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カンサスのボーカリスト、スティーブ・ウォルシュのステージ衣装についての違和感 [ロック音楽]

カンサスというアメリカのプログレッシブ・ロックバンドが存在する。スティーブ・ウォルシュは、1970年代に「伝承」、「暗黒への曳航」などの大ヒット・アルバムを出したカンサス黄金時代のボーカリストである。というか、一時期脱退するも、ほとんどデビュー時から2014年までカンサスのボーカリストを張っていた、ある意味、カンサスの顔のような存在である。
 カンサスの音楽性はすこぶる高く、バンドとしてのアンサンブルも際だっており、変拍子が多い曲の演奏を見事にこなしている。楽器演奏も複数できるメンバーもいて、バイオリンも入ったりしていて、それは他の追随を許さないようなレベルの高さであるかなと思ったりもする。
 さて、しかし、イギリスのプログレッシブ・ロックバンドに比べると、どうにもカリスマ性というか、オーセンティックさに欠けている。失礼ながら、なんか超一流という感じに思えなかったのである。寿司屋でいうと、銀座とか築地の高級店ではなく、池袋とか三軒茶屋とかにある美味しいけど、そんなに高いお金は払いたくないな、という感じの庶民的なお店のようなイメージである。
 これは高校時代にカンサスを同時代に聞いていた時に抱いていた印象だったのだが、久し振りに1970年代頃の映像を見て、その理由がよく分かった。それは、スティーブ・ウォルシュのファッション・センスがあまりにもださいからである。アディダスのスポーツ・シャツに半パンって、ジョッギングするあんちゃんのような格好でライブで歌っているのである。というか、駒沢公園で普通のおっさんが、この格好でジョギングしていても、ちょっとダサい感じがする。歌声は素晴らしい。いや、スティーブ・ウォルシュはボーカリストとしても傑出した才能を感じる。演奏も素晴らしい。そして、楽曲も素晴らしい。ただ、どんなに素晴らしい曲でも、歌声でも、演奏でも、このジョッギングするような格好で歌われると、有り難みが吹っ飛んでしまう。
 そういう意味では、イエスとかはよく分かっている。あの意味のないようなヒラヒラの服装は、なんかこう曲の有り難みを増すような気がする。
 まあ、スティーブ・ウォルシュと似たようなプログレ系のボーカリストを探すと、フィル・コリンズになるかな。フィル・コリンズもそういう意味では格好が悪いのだが、ガブリエルがいなくなったあとのメンバーは全員が地味なのでファッションとかあまり気にならない。一方で、カンサスはメンバーのファッション・センスがあまりにも統一されていない。例えばOn the Other Sideの動画でみても分かるように、リッチ・ウィリアムスとかは70年代とかはタキシードみたいなものを着ていたし、ケリー・リブグレンとかは黒い浴衣のようなステージ衣装だった。その中でジョッギング・スタイルのボーカリスト・・・いや、有り難みが減る。
 カンサスというのは日本でいえば「茨城」、「福井」みたいな感じで政治的にも保守的で、田舎というイメージである。まあ、そういう名前を堂々とバンド名にして、しかも、めちゃくちゃ上手い、というギャップが強烈なインパクトを聴く者に与えるところが個性といえば個性だが、しかし、見た目をダサくしなくても・・・。ううむ、やはりバンドは見た目が重要なのかなと思わせる。いや、ルックスというのではなく、ステージでのこうトータルな見栄えが重要なのだな、ということを久し振りにカンサスの昔のライブ動画をみて気づいた次第である。

https://www.youtube.com/watch?v=bfSVRJg8BUk

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