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グローバル投資が地域に与えるダメージについてちょっと考える [グローバルな問題]

一年くらい前の話だが、経済学科のラウンジで他の先生とグローバル投資に関して雑談していたのだが、ある財政学の先生が「しかし、中国やインドなんかは国際投資機関が投資したから経済が成長できたのだから、メリットもたくさんあった筈なんだよね」と発言された。私はこの意見に強い違和感を覚えたのだが、彼の意見がおそらく実態とは違うということをしっかりと文章化し、説明する知識に欠けていた。本当、勉強していないと困るよな、と自分に突っ込んでいた。

さて、そうこうしていると、前述した先生の意見への私の違和感を説明している記述に出会えたのでここに書き記したい。人に読んで貰うブログの筈なのに私の備忘録のように使用してしまって申し訳ない。それはともかく、重森暁先生という大阪経済大学の教授の文章で、専門は上述した先生と同じ財政学である。彼はグローバルに展開する多国籍企業や巨大投資家等の規制を抜きにして、地域の小規模な農林漁業や中小零細企業だけで内発的発展が可能なのか疑問を提示し、次のように述べる。
「たしかに、国際的な投機的資本の動きによる為替相場の変動や、多国籍企業の動向による地域産業の空洞化が地域経済に大きな影響を与え、営々ときずきあげた努力が一瞬にして水泡に帰すということはありうることである。市場原理をふりかざしたグローバリゼーションに対抗して内発的発展の論理を対置することは重要であるが、さらに重要なことは、こうした多国籍資本の動きに適正な規制をくわえることである」(『グローバル化時代の都市』238-239頁、岩波書店)。
国際的な投機的資本の動きという台風の前では、地域といった掘っ立て小屋が無防備でいれば吹っ飛ぶのは当たり前のことである。株式投資で一般的な個人投資家がある程度、守られなくては株式市場が成立できないのと同様に、グローバリゼーションから地域を守ることが求められ、それこそが行政の重要な役割の一つであろう。そういえばアジア・バブルの時に当時のマハティール首相が、海外からの投機をストップさせたことが有効であったことを思い出した。国際投機は、投機するだけでなくさっさと撤退する。その撤退のスピードは、問題に対処するような時間を与えないほど素早いものである。内発的な発展こそが、地域にとって豊かさを及ぼす発展プロセスであり、とりあえずの投機で雇用を創出してもそれは本当の経済発展からはほど遠い。日本の地方で展開している道路をはじめとした公共投資もそういう意味で内発的ではまったくなく、問題は山積みではあるが、それでも行政が投資判断をしているので、投機的ではないだけまだ地域へのダメージは大きくない。そもそも財政学とは公共経済学であり、公共性を研究している研究者が、なぜ国際投資機関が地域に及ぼすマイナス面をしっかりと見据えていないのかは不思議であるが、まあこれを不思議と思う私が勉強不足なのかもしれない。しかし、うちの大学の経済学科の学生は、ここらへんの不思議さをしっかりと整理できているのだろうか。整理できている学生は私に教授してもらえると有り難い。これは皮肉ではない。

グローバル化時代の都市 (岩波講座 都市の再生を考える)

グローバル化時代の都市 (岩波講座 都市の再生を考える)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/10/28
  • メディア: 単行本



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