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「妖怪の民俗学」 [書評]

「民俗学」の大家である宮田登の著書。副題に「日本の見えない空間」と書かれているが、本書の内容は、1章の「妖怪のとらえ方」という妖怪の定義を論じたものを除けば、ほとんどが妖怪と空間との関係性を論じている。特に「化け屋敷」に関して、多くの事例をもとにその背景などを分析をし(2章)、それを踏まえて、妖怪のトポロジーとして辻や橋といった妖怪の出現しやすい空間の一般的な分析を試みている(3章)。そして、最後には妖怪のいた場所を開発してつくられた都市における妖怪をどのように分析すべきかといったことを論じているのだが、この最後の章は読み応えがある。特に都市の中でもフリンジにある郊外において、多くの異常な現象が起きやすいという指摘は興味を惹かれた。ちょっとだけ、強く印象に残った文章を引用させてもらう。「神霊が集中しやすいような場所が破壊されたとき、その場所に伴っていた霊力が、破壊行為をした人間に対してどのような警告を発するのかということを考えるときに、「魔所」という表現が生まれたとみる。そこは、あの世との境界領域になるところでもある。魔所にこもっている霊的なものは、妖怪の姿をとって出現し、それがそのまま都市民の創造力に投影していったといえる」。本書は、このような空間の地霊とかに対して、深い考察力を読者に与えるような知見に富んでいる。


妖怪の民俗学 (ちくま学芸文庫)

妖怪の民俗学 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 宮田 登
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 文庫



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