岡崎京子『東方見聞録』 [書評]
『ヤングサンデー』で1987年の創刊号から14号まで連載された作品。佐藤黄緑と山田吉太郎というハイ・ティーンのカップルが銀座・国会議事堂・中野・国立・原宿・江ノ島・井の頭公園・青山墓地・神田神保町などを訪れて、主に佐藤黄緑の視座を通して、町の様子が描かれている。岡崎京子のその後の作品にみられるような過激な描写はなく、ホノボノとした描写が続き、ちょっと心和む。とはいえ、『リバーズ・エッジ』で開花する東京を観る鋭さの萌芽がこの作品のあちこちに既に観察され、そういった観点からも興味深い作品であると思われる。