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なぜ日本人は落合博満が嫌いか? [書評]

数多くのテレビ番組のプロデューサーとして、かつ熱烈なるジャイアンツ・ファンで知られるテリー伊藤の熱烈なら落合博満の絶賛本。であると同時に、なぜ日本人がその落合博満を評価できないのか、評価しないのか、という観点から日本人論を展開する文化人類学的なエッセイでもある。文章がちょっとこなれていないという点は今ひとつではあるが書かれている内容は興味深いし、何より落合博満の傑物ぶりが、個人的な経験を踏まえてよく論じられていると思われる。「日本人が幼稚である」から落合博満が好きになれない、という考えはちょっと乱暴というか短絡的に過ぎるかなとは思われるが、「落合を評価できない」というのは、日本人という集団を考えるうえでの一つの切り口になることだけは確かである。

本書が出た後、中日新聞は落合監督を解任した。落合監督は本書が指摘するまでもなく、戦後、最も優れたプロ野球監督であったことは異論を待たない。その監督を評価できなかった中日新聞という組織は、まさにテリー伊藤が指摘する「幼稚な日本人」の典型である。本書が出された後、落合監督を中日新聞が解任したという事実を踏まえて本書を読むと、確かにテリー伊藤が提起した日本人の問題をよりしっかりと考えなくては、日本人は駄目になってしまうかなと思わさせられる。一日も早く、またユニフォームに袖を通した落合博満を見たくなる気持ちにさせる本である。


なぜ日本人は落合博満が嫌いか? (角川oneテーマ21)

なぜ日本人は落合博満が嫌いか? (角川oneテーマ21)

  • 作者: テリー 伊藤
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/05/10
  • メディア: 新書



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