SSブログ

道路を整備したら町が衰亡の危機になった信州新町 [道路整備事業の大罪]

千葉大学の岡部明子先生の論文「コミュニティを空間的に取り戻す」(『コミュニティ』勁草書房)を読んでいたら、面白い事例のことが書かれていたので紹介したい。事例は長野県の信州新町。以下、引用。
「1998年長野オリンピック時に南バイパスが整備され、その沿道に大型商業施設の集積ができたことで、町の人の消費行動がまた大きく変わった。以前から長野市の生活圏に引き寄せられていたところ、市の中心部に行かなくても車でアクセスしやすい長野市郊外のショッピングセンターで何でも揃うようになった。買い物に行くにも、食事に行くにも、家族で休日出かけるのも、このショッピングセンターになった。他方、農協の再編によって町の農協がJAながのに統合された。農協スーパーは、以前は町内から仕入れた品を多く扱っていたが、それがかなわなくなった。」
 多くの地方では道路整備をすれば町が豊かになるとの幻想を抱いている。しかし、実態としては拙著『道路整備事業の大罪』でも紹介している通り、多くの町はむしろ状況を悪化させ、衰亡の危機を迎える。
 道路は原発と違い、その場所を死の土地にはしない。しかし、中央官庁が説いている論理が間違っているという点においては共通している。原発という悪魔に比べれば、道路は遙かに可愛いが、それでも、それが官庁の権限、すなわち利益を肥大化させるという点においてはすこぶる共通している。この日本が抱える官僚支配という構造的問題をどうにかして是正しなくては、我が国は衰退していくという危惧を最近、強く抱いている。ただ、最近はとてつもない無力と絶望感をも抱いているのだが。それは日本人であることの絶望感である。私は無駄な英語教育にずっと反対していたが、最近では、英語を話さなくてはいけないような三流国に成り下がってしまったのではないかとも思いつつある。この悔しさが、経産省や東京電力の人間は分かるのか。


コミュニティ―公共性・コモンズ・コミュニタリアニズム (双書 持続可能な福祉社会へ:公共性の視座から1)

コミュニティ―公共性・コモンズ・コミュニタリアニズム (双書 持続可能な福祉社会へ:公共性の視座から1)

  • 作者: 広井 良典
  • 出版社/メーカー: 勁草書房
  • 発売日: 2010/01/25
  • メディア: 単行本



道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2009/08/06
  • メディア: 新書



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0