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池上俊一『森と山と川でたどるドイツ史』 [書評]

西洋中世史を専門とする東京大学大学院総合文化研究科教授の『○○でたどる○○史』のドイツ版。他には『パスタでたどるイタリア史』、『王様でたどるイギリス史』、『お菓子でたどるフランス史』、『情熱でたどるスペイン史』などを著されている。ある切り口で、ある国の歴史を語る、というのはなかなか興味深い試みであり、それなりの重みのある読後感はあった。ただ、この難しいところは、その切り口が分析対象をしっかりと照射するのに適しているかどうか、ということだ。本書も『森と山と川でたどる』ことができるドイツと、そうでないドイツがある。著者はそのような限界を分かっているのであろうが、その切り口を切ったナイフで、切れないドイツも切ろうとすることがたまにある。『森と山と川でたどる』ことができるドイツ史だけを浮き彫りにすればいいのであろうが、まあ、思わずその怖ろしいほどの教養的知識をちょっと出したくなってしまうところがあるのだろう。読んで無駄ではないが、この本が示すドイツ史は、ドイツ史全体のほんの一部分であることを強く自覚して読むといいのではないだろうか。


森と山と川でたどるドイツ史 (岩波ジュニア新書)

森と山と川でたどるドイツ史 (岩波ジュニア新書)

  • 作者: 池上 俊一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/11/21
  • メディア: 新書



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