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コットブス [都市デザイン]

コットブスはブランデルブルグ州の東部のスプリー川岸に発達した。中世から城郭都市ではあったが、第二次世界大戦後に急激に人口は伸びた。これは、旧東ドイツのエネルギー産業をここで一手に引き受けたからである。中世につくられた旧市街の広場は魅力的である。多くのドイツの都市は第二次世界大戦で壊滅的な被害を被ったが、ここコットブスは被害を免れた。これはイギリスから遠いことと、あまり重要性がなかったからである。ドレスデンが終戦前日まで爆撃を受けなかった理由も、コットブス同様に奥まっていたからである。しかし、ドレスデンはコットブスと違い、ドイツ文化の結晶でもあったので、破壊と殺戮だけを目的とした空爆を終戦前夜にイギリスは行ったのである。ドレスデンの爆撃はまったく野蛮で酷い行為であり、イギリスは大いに恥じるべきであるのだが、勝てば官軍なのであろう。そういう声を寡聞にしてイギリス側からは聞かない。こういう国がアメリカと歩をあわせてイラク戦争に加担するのは理解できる。それはともかくとして、コットブスは戦災を受けていないこともあり、旧市街地は城壁も残っており、非常に良い感じである。一方で、産業革命後の19世紀後半から20世紀前半につくられた都心地は衰退している。建築的には価値があるのだが、GDRは歴史的地区を維持することに関心がなかった。50年間投資が行われない状況が続いたことが、現状の酷い状況を引き起こしている。コットブスの問題は、この産業革命後につくられた無視されていた住宅群とプラッテンバウである。コットブスには大きく3つの大きなプラッテンバウ地区がある。北のシュメールビッツ、東のザンドー、南のザクセンドフである。この中でも問題が大きいのはザクセンドフであり、ザンドーは取り壊しプラス都市再生といったアプローチが取られているのに対し、ザクセンドフはただ取り壊し。これはあまりにも需要がないためである。特にザクセンドフの南はオートウェイが走っているために、そもそも居住環境としても劣悪。都心からも離れているので、取り壊しを決定した。今回は偶然にもザクセンドフのプラッテンバウの取り壊し現場に遭遇した。写真がまさにそうであるが、需要がないとはいえGDR時代の集合住宅を取り壊していく光景に呆気にとられる。

コットブスも相当、人口は縮小している。現在の合計特殊出生率は1.09。これは低い。ただしアイゼンハッテンシュタットやシュベルトなどに比べて、旧GDRからの産業であった石炭産業は補助金なしでやっていけているそうだ。ここらへんの石炭はブラウン・コールと呼ばれ、ブラック・コールに比べて質は随分と落ちるそうだが、経営は効率的であるようだ。スウェーデンの企業が買収してうまくやっている。ただし問題は、この産業が雇用に貢献しないことである。GDRの時には、これが大量な雇用を創出したが、効率的な運営がなされているので、現在では地域全体の雇用の10%しか創出していない。産業は衰退していなくても雇用が減ると都市としては縮小が進んでいくというのも、どこかで聞いたことのある問題である。アメリカ式のニューエコノミーの問題点と同様である。


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