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都市研究におけるケース・スタディの基礎(3) [都市デザイン]

 都市研究におけるケース・スタディをするうえでの留意点をこれまで2つ述べていた。一つ目は、比較する対象の特徴をしっかりと捉える、出来れば科学実験のように、比較する指標以外の条件をなるべく同一のものすることである。二つ目は、ケース・スタディをするうえで用いられている言葉の定義を誤解しないでしっかりと理解するということであった。
 そして、このブログで述べたい3点目は、拙速に結論を導かないということである。ケース・スタディの対象を研究するということは、自分が無知であったことを知るということでもある。それは、学習する過程でもあるのだ。したがって、それまでの自分の知識・経験等でその対象をしっかりと理解することは、実は不可能に近かったりするのだが、安易に結論を導いてしまいたがる人が多い。それは、あくまで結論ではなく、むしろ研究の端緒にあたる仮説設定に過ぎないのだが、この仮説を検証しないで、印象論だけで結論的な判断を下してしまう人が本当に多いのだ。ケース・スタディというのは仮説設定→検証→大抵、ここで仮説が間違っているので再び仮説設定→検証→・・・という作業が続いて、だんだんと真実が見えてくるのだが、それは大変であるので、自分の大雑把でいい加減な知識を動員して、自分の眼鏡でみえるストーリーをつくってしまう。例えば、ドイツは市民参加が絶対的にやられている、とかドイツは計画なくて開発なし、などと言われているが、実際、ケース・スタディをするとそうではない場合もあったりする。連邦制をとっているドイツは、日本のように都市計画法が国の法律ではないので、様々な状況があるのだが、自分の知っている事例(大抵の場合、極めて優れている事例)をもとに、ドイツの都市計画のあり方を一般化して理解してしまい、例外的な事例を受け入れないのだ。
 事例研究に意味はあるが、それは知らないことを知るためにむしろされるべきであり、安易な一般化された結論を導くためにすることは慎むべきであり、それは長期的な取り組みを研究者に要求する方法論であると思われる。
 私もクリチバの成功の最大要因がレルネルさんであった、ことはクリチバを初めて訪れた1997年から数えて、20年以上経って、確信を持って言えるようになったが、『人間都市クリチバ』の本を出した2004年時では、まだそれは仮説の範疇をでていなかった。今は確信を持っている。

タグ:事例研究
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