寺沢武一『ゴクウ』 [書評]
2023年9月に逝去された寺沢武一のハードボイルドSF漫画。1987年から『コミック・バーガー』にて連載された。左目の義眼に全てのコンピューターにアクセスすることができる端末が埋め込まれている探偵、風林寺悟空を主人公とする物語だ。寺沢武一の代表作である『コブラ』から緩さをそぎ取った、もう半端ないハードボイルドで画風も人間離れしたものとなっている。ある意味で『コブラ』という少年誌で妥協せざるを得なかった、作者がもう思う存分に自分が描きたいものを描ききったという印象を受ける。まだソ連を崩壊する前、インターネットが普及する前にこのようなストーリーの着想を得たということが驚きだ。天才、という言葉がふさわしいような漫画家であることをこの作品を通して改めて思う。