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トランプが主張するメキシコ輸入品への20%関税で国境の壁の建設費を賄うの妥当性をちょっと考える [トランプのアメリカ]

トランプが選挙公約としてきた、メキシコ国境との壁。建設費は150億ドルから200億ドルと言われる。問題はどのようにその費用を支払うのか。トランプはメキシコに払わせる、と主張してきた。これは、勝手に自分の持っている山に柵をつくって、その柵代を隣人に払わせようとするような論理だ。せいぜい、半分を負担しろ、と交渉するのが精一杯だと思われるのだが、トランプは全額負担しろ、と主張している。

当然、メキシコがそれを呑むことはない。「払う積もりがないなら、会っても無駄だ」とトランプは得意のツィッターでつぶやいたことで、メキシコ大統領との会見が御破算になった。まあ、そこで出てきたのがメキシコ輸入品への20%関税という案である。メキシコからアメリカへの輸出額は3000億ドル。その20%は600億ドルだから、関税をかけられれば、その建設費は余裕で賄える。しかし、そんなに事は簡単なのだろうか。

実現するうえで政治的に乗り越えなくてはいけないハードルは高いだろうが、それはここでは考えないこととする。まず、すぐ思いつくのは20%の関税をかけることでメキシコからアメリカの輸入額は大幅に減ることである。3000億ドルは1000億ドルぐらいに減る可能性さえある。まあ、それでも200億ドルは賄えるので、これはいいとしよう。問題は、このメキシコとの貿易でアメリカには600万人の雇用が創出されているということである。20%関税によって、これらの雇用の一部は失われるであろう。製造業はメキシコとアメリカとの国境を越えたサプライ・チェーンを築きあげているので、関税によってアメリカの工業部品なども売れなくなるであろう。CNN のニュースによれば、メキシコからの輸入品のうち40%はアメリカ製品だそうだ。それは、それらの産業で働いている人達の雇用を失うことにも通じる。

そもそも20%の関税によってメキシコからの輸入品額が20%上がるのでモノの値段も上がる。20%の関税分をメキシコ側が負担することはない。アメリカの消費者に転嫁させるだけだ。輸出額は大幅に減り、競争力もなくなるかもしれないが、20%の税金は商品価格に反映され、結局、関税分は消費者が負担することになる。経済が成長して物価が高くなるのとは違うので、結局、アメリカの消費者がやりくりに苦労するだけである。特にアメリカとメキシコの場合は、サプライ・チェーンを構築しているのは製造業だけでなく、ウォルマートやベストバイなどの小売業も含まれるので、相当の範囲で物価上昇は避けられないであろう。経済成長なしの物価上昇は市場を縮小させ、アメリカ人の生活を困窮させることになるし、雇用も失われることになるだろう。

そうそう、そしてメキシコ、中国の次は、トランプは日本を狙ってくるであろう。メキシコとの交渉はしっかりと見守ることが必要であると思われる。

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