『都市政策の思想と現実』宮本憲一 [書評]
政治経済学者であるが、都市論者の泰斗である宮本憲一氏の著書。1980年に出された『都市経済論』という名著が、既に絶版となっているので、それに代わる本としては、これはお勧めであろう。たいへん分かりやすく、論理的な文章に理解は進むが、誤字は多い。ブラジルのクリチバがチリチバになっていたり、ちょっと笑えない誤字が特に後半部には少なくない。また、私は宮本氏を敬愛しているので、彼に過ちはないと思いたいのだが、「ドイツは日本と同じように持ち家主義であり、主として民間に供給をまかせている」(p.238)という明らかな事実誤認もある。ドイツは持ち家率が3割台で、旧東ドイツは特に賃貸が顕著であるが、旧西ドイツでも戸建て住宅はともかく、集合住宅はほとんどが賃貸である。ただ、そのような重箱の隅をほじくると出てくるミスはあるが、400ページに及ぶこの本は、日本の都市政策を相当、範囲、網羅しており、政策学部の大学生は読むべき著書であることは間違いない。