SSブログ

ストックホルムのトランジット・オリエンテッド・デヴェロプメント [都市デザイン]

15年ほど前、私はカリフォルニア大学バークレイ校の大学院に通っており、貧乏だったので、ロバート・セルベロ教授の助手をやっていた。セルベロ教授は、当時、トランジット・オリエンテッド・デヴェロプメントなどでぶりぶり言わせていたが、彼が講義中に「世界中の都市の公共交通で採算がとれているものはない」と言ったので、「東京や大阪の私鉄を知らないのか。山手線を知らないのか」と指摘したら、とても怪訝そうな顔をされて、講義が終わった後、呼ばれて「お前が言ったことは本当か」というので「本当だ」と言ったら助手に雇われたのであった。そこでは、日本語の縦の統計を横に直すという仕事を主に担当し、私のその成果はセルベロ教授の「Transit Metropolis」、「Transit Village in 21st Century」やらに発表された。本には私への謝辞も書かれている。それから数年、日本人の留学生はセルベロ教授の日本の公共交通の造詣の深さに感銘を受けたりしているが、まあ、世の中、そんなものである。

さて、それはともかくとして、この日本をあまり知らないセルベロ教授がトランジット・オリエンテッド・デヴェロプメントの事例としてよく紹介したのがストックホルムの都市鉄道の郊外駅である。しかし、実際、それをみると、まあ何とも駅周りは見窄らしい。駐輪場と駐車場がそこそこある低度で、日本の鉄道駅の周辺に土地の高度利用とは比較することも難しい。新開発地区のハマービー・ショーシュタットといった再開発地区ではトラムの駅のデザインは優れていたが、やはり駅周りの土地利用という観点からはそれほどの配慮が為されていない印象を受けた。富山ライトレールの方がずっと考えている。

ということでストックホルムのトランジット・オリエンテッド・デヴェロプメントはそれほど優れてはいないだろうと推察していたが、それは私が思っていたよりも今ひとつであった。ハマービー・ショーシュタットもハンブルクのハーフェンシティに比べると遙かに今ひとつの印象をうけたし、どうも都市計画面でこの国はそれほど優れていないという前から抱いていた印象を、今回も改めて再確認した。もちろん、ノーマライゼーションの考え方の徹底ぶりや、高校生まで授業料、教科書、食事代をすべて無料にするといった社会的公平さを追求する理念などは多いに参考になるところも多いが、こと都市デザイン、都市開発などではドイツはもちろんのこと、隣国デンマークやフィンランドと比べても今ひとつの印象を受ける。

The Transit Metropolis: A Global Inquiry

The Transit Metropolis: A Global Inquiry

  • 作者: Robert Cervero
  • 出版社/メーカー: Island Pr
  • 発売日: 1998/10
  • メディア: ペーパーバック



Transit Villages in the 21st Century

Transit Villages in the 21st Century

  • 作者: Michael Bernick
  • 出版社/メーカー: Mcgraw-Hill
  • 発売日: 1996/10/01
  • メディア: ハードカバー



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0