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高松ー溶解する地方都市 [都市デザイン]

高松を訪れる。高松は日本で最初に市街化調整区域を外した自治体の一つであり、大胆というか、将来を見据える能力に欠如している、というか、まあ都市計画を馬鹿にしている自治体である。それでは、この高松でどのようなことが起きているのか。それは、市街化調整区域を勝手に外してしまうくらいだから、もう都心がどんどんと融解して、郊外へだらしなくスプロールをしているのである。しかも、このスプロールを促進するために、馬鹿高い金をどんどん投資して、高規格の道路を碁盤状に整備している。良好な農地やため池がどんどんと道路と郊外住宅地へと変容しているのである。そして、市街化調整区域がないくらいだから、もうまったく計画性がなく、中層マンションがあちらこちらに林立している。中心性などまったくない、だらしなくのっぺりと平面状に都市が広がっている。アメリカ型の自動車型都市であるが、アメリカの方が都市デザインがしっかりしているから、高松の方が、より気持ちが悪い。郊外には当然、大規模ショッピングセンターが多く立地しており、大通り沿いには醜悪な郊外大型店が立地しているし、河川沿いにはラブホテルが立地しており、自動車社会ならではのアグリースケープ(uglyscape)が展開する。

高松は市街化調整区域の規制を外したために、郊外立地が自由に行えるためか、大規模小売店の店舗面積が1991年から2002年までに2.8倍も増えている。1999年、2002年ともに人口当たりの大規模小売店の床面積は全国一位。しかし、これだけ競争が激しいので、売上げ効率は悪く、店舗面積当たりの売上額は全国ワースト2位。こんな状況なのに、さらに市の西側に店舗面積4万平米のイオンショッピングセンターが工事中である。であるにも関わらず、中心市街地の商店街に何百億円の投資を行い、駐車場などを整備している。これは、30年前に比べて通行量が5割以上も減っているので焦ったからだと思われるが、そもそも中心市街地という言葉が高松においてはおかしい。中心市街地は、郊外の大規模ショッピングセンターである夢タウンだ。日曜日の夕方に訪れたが、なんと駐車場に入れない車で道路が渋滞していた。駐車場を整備するなら、中心市街地ではなく、ここにするべきだ。そちらの方が人々の需要に合っている。高松だけでなく、郊外に顧客を取られておきながら、中心市街地、中心市街地と叫ぶ商店街が多過ぎる。もうとっくの昔に女房に逃げられて、元女房は別の男と住んでいるのに、俺が旦那だと叫んでいるような恥ずかしさを自覚すべきである。もし、女房に逃げられたくなかったのなら、間違っても郊外に大規模ショッピングセンターを立地させるような都市計画の変更はするべきではなかった。そうでなければ、公共交通を中心とした交通体系をつくり、大規模ショッピングセンターの最大の魅力である自動車によるアクセスというメリットをあまり享受できないよう、道路整備にお金をかけなければよかったのである。

しかも、信じられないことだが、市街化調整区域を外しておきながら、今ではコンパクトシティを目指すといっている。市街化調整区域を外したら、都市計画的にはコンパクトという形状を緩やかでも維持していた堤を外したも同然である。堤を壊して、池に溜まっていた水を漏らしてどこもびしょびしょになってしまった後に、コンパクトシティというのは、もう完全に論理的思考ができていない。覆水盆に返らず、である。というか、こんな状態だったらコンパクトシティをしない方がよっぽどましでしょう。いたずらに金を無駄にしていると、そのうちとんでもないしっぺ返しがくるであろう。今回の出張では、とんでもないものを見てしまった。多少は、こういう業界のはしくれとしても責任を感じるほどの酷さである。

しかし、一方で北浜アレーとかいうコンバージョンの極めていい好例を見ることもできた。こういう知恵があるにも関わらず、それを都市計画に組み込むことができていない。レルネルさんが市長であれば、簡単に状況を改善させられるような「都市の鍼治療」のネタはたくさんある。とはいえ、レインボーロードというような郊外促進を進める大通りをいくつも市が積極的に整備しているようなことをした自治体には必ず報いがくる。ここに予言しておく。



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