乾正雄『夜は暗くてはいけないか』 [書評]
照明に関する文化論。谷崎潤一郎は『陰翳礼讃』で、日本は明るくないところに美を見出す伝統があると述べた。しかし、著者は実はヨーロッパの方が、現在の日本より暗さに美や心の安寧を求めている、ということを絵画、建築から論じていく。そして、著者の驚くほどの博識によって論じられる文化論は強い説得力を持って読者に迫ってくる。終盤の方で、最近のライトアップに関しても論じているのだが、猫も杓子もライトアップをすることでマイナスの影響しか出ないなどと指摘している。そして、しっかりとしたライトアップができている町は、行政がしっかりとしているとも述べている。これらの指摘・見識は非常に示唆に富んでいる。
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