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英単語を学ぶということと『TOEFLテスト英単語3800』の書評 [英語関連]

最近、英語教育にちょっと関心を持っている。これは、次女が高校一年生になって英語がまったく出来ないので、これじゃあ、英語で大学入試に落ちると心配しているのと、世の中、国際社会が進んでいくと、全般的に英語が理解できるのが重要じゃないか、という風潮になっているからである。

その風潮に私は一貫して疑問を呈してきていた。英語をしゃべれることが別に国際人になれる訳ではない。そして、国際人というか、英語でコミュニケーションをできるための英語力を養うのは尋常の努力ではできない。人生のうち8年間も海外で暮らし、アメリカの大学院で3年間勉強した私でも、英語力が今ひとつなので、外国人に過小評価されることで悔しい思いをしたことがある。今度、英語の本で一章を書いたのだが、プロのプルーフ・ライターにお願いしたら、結構、間違いを指摘された。まあ、間違いはほとんど二つの分野に集中していたのだが、こんなに英語をやっても、ここは今ひとつなのか、と思うとがっかりする。その二つの分野とは、冠詞、そして現在完了か過去か、という点である。冠詞は相当、意識をしているのだが、まだ自然と自分のものになれていない。そして、現在完了と過去を使い分けるニュアンスを私はしっかりと修得していなかったのだ、ということが分かった。

そういうことで、英語でコミュニケーションをする能力を獲得するためには、並大抵の努力をしなくてはならず、そんなことをする必然性が果たしてあるのか、私は大いに疑問なのである。例えば、私が奉職している大学の国際センター長は世界銀行で勤められていたこともあり、英語も堪能ではあるが、留学生のパーティーでは英語ではなく日本語で話す。先日、私も参加させていただいた国連大学の国際会議で、英語がほぼパーフェクトな某東大名誉教授も、パネル・ディスカッションではすべて英語で話したが、講演は日本語で話されていた(同時通訳)。私も、ここぞという議論では、英語ではなく日本語で話したいという衝動に駆られる。こういう場では語学力は権力であると本当に感じる。

さて、そのような思いがある一方で、次女のこともあったりするのと、そんなに英語を勉強したいなら、英語を効率的に学習する方法を考えてみよう、と考えたのである。そして、英語を教える講義を大学内で設置させてもらった。

英語を効率的に学習する方法は、まだ検証してはないのだが、取り急ぎの単語力の増強、ということを考えている。というのは、英語の単語力というのは綴りも含めれば、日本語での漢字力である。そして、文法を100%理解しても、単語が一つ分からなければその文意がつかめなくなってしまうことがある。これは日本語でも同様である。

また、日本は文法を教えるのが好きだが、初期学習において、あの文法を理解させようとすることほど馬鹿らしいことはない。私は中学でこの訳の分からない文法や、文法の例外事例などを教えられたが、そもそも本質的な文章構造が分からないのに、そんな例外事例など覚える必要はない。というか、例外を知る前に、とりあえず文章を書けるようになるべきだろう。この文章を書けるというのは、これまた大変な労力を要するが、文法的な些末なことを覚える前に、自動詞・他動詞の区別とかを知ることの方がずっと重要である。

そして、文法というのは語学が包括的に理解できそうな時になって初めてスムーズに理解ができる。私は45歳からドイツ語を学習しているので、そういうことがよく分かる。ドイツ語の文法が理解できるのは、ドイツ語検定でいえば3級を合格した後ぐらいである。その前は、とりあえず動詞の過去形と、名詞の性などを覚えておけばいいのである。前置詞の格支配などは3級に受かった後から、文法書で読めばいい。

また、私がこのように文法での学習ができるのは、年を取っていることと、英語ができるので類推がきくことと、何しろ学習意欲があるからだ。若い時は、とりあえず記憶力はあるのだから、どんどんと単語を覚えさせればいい。我々だって日本語の文法を知らないでしゃべっているし、アメリカ人だって文法の解説などは普通の人はできない。仮定法とか、高校の時は何を説明しているのかがまったく分からなかったが、日本語だって使っていることである。「明日、行ったらいいのに」でなぜ、「行けば」ではなく「行ったら」と過去形なのか。それは、「行った」と過去の表現をするときは、相手が行かないという意志があることを前提としているからだ。「行けば」はもっとニュートラルである。私は文法学者ではないが、こういう説明を高校とかで誰かしてくれたら、私をはじめとして多くの仮定法恐怖症を生み出さなくても済んだのである。もしかしたら、中学もそうだが高校の先生は、わざと分からなくして、英語を難しい学問であると思わせたかったのかもしれない。そう、邪推したくもなる説明の下手さであったと思う。

随分と前置きが長くなってしまったが、それで英単語をいかに増強するか、という効率的な方法論を学生に教えることで検証しようと思ったのだ。まずは単語帳、ということで、私がとりあえず選んだのは「TOEFLテスト英単語3800」である。なぜTOEFLかというと大学がTOEFLのテストの補助をしていたからで、テストを受けるのが安かったからである。これは、すぐに学生の英語力をみて失敗だと分かったが、英単語帳を買ってしまったので、これでいくことにしたのである。そして、なぜ、この本にしたのかというと、単にアマゾンで一番、売れていたから。

さて、しかし、この単語帳はひどい代物であった。というか、こんな単語帳がベストセラーであるなら、私はちょっと時間があったら自分で出そうと強く思っているところだ。何が悪いのか。TOEFLはアカデミックな内容の英文が多く出る。これらのアカデミックな内容の英文の英単語まで覚えていたら、大変なことになってしまう。また、これは頻出順でどうもカテゴライズされているようなのだが、名詞も動詞も形容詞もごちゃごちゃである。私であったら、当然、これらは分類させて、グループで覚えさせるし(それらのグループを頻出順でまとめるのはいいと思う。ただ、それは頻出順とは違った尺度での重要度・難易度で分けた方がさらにいいだろう)、動詞であれば自動詞・他動詞(両方のものが多いが)まで分けて覚えさせる。

例えばRank2においてpeninsula, accord, Neolithicと続く。また唐突にSaturnが出てくるが、Saturn を覚えさせたら一挙にMercury, Venus, Mars, Jupiterと一挙に覚えさせてしまえばいいのである。問題でSaturnしか出てこないということはあり得ないだろう。こういう英単語帳でしこしこ勉強できる人は立派だ。ただ、そういう立派な人も、このような機械的な学習ではなく、もっと単語世界が連携しあって、英語世界を脳みその中でつくりあげられるようなボキャブラリーを構築させることが望ましいであろう。そして、そもそも、そういう勉強ができない人は、この単語帳ではないもので勉強することを勧める。そのうち、私がそういう本を出してみたいと強く思う。


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