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ラーメンはなぜ人を惹きつけるのか [B級グルメ雑感]

ラーメンは歴史が浅く、いわばまだ戦国時代である。ご当地ラーメンも、喜多方ラーメンが1920年代、尾道ラーメンなどは戦後である。ラーメンまちづくりを現在、展開している山形県の南陽市の赤湯温泉も50年前は、現在も食べログ百名店の龍上海を始め3〜4軒しか町にラーメン屋がなかったようである。さて、この歴史の浅いということは、まだ流儀というか正しいスタイルが確立されていないということで、完成形のようなものがない。しっかりとしたお茶の世界のようなブランドが確立されていないのである。クラシック音楽に比べてのロック音楽のような自由度、創造性を受け入れる余地がラーメンにはある。ラーメン店はほとんどが個店で、これらの個店は麺の作り方やスープの作り方に拘る。そして、それをレシピのような形で表に出さないし、また他人にも教えない(ために教える人もいるが極めて例外的)。伊丹十三の映画『たんぽぽ』でラーメン店の女主人が美味しいスープの秘密を探るためにあれこれ試みるシーンがあるが、まさにラーメン店の秘密主義を示している。これは、例えば日本蕎麦なんかとの大きな違いである。
 そのような状況であるために、学歴や家柄も関係ない公平な勝負のできるステージがある。裏千家にお金を払ってステータスを得るというような必要性がないのだ。人気のラーメン店の主人が元暴走族だったり、いわゆる青年時代にアウトロー的な人が多いのは、このステージが、まさに下克上が可能なジャパニーズ・ドリーム的なプラットフォームを提供している証拠でもあり、それゆえに多くのドラマを生むし、そのようなドラマを我々、消費者も期待している。
 つまり、味も進化しているので、常にその進化した味を確認するために店を探し、訪れなくてはならないし、新しい情報を収集しないと、ラーメン動向は分からないという面白さがある。また、下克上ごめん的な武将ならぬ店主が常に上を目指して競うというロマンは、単に味ではなく、ストーリー消費の魅力を孕んでいる。グルメ雑誌もラーメン特集は鉄板であると言うが、それは情報が常に更新されるだけでなく、そのお店の背景にある個の魅力、その人のロマンに人は惹きつけるからではないだろうか。ラオターと呼ばれるラーメンオタクは、おそらくラーメンという食事以上のものを、ラーメンを啜る時に消費しているからこそ、ラーメンに惹きつけられているのではないかと思われる。

タグ:ラーメン
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