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キューバの都市有機農業 [サステイナブルな問題]

 キューバの都市有機農業を視察する。最初に訪れたところは、新市街地が西に行ったところにある住宅地内にある農地であった。カーロスさんという方がもう1人とで営んでいる農地で、レタス、数多くのハーブ、じゃがいもなどを始め、極めて多種多様な野菜をここでつくっていた。キューバの有機都市農業はソ連崩壊に伴う経済危機によって普及をするのだが、カーロスさんはそれ以前から、ここで農業を営んでいたそうである。どこかに卸すのではなく、農地の前に設置された露店で売られている。購入するのはほとんどが近隣の住民である。そして、それで生計を立てることができるそうである。農地の規模はおよそ3ヘクタールぐらいであろうか。
 次に訪れたのは、ローランド・オオエさんという方が営むところで日系二世の人であった。生憎、強い雨が降ってきたので農地ではなくオオエさんの自宅で色々と話を聞かせてもらった。彼はずっとヘリコプター技術士であったが、7年前に農業をすることになる。これは、ヘリコプター技術士では食べるものにも困るからだそうだ。農業をすれば食べることに困らない。ヘリコプター技術士はエリートなのではないですか、と驚く私に通訳をしている方が、「キューバでは医者とか技術者とかのプロフェッショナルが一番仕事とお金がなくて困っているような状況にあるのです」と憤慨するように言った。
 経済が破綻すると、人々は生きていくうえでの最低限の食糧を確保することを優先する。そして、その食糧を提案できるところに数少ない資源が集中される。その結果、ヘリコプター技術士や医者といったプロフェッショナルな人よりも、農家の方がお金を得られることになる。恐ろしく皮肉な事態ではあるが、経済危機というのはそういう状況をもたらすということなのであろう。
 オオエさんの先祖は新潟の新発田の出身だそうだ。彼は我々に珈琲と農地で採れたマンゴからつくったマンゴ・ジュースをご馳走してくれた。マンゴ・ジュースは信じられないくらい美味しかった。新鮮であるからだろうが、よくブラジルとか、ここハバナのホテルで出されるマンゴ・ジュースとはまったく別物の味がした。
 オオエさんは、我々が訪れた時、ソ連製のオートバイを自分で修理をしていた。技術者としては相当の腕を持っているのであろうと推察する。いろいろと難しい問題をキューバが抱えているのは確かであるが、経済危機を都市にて農業を行うことである程度は克服することに成功した。その点に関しては肯定的に評価してもいいと思うし、日本も近いうち、似たような経済危機に直面した時、パニックするのではなく、キューバの経験から学ぶべきであるとも考えた。というのも、我々を歓迎してくれたオオエさんが極めて大らかで、なんか泰然自若としているように見えたからである。私も菜園レベルからでも農業的営みをすべきであるな、と強く思わされた。

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(都市農業の農地)

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