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Herbert Gans 『Urban Villagers』 [書評]

都市社会学の金字塔のような著書である。これまでも、というか25年近く、読まなくてはと思っていたのに読めなかった本をようやく読むことができた。なぜ、そんなに時間がかかったのか、というと何しろ分厚い(400ページ強)。そのために、それを読むようなまとまった時間が取れなかった、というか取ろうとしなかったからである。ジェイン・ジェイコブスが『The Death and Life of Great American Cities』を発表する以前に、都市計画家の低所得層(ローワー・クラス層)・移民層への考えがズレていることを見事に指摘している。そして、そのような考えのもとで再開発をしても、そこで移動させられる人々のためにはならない、とも指摘している。彼らが抱えている問題は、単に、公園や公共福祉施設や学校といったハード施設をいくらつくっても解決しない、という指摘は現在でも当て嵌まる。そのような指摘をまさに、ジェイコブス以前にしていたことに、著者の凄まじい慧眼に感動するし、また都市社会学という学問分野の、都市計画における重要性を再認識させる。
ミドル・クラスの価値観でローワー・クラスを見るな。アメリカにおいて市民参加を実践する人たちで、しっかりとした考え方を持っているのは、この本から多くを学んでいるからなんだな、ということに改めて気づく。
 コミュニティの見方、そして、それを探るための方法論などを含めて、必読本である。って、自分がこれまで読まなかったのに必読と書くのは、自分のことを棚に上げていて恐縮ではあるが。ある意味、ジェイコブスの悪筆の『The Death and Life of Great American Cities』より、はるかにためになるかと思われる。直感でのジェイコブスとしっかりしたフィールドワークの技法を習得しているガンズとの違いということもあるかもしれない。ジェイコブスはなるほどと頷かせるが、ガンズの本書は、しっかりと住民達の実像と政策のズレとが存在することを学ばせてくれる。また、幾つかの章の後に「追伸」という形で、その後の状況も加筆しているのだが、これが非常にためになる。加えて、方法論についても解説してくれているので、都市社会学を勉強する人たちにとっては重要な知見を与えてくれる。


Urban Villagers, Rev & Exp Ed

Urban Villagers, Rev & Exp Ed

  • 作者: Gans, Herbert J.
  • 出版社/メーカー: Free Press
  • 発売日: 1982/06/01
  • メディア: ペーパーバック



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