言った時、ほとんどのクリーブランド市民はレブロンに感謝したと思うのである。ケビン・デュラントもゴールデンステート・ウォリアーズで優勝した後、オクラホマに戻り、優勝を目指せば、人々の見る目もまったく異なったであろう。

さて、ゴールデンステート・ウォリアーズのファンとしてはケビン・デュラントが移籍した時はちょっと面白くなかったが、フィニックス・サンズに移籍したことは結構、ワクワクしている。この下馬評でも優勝候補の最筆頭であるサンズをプレイオフでウォリアーズが駆逐したら、それは本当に溜飲が下がる気持ちになれるからだ。などと書きつつ、最近、本当、勝てないんだよねえ。ワイズマンのトレードも残念だったし、いろいろと複雑な気分である。

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