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自転車にも乗れない貧しい都市環境 [都市デザイン]

朝日新聞(2010年11月22日)に自転車の事故が増えているという記事が掲載された。2009年において歩行者を巻き込んだ自転車の事故は2934件。10年間で約3.7倍に増えたらしい。同年の自転車事故は15万6373件と、全交通事故の21.2%を占めるまでになっている。死者数も695人に及ぶという。道交法では自転車は原則として道路を走らなくてはならない。しかし、道交法が2007年に改正されて随分とこれは緩和された。改正内容は次のとおりである。
(1)普通自転車は、歩道通行可を示す標識等がある場合のほか、①普通自転車の運転者が児童、幼児又は車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき、②車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため、歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき、には、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が、歩行者の安全を確保するために必要があると認めて歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りではない。
 改正されたことは評価できるが、それでも基本的に自転車は「やむを得ないと認められるとき」にしか歩道を走行してはならない。しかし、これほど守られていない法律も少ないであろう。というか、自転車を走っていると分かることだが、常時「やむを得ない」ような状況になっているとも解釈できるかもしれない。とにかく、ほとんどの自転車は車道でなくて歩道を走っている。それが、この歩行者と自転車との接触による事故の多さの背景にある。まあ、車道を走っていれば自転車と自動車の接触事故が増え、そちらの方が被害は甚大となるかもしれないが。
 このような状況をもたらしているのは、自転車を走行する環境が極めて貧相であるからだ。日本は先進国づらをしているが、こと自転車に関してはその必要性が高いにも関わらず、行政はほとんど無視しており、デンマークやオランダ、ドイツといったヨーロッパ諸国をはじめ、最近ではアメリカまでもが自転車の利用を促進させようとしている中、日本は自転車利用を不便にさせようと努めている。自転車の天敵である自動車ばかりをあたかも貴族のように遇し、自転車利用の危険度を高めさせているだけでなく、歩道を走らさざるをえないような状況に追い込み歩行者との接触事故を増やし、交通事故加害者となる状況に追い込んでいる。多くの自転車事故は行政による怠慢に起因されると考えられ、自転車被害者は行政を訴えるべきであるとさえ考える。
 まあ、何もしていない訳でもなく、自転車の通行スペースを確保しようという動きもではじめている。自転車と自動車とが分離して走行できる道路は全道路の6.8%の8万1600キロ。歩行者との住み分けができているのは2900キロと恐ろしく短いが、まあ整備されつつあるというのはよいことであろう。実際、自転車専用道路ができた亀戸駅周辺では歩行者との接触事故が減ったそうである。自動車のための道路を整備しにくくなって、道路予算をもてあましている国交省などには予算の使い途ができて朗報であろう。マンハッタンのブロードウェイのような東京よりもさらに高密度に空間が使われている場所でも自転車専用道路が整備できたのである。東京で出来ない筈がない。少なくとも私の奉職する大学の前の桜田通りは、明らかに自動車交通需要を上回る車道があり、日中でもトラックの運転手やタクシーの運転手の昼寝スポットとなっている。もちろん駐車禁止であるにも関わらずだ。ここなどは国道なので、積極的に自転車専用道路をモデル事業として整備してもらいたいと切に願う。
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(歩道を走る自転車。麻布十番)
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(歩道を走る自転車。調布駅そば)
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(歩道を走る自転車。調布駅そば)
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