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『眺めのいい部屋』 [映画批評]

1986年のイギリス映画。この映画の見所はフィレンツェ、そして南東イングランドの田園地帯の風景の美しさであろう。特に前半のフィレンツェの映像は、その都市の魅力を見事に描き出している。主演のヘレナ・ボナム・カーターは、現在ではハリー・ポッターの超ヒールであるベラトリックス・レストレンジや、レ・ミゼラブルのテナルディエ夫人、さらにはティム・バートンの作品群でのあっち側に行ってしまったような役が多いので、そのようなイメージが強烈だが、この作品では初々しいお嬢さん役を見事に演じている。しかし、そもそも出自は銀行頭取のお嬢さんなので、昔はこれが彼女の地に近かったのであろう。そういう点でも興味深い作品である。あと、この映画の一つのハイライトとして男性群が聖なる湖(池)で裸になって戯れるというシーンがあるのだが、イギリス人も日本人の温泉のようなカルチャーがあるのかということを知った。もちろん、一般的ではそれほどないのでこのような映画のシーンになったのであろうが、裸で温泉などに入るということはもしかしたら、それほど文化的に外れていないような印象を受けたりもした。ただ、このシーンは、公開当時は倫理的な観点からカットされ、ジョージの開放的で素直な性格を表現した重要な場面が飛ばされてしまったので、その後のストーリー展開が分からなくなってしまったと思う。この点は残念である。あとDVD的には、日本語訳でコンスタンチノープルをトルコと訳しているのだが、コンスタンチノープルとトルコはちょっと違うのではないか、と違和感を覚えた。コンスタンチノープルは、東西文化の交流都市であり、トルコとはイメージが全然、異なる。日本で言えば、京都に行く、というのを日本に行く、と訳してしまったようなものなのではないか。他にも字幕の訳は、ちょっとエッと思う点が少なくはなかった。この点も残念。


眺めのいい部屋 HDニューマスター版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アネック
  • メディア: DVD



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