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クリチバの中村ひとし氏の伝記を上梓するので、恒例の没原稿を順次アップする(2) [クリチバ]

二回目のアップです。

 日本人であることを強く意識している中村であるが、中村は日本人同士、日系人同士でつるむようなことをしない。中村は日系人ではあまり例がないような役所での出世をした。しかし、中村の日系人での評判は必ずしもよいものばかりではない。中村は日本人なのに、日系人を雇わない、日系人のことを優先的に捉えない、といった批判をされる場合もあるそうだ。笠戸丸で最初の日系移民がブラジルに着いてから、2008年で100年が経った。しかし、まだまだ、多くの日系人が日系のコミュニティの中だけで生活している。ブラジル人との間に壁をつくって生活している日系人が未だに少なくない。そういう日系人と中村は考え方が違った。中村はブラジルにおいて、日本のよさを表現しよう、日本のよさでブラジルの環境をよくしよう、と考えたのである。日本人である自分だからこそ出来ることがある。そのためには、日系人という狭いコミュニティに閉じこもっていたら駄目だ。広く、ブラジルの社会の中に入り込んでこそ、日本人としての表現も出来る。そして、中村は日本人だからこそ有していた自然と調和する思想、自然に対する繊細な感性を活かしたランドスケープ・デザインをブラジルという土地で実施することができた。例え、日系移民のコミュニティから疎んじられてでも、中村のアプローチの方が、ブラジル国内において日本のアイデンティティをしっかりと理解してもらうことに寄与できたのではないだろうか。中村の生き様は、ある意味で新しい移民像をも提示していると思われる。日本、日系人という内の世界に留まらず、積極的に外の世界に接しつつも、その基本的なアイデンティティである日本ということは大切にする。
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