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日本人メジャーリーガーのアメリカでの評価 [スポーツ]

この2ヶ月で3回もアメリカに行った。結婚式に参加するためと取材で2回だ。メジャーリーグが開幕して、今年は多くの日本人が活躍していたり、ボンズが絶好調だったりするので、新聞やテレビニュースで状況を結構、こまめにチェックした。私は、NBAのウォリアーズやNFLの49ersのように絶対的にこのチームのファンというのをメジャーリーグでは有していない。まあ、強いていえばボンズをそこそこ応援しているのでジャイアンツか。子供の時はドジャースの大ファンだったが、今は本当にどうでもいい、というかむしろ嫌いである。アンチといえば、ニューヨーク・ヤンキースは嫌いなので、ヤンキースが負けると嬉しいが、まあそれもどうでもいい。

とはいえ、日本人のはしくれなので、日本人大リーガーには活躍してもらいたいと思っているし、試合の状況をこまめにチェックするのは日本人の活躍を知りたかったからである。ところが!ESPNやUSA Todayでは日本人は本当に紹介されないね。流石にイチローは別格なので、まあ出たりするけど昨年の8月、ヤンキースとマリナーズの試合を車のラジオで聞いていたら、解説者がイチローの奥さんは日本の女優だと得意気に出鱈目な蘊蓄を披露していたぐらいであるから、まあそんな程度の関心なのであろう。ショックだったのは、ヤンキーズの先発陣が倒壊したというUSA Todayの記事で、ムシーナ、ペティット、王建民、リベラの状況が詳細に書かれていたが、井川のイの字も出てこなかったことである。マイナーの選手で使えそうな投手に関しての記述があったが、それでも井川が書かれていない。これは、分析としてもしっかりしていない。井川は入団したが使えないぐらいの記述があるならまだしも、無視は酷すぎるのではないか(一応、ヤンキースのデフス・チャートでも4番手なのだし)。あとレッドソックスの先発投手陣の解説記事もあったのだが、そこで先発二本柱という記述があった。もちろん、二本柱とはシリングとジョシュ・ベケットのことである。日本人としては、いやマツザカを入れて三本柱にしてよ!と思ったが、まあ、アメリカのジャーナリズムはそういう見方をしているようだ。とはいえ、1億ドル選手というような表現は見たことがあるので注目されていることは確かだが、まあマツザカもまだ柱としては全然、認められていないということのようだ。日本の記事だと、シリングとマツザカが二本柱のような説明をしていたので、ちょっと意外である。日本人の報道とアメリカとの報道の間に、とてつもない差を感じさせられた。

まあ、メジャーリーグの観点からすれば、日本の輸入品が活躍すればそれなりに評価するし、活躍しなければまったく相手にもしないということか。確かにメジャーリーグは、アメリカ人以外の大スターだらけだからね。ニュースバリューがなければ日本人だって書かれない。イチローはいわゆるペレニアル・オールスター(オールスターの常連)の格を得られているが、マツイはまあ調子がよければ監督推薦で出られるくらいの選手だし、あの大銀河軍団の中では5番手か6番手くらいのスターだからねえ。私の感覚だとマツイとジョージマは同レベルに見られているような気がする。そして、イワムラもこの調子で活躍していたら、同レベルになるのではないか。マツイは巨人出身で、日本では大スターと捉えられているが、私はアメリカでは必ずしもそのような高評価を得られていないような気がする。まあ、これはまだ仮説なのだが。

ところで、井川がヤンキースに入ったのは大失敗のような気がする。それは、あのクールな姿勢で結果を出さない、というのはアメリカ人のメンタリティ的には非常に受け入れがたいものがあるからだ。クールで結果を出すのはいいが、結果を出さないのにクールでいるというのは、もうイメージ的には最低である。しかも、メジャーリーグでもっともマスコミが厳しい目を向けるヤンキースではなおさらである。パブリック・イメージをしっかりとつくることは、アメリカで生きていくうえでの不可欠な戦略なのだが、井川ははっきり言って凄くその点を認識していないような気が、取材等での発言(アメリカの新聞)から受けるのである。無関心を装っているので、マスコミにも無視されている。USA Todayの記事が井川を無視したのは意図的なものを多少、私は感じたのである。さらにイチローが井川との初対決で「(投球に)気持ちを感じさせないピッチャーじゃないの。違うの?全く知らないけど」と言ったらしいが、これを知って、いや、本当に不味いと思ったのだ。イチローでさえ、感心させられない選手が、ニューヨークのファンを感心させられる訳がない。なぜなら、アメリカ人はプロ野球にドラマを求めているからである。イチローはクールであると批判されているが、イチローの野球はとってもドラマチックだからね!だから、アメリカ人にも好かれるのである。野球に関しては全然、クールではない。クールでマスコミと距離がある選手といえば、ボンズである。あの歴史に残る名選手であっても、クール過ぎて冷たいといってマスコミにたたかれ続けている。ステロイド事件も、マスコミとボンズの対立からここまで大きくなってしまったとしか思えない。しかし、ボンズはそれでも圧倒的にあの年齢で今でも凄いからね。ボンズが井川のような成績を出していたら、まあ総攻撃を食らうでしょう。とはいえ、井川はボンズのように大衆の関心も持たれないから記事にはならないかもしれないけど。

井川は阪神に比べてスターではないから楽だ、と言ったこともあるようだが、ヤンキースでスターでなくて、しかも結果を出せないで、しかも「1年目だからすべて勉強になる」と強がっていても、ヤンキースのファンはまったく受け付けないであろう。阪神のファンのような寛容さをヤンキース・ファンは持っていない(ちょっと出だしに失敗しただけで、もうトーレ監督の去就がマスコミを賑わしている。4回もワールドシリーズを制覇した名将であるにも関わらず)。井川もカンサス・シティ・ロイヤルスやコロラド・ロッキースに行けば、そのような寛容さで許されただろうが、ヤンキースやレッドソックスでは駄目だろう。したがって、すぐ放出されることは間違いないだろうが、あの値段で引き取る球団がどのくらいいるのだろうか。それにしても、あのパブリック・イメージは不味い。どうでもいい私でさえ、心配してしまうくらいである。日本人がアメリカで生きていくうえでの、最も根幹的に重要なことを井川は理解していない印象を受ける。まあ、井川はどうなっても知ったことはないが、反面教師として分析する対象としての価値はある。



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