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『アメリカン・ヒストリー X』を観て、アメリカ社会の根深い人種問題を考えさせられる [映画批評]

エドワード・ノートンが主演を演じる『アメリカン・ヒストリー X』を観る。エドワード・ノートンは、私的にはボストンのファニュエル・ホール・マーケットプレイスやボルティモアのハーバープレイス、大阪の海遊館などのテーマ性の高い集客施設の企画、設計(海遊館は企画のみ)に携わり、ワシントンDCに新都市コロンビアを計画したことで知られるジェイムス・ラウスの孫である。彼自身もコロンビアで育った。海遊館の祖父での仕事を手伝うために大阪に滞在していたこともあるという。私は20代の頃、ジェイムス・ラウスに心酔し、コロンビアに行ったこともあったりしたので、どうしてもジェイムス・ラウスの孫のエドワード・ノートンという括りで捉えてしまうところがある。

しかし、世間的にはエドワード・ノートンは本作品や『ファイト・クラブ』の主演で知られる。特に、この『アメリカン・ヒストリー X』はアカデミー賞主演賞にノミネートされるなど、主人公デレクの狂気と誠実さ、怒りと優しさを見事に演じたその表現力は大いに賞賛された。とはいえ、どちらかというと誠実さの方が、地が出ていて自然であるとの印象は受けた。狂気のところは、ちょっとあまり本気でない、というか演じているような感じがする。ここらへんは根がいい人なんだと思う。コートニー・ラブとも婚約してしまうぐらいだし(後に破談するが)。

ともかく、このヴェニス・ビーチという白人の中流家庭が多く住むロスアンジェルスの郊外を舞台とした人種差別をテーマとした本作品は、目を背けたいが直視しなくてはならないアメリカ社会の暗黒部分を真摯に捉えた良質な映画である。白人アメリカ人の社会へのフラストレーションを有色人種に向けても、結局、どうにもならない。それは、黒人アメリカ人にもいえる。白人へ不満のはけ口を求めても、それは何も解決しない。本質的な経済格差といった貧富の問題を人種問題に置きかえてしまっているのは、白も黒も同様である。その空しさと悲劇性を叙情性ある映像で見事に描いている素晴らしい映画である。それにしても最後のシーンはショッキングである。テーマが重いので、出来ればハッピーエンドにしてもらいたかったが、このエンディングの方がより衝撃的でその問題をより観るものに印象づけられることは確かである。

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