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クリチバの中村ひとし氏の伝記を上梓するので、恒例の没原稿を順次アップする(1) [クリチバ]

クリチバの中村ひとし氏の伝記を今度、上梓する。この本を企画したのは2008年なのだが、その時、出版を引き受けるといってくれた会社が大幅事業削減をし、お蔵入り。その後、ドイツに行ったりしたので帰国してまた出版先を探すのだが、ことごとく断られる。ようやく、飛び込み営業で電話した講談社が出版してくれると言ってくれたので、これは素晴らしいと思っていたのだが、これも結局、没になる。また、出版社への営業まわりをしたのだが、どこもなしのつぶて。こちらの足下を見て、200万円出せば、出版してもいいなどと言い出すところや、私の悪いところを懇切丁寧に指摘してやるとか言う出版社もいたりして、本当に不愉快千万の経験をするが、それにめげず、これはサラリーマンに営業しているから駄目なんだ、社長に話をしなければ、と知り合いのつてで紹介してもらった社長に話をしたら、ようやく出版の目処がついた。企画してから、もう5年以上も経つ。出版は今年の3月か4月になると思われます。乞うご期待。

さて、そういったことで大変、有り難いのだが、やはり原稿をコンパクトにして読みやすくするためにも幾つか、没原稿ができている。それをそのまま闇の中に葬ってしまうのもなんかなあ、なので、ここにアップさせていただく。何回か続くと思うがお付き合いしていただければと思う。

【天皇陛下夫妻の行幸啓】
 中村が州の環境局長として目が覚めるような成果を数多く残していた、まさにそのピークの時に、中村にとっても非常に印象深いイベントが起きる。1997年5月の平成天皇のクリチバ行幸である。中村本人を始め、中村の両親は平成天皇と皇后のクリチバ案内を務めることとなった。平成天皇と皇后は、植物園、知識の灯台、バリグイ公園、そして兵庫姫路館 を訪れた。中村の父親きよしは、中村がブラジルに行く時に反対をして見送りもしなかった。しかし、その父親が、天皇陛下から「息子さん、頑張っていらっしゃいますね」とのお言葉をいただいた。日本を後にした時には、この親不孝者と言われた中村であったが、結果的にでっかい親孝行を日本の裏側でやり遂げたのであった。久美子も美智子皇后に「これからもお身体に気をつけて仕事に励んで下さいね」とのお言葉をかけていただいた。流石の久美子も心底、その優しさと思いやりに感動をする。天皇陛下と皇后にお花を贈呈する役割を担ったのは、中村の長女の麻友美であった。美智子妃殿下は、植物園でハチドリの名前を知りたくて、中村に対して「中村さん」と呼びかけたそうである。中村も自分の名前を呼ばれたことに大変驚いたそうである。中村も、天皇陛下と美智子妃殿下のオーラには流石に圧倒されたそうだ。
 ただし、レルネルはそれほど緊張しなかったようで、植物園の隣にあった施設で、昼食をともにした時、食事とともに出された紙ナプキンに鉛筆でクリチバの都市計画の考えを描いて、天皇陛下に説明されたそうである。しかし、いくら癖とはいえ、天皇陛下に対して、紙ナプキンにいきなり鉛筆とは、レルネルらしいエピソードである。
 また、出し物は盆踊りなどを当時の総領事が提案したので、中村はそれは違うと反対した。というのも、天皇陛下は、まだ皇太子であられた10年前にロンドリアを訪れられている。その時に既に盆踊りを見ていただき、日系人も日本文化を維持していることを十分に伝えさせていただている。10年後のクリチバで盆踊りを再び見ていただいても意味はない。それよりかは、日系人もポルトガルやドイツ、ポーランドの移民と一緒に頑張っているのを見ていただくべきだ。総領事は中村の意見には納得しなかった。また、総領事は、座る場所までも細かく指定した。しかし、これに対して中村は、「ここはブラジルである。敬意を表さなくてはならないのは当然だが、座る場所で人を差別するようなのは違う」。この中村と総領事との対立を知ったレルネルは、「天皇陛下を招待したのはパラナ州、すなわち自分であって総領事ではない。君は黙っていなさい」と一喝した。そして、結局、中村の意見は通って、ポーランドやイタリア、ウクライナ、ドイツ、日本の世界の踊りを短い時間で披露することにし、座り方も肩書きで順序づけするようなことも止めた。普通は、日本人の総領事の言うことを聞く。しかし、レルネルは天皇陛下を受け入れるだけの教育は受けている、と総領事の考えを突っぱねたのである。紙ナプキンでの説明がエチケットに反しているかどうかは、ここでは不問にしたい。このイベントの後、通訳が天皇陛下に「クリチバは移民の町として知られています」と説明されると、よく分かったと答えられたそうである。

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平成天皇と美智子妃殿下、そして中村ひとし氏(クリチバの植物園にて)


ブラジルの環境都市を創った日本人: 中村ひとし物語

ブラジルの環境都市を創った日本人: 中村ひとし物語

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 未来社
  • 発売日: 2014/03/10
  • メディア: 単行本



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