SSブログ

トランプは最悪の交渉人(ネゴシエーター)ではないのか [トランプのアメリカ]

トランプは自らのことを最高の「交渉人(ネゴシエーター)」であると選挙運動中、主張してきた。確かに親から1億円の資産を引き継いだとはいえ、それを拡大させてトランプ王国を築き上げた実績は相当の交渉力を有していたからではないか、とは推察できる。さて、しかし大統領になって最初の一週間で、彼が何をしたのか。彼は、メキシコとの国境の壁をつくる事業を早速開始させ、その壁を全額、メキシコに支払わせると主張している。とりあえずはアメリカの予算から費用は捻出するが、近い将来、メキシコに支払わせると述べた。さらには、メキシコ大統領との会見を「もし、壁の費用を負担したくないなら会見はキャンセルした方がいいだろう」と、こともあろうにツィッターでつぶやいた。メキシコ大統領はトランプとの会見をキャンセルした。

強気に交渉するという方法論もあるかもしれないが、強気に出て相手に断られたらどうするのだ。というか、そもそも交渉するためには接触しなくてはならない。相手にしてもらわなくてはならない。案の定、トランプ側は、メキシコ大統領が断った後、まったく何の意見も述べていない。強気に出れば、メキシコ大統領はびびると思ったのであろうか。オレオレ詐欺だって、もっとまともな交渉をするだろう。「お金を払え」と言ったらすぐ電話を切られるだけである。「相手にちょっと得をするかも」と思わせたりするところがポイントである。

そもそもメキシコはアメリカ合衆国との国境に壁をつくるインセンティブがない。というか、既に1030キロに及ぶ壁ができている。これは全国境線3145キロのおよそ3分の1に及ぶ。基本的に入国しやすい場所から壁がつくられているので、壁がつくられていない場所は広大なる砂漠である。また、テキサス州での国境はリオグランデ川という広大なる川が自然の壁となっているので、その部分はつくる必要もないであろう。私は、このリオグランデ川が大きく蛇行するテキサス州とメキシコとの国境にあるビッグ・ベンド国立公園に行ったことがあるが、そのあまりの人のいなさ、茫漠たる手つかずの大自然に驚いたことがある。その暑さと乾きは殺人的である。こんなところを命をかけて越える人達は滅多にいないであろう。そして、それはソラノ砂漠などでもいえることである。それらの滅多にいない人を防ぐために壁をつくることの費用対効果はおそろしく悪いものとなる。ついでに指摘をすると、メキシコからアメリカ合衆国への不法移民の数は40年間で最低のレベルにある。そのように考えると、この壁の必要性というのは極めて低いものであると考えられるが、しかも、それをメキシコ側に支払わせるというのは、一体全体どういうことなのか。こんなことを相手に飲ませられるのは超一流の詐欺師か独裁者ぐらいであろう。まあ、トランプは後者で捉えていたのかもしれないし、私もその可能性はあるかもしれないと思っているが、まあ、それでも「払う気がないなら会わない方がいい」というのはどういう交渉術なのであろうか。これは、まったく自分のことを好きとも思っていない女性に対して、「キスをする気がないなら会わない方がいい」というようなものであろう。そりゃ、会わないよね。例え、隣町のお偉いさんであっても。

なぜ、このような交渉ベタが「交渉のプロ」と自ら言うのはまだ分からないでもないが、周りもそう思ってしまったのであろうか。しかし、彼を選んでしまった代償は大きいし、日本もよほど考えないととんでもないスカを引かされるであろう。彼に常識が通用すると思うのは間違いである。「常識があるだろう」と相手が思うところを、トランプは突いてくると考えられるからだ。

IMG_2587.jpg
(ビッグ・ベンド国立公園の荒涼たる風土。このような風土が延々とメキシコからアメリカにかけて続く)
nice!(2) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 2