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鹿児島県志布志市ふるさと納税のPR動画「UNAKO」は内容云々よりも、大手広告代理店に仕事を発注していることが問題だと思う [地域興し]

 鹿児島県志布志市のふるさと納税用のPR動画「UNAKO」が物議を醸している。志布志市の名産であるうなぎを美少女に擬人化させて、「養って」という台詞が監禁を連想させるなどと問題視されているのである。地元の女性がモデルになっているこの動画は、確かに性的なものも多少は連想させるので、その点では市役所が税金をつくるものとしてはいかがなものか、とも思ったりするが、個人的にはこういうことで所見を述べる気持ちはない。批判するのは神経質かなとも思うし、またこういうことに批判が起きない世論も問題であると思う、つまり中庸的な立場にあるからだ。
 私が気になるのは、ふるさと納税のPRのために貴重な志布志市の税金が支払われているということだ。ふるさと納税という税金を募るために広告費を使うというのは、あまりにも馬鹿げていないか。いや、市役所の職員で仕事がない人が広告を作成するというのなら理解できる。百歩譲って、地元の広告制作会社に発注をするのならまだ地域経済を潤すという理屈をつくることもできるかもしれない(税金の使い方としては有効だとはとても思えませんが)。しかし、この動画を作成したのは、天下の博報堂である。なぜ、博報堂にふるさと納税を募るための広告制作費を貴重な市民の税金を使って捻出しなくてはいけないのであろうか。私が志布志市の市民であったら、動画の内容云々よりも、ここを問題視するであろう。ちょっと出所を確認できなかったのだが(おそらく東京新聞)、制作費は800万円であったらしい。博報堂の広告制作費としては破格の安さのような印象も受けるが、そもそもこのような出費であれば1円でさえもったいない。
 平成27年12月末のふるさと基金への市への直接寄付額は約1億2400万円。前年は513万円だから相当のアップ率である。平成26年から27年の間に何があったかは不明だ。しかし、博報堂などの大手広告代理店に広告業務を依頼したことで増えたのかもしれない。
 そのように考えると、志布志市の立場からすれば広告代理店に依頼したことの費用対効果は抜群であったと思ったのかもしれない。そして、さらに図に乗って、おそらく性的なサブリミナル効果をも狙った(あまりにも分かりすぎるとサブリミナル効果にはならないのですが、市役所相手なので分かりやすくつくったとも考えられる)今回のPR動画をつくってしまったのかもしれない(さすがに最初の第一弾でこのような冒険的な作品をつくる企画を市役所が通すとは思えない)が、このような広告によってふるさと納税を増やすという行為は、すぐ他が追随することになり、基本、広告効果はどんどん低減していき、ふるさと納税によって、広告費を支払う。場合によっては赤字になるような本末転倒な事態でさえ起きることが推測される。
 そもそも、博報堂に広告代を支払って、広告を制作してもらい、志布志市のふるさと納税額が増えたとしても、日本全体では別に税収が増える訳ではなく、ただ納税先が移行するだけである。しかも、その納税額はあたかも税金のように、大手広告代理店に吸収されてしまうのである。つまり、中央にある富を地方に配分しようとしてつくられたふるさと納税制度が、結局は地方を経由して東京に戻ってくるだけである。さらに、先行して納税額が増えた自治体に倣って、他も追随することで、その広告効果も大きく減少していき、結果、ふるさと納税という地方に潤いをもたらす政策もその意義を失ってしまうのである。
 そのように考えると広告代理店はまさに税金泥棒のように思えなくもないが、喜んで彼らに自分達が中央からもらったお金を「献金」しているのは地方自治体なのである。こういうことをやっている限りは、地方創生などできるわけがないと思う。東京の力を借りずに、自分たちで道を切り開いていく、ということをしない限りは、地方は衰退していくばかりである。せっかく、ふるさと納税という武器をもらっても、それを駄目にしてしまうのは地方自身であることを自覚することが必要である。そうでないと、人口は加速度的に減少していく一方だ。

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