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ベルリンでアンペル・マンのグッズを購入し、都市のシンボルとしての商品についてちょっと考えてみた [都市デザイン]

ライプツィヒからベルリンに日帰りで行く。テンペルホーフ空港の跡地を訪れ、プリンツィシンネン庭園を行き、KaDeWeへ寄って戻ってきた。さて、KaDeWeにせっかく寄ったのでお土産でも買おうと考えた。ベルリンには、有名な熊の置物があり、私は3体ほど買っている、ベルリンという名前は熊に由来していることや、ちょっとこの熊が可愛かったりするので、私は、これをなかなか優れたベルリン土産として気に入っているのである。しかし、ちょっと大きい。というので、代わりにアンペル・マン・グッズを購入した。
 アンペル・マンとは旧東ドイツの歩行者用の信号機に使われたキャラクターで、そのキャラクターを商品化したグッズは、広く旧東ドイツの都市で売られていて、日本でも白金高輪でそれを専門に売っているお店もあったりする。旧東ドイツの数少ない旧西ドイツより優れたものとも言われている、なかなかチャーミングなキャラクターで私も結構、好きである。
 さて、アンペル・マンは旧東ドイツ中にあるし、現在ではシュツットガルトやリューベックでも用いられている。なんで、ベルリン土産なのかというと、最初に設置されたのが旧東ベルリンであるからだそうだ。ということで、アンペル・マンはベルリンにふさわしい土産になるかもしれないが、よく考えればKaDeWeは旧西ベルリンに位置しており、そういう意味では旧東ドイツの中で唯一といっていいほど、アンペル・マンと関係がないような場所である。まあ、旧西ベルリンも広義で捉えればベルリンなので、そういうのはただの難癖ということになるかもしれない。少なくとも、そこにはベルリンのストーリーが含まれているからである。また、アンペル・マンのグッズを販売している会社もベルリンに拠点を置いている。
 さて、しかし、そういうことを考えていて気づいたのは、アンペル・マンというのは旧東ドイツが共有するゆるキャラのようなものだな、ということである。それほどゆるくはないが、それでもある程度のゆるいところもあり(青信号の男の子にちょっと得意げに上を向いているところや、赤信号の女の子の妙に潔癖な感じのするところ)、そこがドイツ人を始めとした人々の心をくすぐっているような気がする。
 ゆるキャラというと、日本人の専売特許のように捉えられているし、それ故に日本人は奇妙な民族だといった、見方も為されていたりするが、なんてことはない、ベルリンにもしっかりとゆるキャラのような地域と関係性の高いキャラクターが存在して、また多くの人に愛され、関連グッズも販売されているという訳だ。
 いや、逆にいうと、アンペル・マンのような、その都市のストーリーを包含するようなキャラクターがあればいいが、なければゆるキャラでもいいからつくっちまえ、というのはあるかもしれない。
 また、その都市を象徴するようなシンボル的なキャラクターは何かと考えた時、サンフランシスコはケーブル・カーや金門橋、ニューヨークは自由の女神、フランスはエッフェル塔か凱旋門、ロンドンはロンドン・タワーやギュルクといった建築、バルセロナはガウディのギュエル公園にあるとかげ、京都であれば舞妓はん、大阪であればたこ焼き、などがすぐに浮かぶ。
 逆にいえば、このようなシンボル的なキャラクターがすぐに浮かばない都市、というのは都市マーケティングの時代においては、相当、マイナスであり、それを改善することが望ましい。しかし、名古屋市や豊島区のように、都市イメージが悪いからといって、自らのアイデンティティと関係ないお洒落な公園を整備したり、とりあえずニュース性のあるようなことのために税金を浪費したりするのはまったく効果がないどころか、さらに状況を悪化させていくことは理解しておいた方がいいであろう。
 貴重な資源を活かすことが必要であるが、それはつくろうと思ってつくるのではなく、それまでの都市政策の歴史・蓄積の中から滲み出てくるようなものであるべきだ。名古屋市がダサイのは、そのような都市文化を理解しないで、とりあえず効率性・経済性だけを追求してきたからではないだろうか。最近では、B級グルメで勝負しようとしているが、それは200万を越える人口を擁しながら、A級グルメを育てることが出来なかったという文化醸成力の無さの裏返しではないだろうか。タモリに揶揄されたからといっていちいち、センシティブな中学男子のように反応するのではなく、もっと長期的な視点でその都市をつくっていこうという姿勢を継続することで、都市のブランドは築かれると思うのである。そのような姿勢は、ヨーロッパではミュンスター、ハンブルク、リューベック、バルセロナ、ボローニャなどで見られるが、日本でも弘前市、金沢市などは参考に値する。
 そして、そういう姿勢を継続させることで初めて、都市のブランドは醸成されていくのであろう。ということを、アンペル・マンをベルリン土産で買いつつ、考えたりした。

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