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都市における路面電車の効用 [都市デザイン]

デュッセルドルフには多くの路面電車が走っている。運行間隔は10分くらいでそれほどサービスはよくないが、10分程度だと生活には不便はない。市内なら路面電車でほぼどこでも行けるのではないかと思うくらいネットワークが密である。家から5分以内に4つの駅がある。私は自動車を持っていないので、この路面電車をよく使う。実はバスの方が時間的には早いことが分かったが、なんか路面電車の方を使ってしまう。これはルートが決まっているという安心感からであろう。

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さて、この路面電車であるが日本の地下鉄や鉄道と同様のものであると捉えると大いに困惑するであろう。まず、時間が適当である。本数は同じだと思うが、来る間隔は一定ではない。あと、停留所などのように歩行者と空間を共有する場所が多いが、路面電車は人を気にしない。ということで、結構、ボーッとしているとぶつけられる可能性がある。踏切などはもちろんない。自らが自らを守るという意識をもたないと危ない。年間でどの程度事故があるかは不明であるが、そのうち調べてみたい。それでも人々は、あまり気にも止めないで、この路面電車をうまく活用して、共生しているように見受けられる。

この路面電車の何よりの効用は都市を歩行者の視点で観ることができることである。都市を知るうえではもってこいの交通機関だ。地下鉄だとまったく分からない。モノレールとかだと空中散歩のようになってしまい、人々の生活空間での活動等が分からない。バスもそういう意味では同じと思われるかもしれないが、何か、この路面電車はバスと違うよさがある。バスよりゆったりとしたリズムが都市を観察するスピードとして優れているのかもしれない。デュッセルドルフの路面電車は自動車と道路を共有している。一部の道路を除くと路駐が常識なので、路面電車が走行していると自動車が通るスペースがほとんどなくなる。したがって、路面電車の後ろを走らなくてはならなくなるのだが、まあ、そういう道路はあまり自動車も走っていないのか、あまり渋滞を引き起こしたりはしていないようだ。

路面電車があるとなんかホッとする。都市のアメニティを高める効用がある公共財であろう。人々のアクセシビリティを高め、しかも、都市という劇場を移動しながら観て楽しむことができる。もちろん、同乗する人達もアトラクションである。ドイツでもアーヘンやミュンスターなどは人口規模の問題もあり、路面電車を撤去してしまったが勿体ないことをしてしまったな、と思う。モータリゼーションによる弊害が我が国でも随分と顕在化している今、この路面電車を見直すことを考えるべきかもしれないな、とデュッセルドルフの路面電車に乗りながら思ったりしている。


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