SSブログ

高層マンションが防災目的で建設されているということを聞き、愕然とする。 [都市デザイン]

港区の都市計画審議会に出席する。委員を務めているからだが、そこで面白い経験をした。今回の委員会は、東京都のマスタープランの改訂に関して、港区として審議するために開催されたのだが、港区の高層マンションの建設をどうにか止められないか、ということで議論になった。そこで、建設派の区議会議員である委員が、防災の観点からも高層マンションをつくるべきだ、と主張した。あまりに私の見解と違う意見だったので驚いた。確かに、木造密集市街地の危険性を指摘することはできる。とはいえ、実際は京橋のように、堅密なコミュニティが防災機能を果たしているので燃えない木造密集市街地もあるのだが、ここでは話が拡散するので、一応、木造密集市街地は危険であるということを前提とする。それを再開発して、空地を設けるということも、まあ必要であるとしよう。しかし、そこで高層マンションをつくることは防災的にはむしろ新たなる問題を生む。そのことを指摘すると、「しかし、問題があったら建築を許可する訳ないから、問題はないでしょう」と反論してきた。ここで真の問題は、問題があるのに建築を許可しているということである。実際、数日前、このブログで書評を記した『いいまちづくりが防災の基本』でも、高層マンションや地下街がいかに地震に対して脆弱であるかを指摘している。防災のスペシャリストである片寄先生が、その長年の研究の成果から導きだしたのが、防災に強い街とはコミュニティがしっかりしているということだ、というのは示唆に富んだアドバイスである。そして、同書でも高層マンションは地震が襲った時は大変なことになると指摘もしている。

高層マンションは地震が起きたときに、建物は倒れないかもしれないが、そのために大きく揺れる。この揺れで室内にいる人は怪我をする可能性が高い。さらに、エレベーターが止まるので、下に行くのに階段を歩かなくてはならない。おそらく、色々なものが破損しているし、場合によってはガラスも散乱しているかもしれないので歩くのも危険な状態になっているかもしれないが、それでも歩いて下に行くしかない。私の研究室は8階にあり、地震があるとエレベーターが止まり、歩かなくてはならないのだが8階を上り下りするのでも結構、難儀である。これが25階とか33階とかだったら、一度降りたら二度と上がれないのではないだろうかと思われる。そして、何より問題となるのは水である。上水、下水両方である。水は供給されないので、建物の外に水を取りにいかなくてはならないが、重い水を持って25階やら33階にまで上るのは相当の苦行となるであろう。そして下水の問題である。トイレの水は流れないので、ずっと溜まり悪臭を放つであろう。はっきりいって、地震が起きたら高層マンションに住むことはできなくなると思われる。それでは、どこで震災後、生活することになるのであろうか。うちの大学は、災害後の緊急避難所として体育館とかが使われることになることは間違いないであろう。しかし、大学側はそのような通知が港区もしくは東京都から来ているのであろうか。

問題となるのは、こういう防災時における避難計画、避難態勢がしっかりとできていない状況下でどんどんと高層マンションがつくられていることである。これは、多くの不動産業者が借金をあえてつくって、脱税目的で、わざと赤字体質にして自転車操業をしていることが一番の要因であると思われるが、公共の利益に大きく反するような状況をつくりあげてしまっている。災害が起きた時、一番苦労するのは港区である。港区がある程度、東京都に対して開発主義の考え方に異を唱えるような自治権を有することも求められるのではないだろうか。


nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0