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トマス・ジーバーツに取材をする [都市デザイン]

日本でも著書『ツヴァイスンシュタット』(邦題は都市田園計画の展望―「間にある都市」の思想)が翻訳されているドイツの都市計画界を代表する「知」のトマス・ジーバーツに取材をする。これは、ハイライフ研究所のウェブサイトにアップするためで、そのうち動画が見られると思うので詳しい内容はここでは紹介しないが、テーマは「公共空間」であった。簡単にその要旨だけをまとめると、伝統的には公共空間は「家」では得られないプライバシーを確保するために利用された。しかし、そのうち「家」が大きくなったり、冷蔵庫ができたり、風呂がつくられたり、テレビが普及したりして、公共空間ではなくて家でもプライベートな楽しみができるようになった。ただし、その結果、空間やエネルギーの使われ方が極めて非効率になり、さらに社会性が人々から失われて精神的にもちょっと参ってしまった人々が増え始めているというような話をしてもらった。まさに立て板に水、のように話が論理的に展開していき、ぐいぐいと引き込まれていく。彼の講義を受けていた学生は幸せ者である。その知恵はもちろんのこと、ウィットやユーモアのセンス、人格にも強烈に惹かれた。会えて、話ができたことに心から嬉しく思う。

ジーバーツ氏は日本のお風呂屋がお気に入りであった。残念ながら、多くの風呂屋は潰れてしまい、幾つか残っている風呂屋は自治体に補助金をもらったりしていることを伝えると、あんな楽しい経験ができるのに、と残念そうであった。日本は家のプライバシー的な機能を、どんどん外へとアウトソーシングしてきていたのだが、最近では内側に持って行こうとしている。個人主義が凌駕しているからだ。私の大学の教員にも、教員紹介のホームページに写真を掲載することをプライバシーの侵害だと主張した人がいたが、大学の教員なんかは半分公共財みたいなものだから、顔にはプライバシーはないと私は考える。それに、どんどんと個人主義の世界に入っていっても、それはそれで楽しくないと思うのだが違うのだろうか。せっかく、格調高いジーバーツ氏の話で始まったのに、終わりはつまらない話になってしまった。申し訳ない。

都市田園計画の展望―「間にある都市」の思想

都市田園計画の展望―「間にある都市」の思想

  • 作者: トマス ジーバーツ
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本



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