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三浦展の新著『下流大学が日本を滅ぼす!』を読む [書評]


下流大学が日本を滅ぼす! (ベスト新書 192)

下流大学が日本を滅ぼす! (ベスト新書 192)

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2008/08/09
  • メディア: 新書



三浦展の新著『下流大学が日本を滅ぼす!』が著者謹呈で送られたので、早速読む。相変わらず三浦氏の文章は読みやすい。この読みやすさは、相当のものだ。さて、読みやすさはともかく内容であるが、過激なタイトルの割には、まともなことが書かれている。当たり前のことであるが、大学にはまともな学生もいる。というか、昔と比べても、まともな学生が大多数を占めているといってよい。ただし、この本が指摘するような、まともでない学生、以前だったら大学生にならなかったような学生もいる。本書は後者を事例として挙げているので、大学で働いていない人にとってはショッキングなのだろうが、大学で働いているものにとっては、まあ、ご指摘の通りです、といったことが書かれている。これは誇張であろう、と捉える読者もいるかもしれないが、これはまあ現実です。もちろん、平均像、全体像ではないが、こういう問題がある大学生もいることは確かである。まあ、誇張といえば、大学ごときで日本は滅びないし、昔なら大学生にならないような若者も大学生になったからといって日本には大した影響は与えません。確かに、三浦氏が指摘するように、そういう若者は大学に行くよりそのまま就職して、手に職をつけた方が本人にとっても社会にとってもいい、というのは同意するが、それでも、このタイトルは大袈裟ではある。

本の中には、実は私のコメントも書かれている。A教授というのが実は、私だ。ブログでは記していないが、ホームページの方ではしょっちゅう書いているAO入試の問題点、そして盗撮癖のある女子学生がいることをコメントしている。盗撮癖のある学生は、結構、三浦氏や編集者もショックを受けたようだ。もちろん、盗撮された私も大いなるショックを受けたが、これは世間的にもショックだと思われることのようだ(まあ、個人的に一番ショックなのはその女子学生がうちの大学の学生であるということだが)。問題は、盗撮が悪い、という意識を学生があまり持っていないことである。これが、男子学生であったら、変態である。しかし、女子学生はあまり変態と思われないんだろうなあ。もちろん、盗撮する目的も男子学生と女子学生とは違う。男子学生はより覗き的な意味合いが強くなるのだろうが、盗撮の被写体となる不快さは似たようなものである。フライデーのカメラマンを殴るデート中の芸能人の気持ちが私もはじめて分かった。まあ、私はともかくとして、他にも多くの大学教員、新人研修を担当している企業の人達、実際の学生、学生の親などにも幅広く取材しており、現在の大学の問題点が浮き彫りにされている。この現実から目を背けないで、どのように対処するかを検討すべきであろう。総じて現状認識に関しては鋭い、さすが三浦氏という感じであるが、最後の章の問題解決の提案は、アイデアはいいが、ちょっと納得しにくいな、と思わせる点もあった。特にオンライン大学に関しては、私自身が現在、東北大学のオンライン大学の講師をしているが、非常にやりにくいし問題がある、と思っているので、三浦氏が考えているほど便利ではないだろう、というのが実感である。やはり、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションによって学生は大いに学ぶところがあるし、三浦氏も以前、「大学で教えるのはゼミ形式だけでいい」と言っていたぐらいなので、そういうことはしっかりと理解していると思われるのだが、まあ勢いで書いてしまったのかもしれない。多少、大学関係者には直視したくないことも書かれているが、読むべき本であると思う。特に大学生が自分達を客観視するためにはいい本だと思う。最後の一文は結構いいし、私も大いに共感する。

「大学にいる時は勉強はつまらないし、何を学べばいいかわからなかったのに、社会に出ると無性に勉強したくなるし、何を学べばいいかもはっきりするじゃないですか」

私も大学時代にこういう本を読んでおけば、ちょっと自分を客観視して、遠回りをしないで済んだかもしれない。といって、今歩んでいる道も遠回りなのではないか、と思わない訳でもない。と書いて、ふと「人生、遠回りなし」という言葉が浮かんだ。別に、深い意味はないですが。


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