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記号論講義 [書評]

 本書は11の章を通じて、我々の日常生活をつくりだす記号の働きと意味の経験を考察し、記号現象を読み解く方法のいくつかを提示したものである。我々を取り巻くものは、記号としての存在を強めている。そのような記号が存在感を増す中、我々はセミオ・リテラシーを獲得すべきであるのだが、本書は、そのリテラシー能力を高めるうえで、非常に効果的なのではないかと思われる。
 本書によれば、意味環境としての人間の文明は、「記号」・「社会」・「技術」という3つの次元のトポロジカルな相互連関において理解される。現在は「記号」と「技術」の組み合わせが更新され、「社会」そのものが大きく変化し、「知」が変容する。それが、文字と書物を基礎単位とする古典的な知の時代を終焉させ、文字、画像、動画、音声など、多様な記号を認識の単位とするような知がこれから求められる。そのような「知」が模索される中、「記号の知」をしっかりと理解することの重要性が本書から理解することができた。
 先日、あるシンポジウムで、パネリストで同席した先生が、出版社が減っていることを大いに嘆いていた。ただ、そのような時代の変化を嘆くより、文字が記号としての優越性を持っていた状況が変化し、書物というメディアの優越性も失われつつある中、我々は新しく台頭する記号に応じて「知」を変容させることが必要だ。大学の教員であれば、なおさら、そのような変化に先んじることが求められると思うのだ。それは、シンポジウムでこの先生の話を聞いていた時も思っていたことだが、本書を読み、それが確信となった。時代に取り残されないためにも読んだ本がいいかと思う。
 

記号論講義 ――日常生活批判のためのレッスン (ちくま学芸文庫)

記号論講義 ――日常生活批判のためのレッスン (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 英敬, 石田
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/07/10
  • メディア: 文庫



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