SSブログ

ホテル・ルワンダを観て、差別の愚かさを知る [映画批評]

 アフリカには縁がない。まあ、中国にも行ったことはないし、ロシアにも行ったことはないので、そんなもったいぶった言い方をしなくてもいいのだが、アフリカには一度も行ったことがない。エジプトにもない。そして、それほど行きたいとも思っていない。しかし、行くとしたらルワンダであろうとは思っている。というのは、ルワンダの首都キガリの郊外に新しくつくられている新都市のマスタープランナーは私のバークレイ時代の親友カート・ワージントンの父親であるカール・ワージントン(カール・ワージントンに関しては拙著「衰退を克服したアメリカ中小都市のまちづくり」などに取材記事を載せている)であり、カートもこの仕事を手伝っているからであり、彼らが出張をしている時に合わせて是非とも行きたいと強く思っているからである。とはいえ、ルワンダはカートが現地で撮ったゴリラの写真や街並み、人々の写真ぐらいのイメージしかない。どんな国なのか、ということを知りたい私に、ちょうどうってつけの映画があった。「ホテル・ルワンダ」である。
 「ホテル・ルワンダ」では、カールが強く主張するキガリのランドスケープの美しさが全然表現されていなかったのは残念であった。しかし、ルワンダで起きた1994年の虐殺事件の背景がある程度、理解できたという点では勉強になった。それにしても、ツチ族とフツ族といった人種分離政策を行った元宗主国のベルギーの罪の深さ、そして国際社会の恐ろしき無関心さと無責任さには呆れるしかない。我が国も大量の金額や便宜をアメリカ軍に供出している。しかし、いざ問題が起きた時には、ほとんどアメリカが利益を得ない限りは、我々を護るような行動は取らないであろう。いや、だから軍備しろ、と言っているのではないが、アメリカに頼っても無駄だ、ということは自覚した方がいい。ここらへんは、どうも随分と呑気に考えている人がいたりするが、非常事態においては、国際社会が日本を護るようなことはしないであろう。まあ、ただ日本の歴史から学べることは、日本軍がどのような敵国より、我々日本人を痛めつけ、戦争に行かせて死に追いやったということである。そして、日々学生と接しているという職業柄、とても軍備には賛成できないが、それにしても、この「ホテル・ルワンダ」から学べることは、国連などは普段はきれい事を言っていても、いざという時にはほとんど役に立たない、ということである。そして、我が国もそういう事態になった時には、ほとんど自分達でどうにかするしかない、ということである。
 日本人も差別が好きである。江戸時代にベルギーかなんかの植民地となって、日本人を弥生人と縄文人に分けられて統治されたりしたら、似たような対立状況がつくられていたりして。そういえば、ベルギーも今でもオランダ語圏の北部フランダース地域とフランス語圏の南部ワロン地域の南北の地域対立が続いている。続いている、というか最近では、さらに対立が先鋭化している。ルワンダの虐殺は、このベルギー的な差別構造をルワンダにもたらしたことが大きな要因なのではなかろうか。人間、そんなに違いはない。違いをあえて誇張し、認識していることの愚を自覚すべきであろう。井上雄彦の漫画『リアル』の高橋が、痛くて切ないなのは、優越感から持っていた他人へ対する蔑視意識が、身障者の自分に向かれてしまっているからである。そういう意識を持たなければ、そもそも人はそんなに対立しないのではないだろうか。(そういえば高橋も身障者になる前は、いじめっ子であった)。


ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション

ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



リアル (6)

リアル (6)

  • 作者: 井上 雄彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/11/17
  • メディア: コミック



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0