SSブログ

経済社会活動をまともに戻したいのであればPCR検査は不可欠だ [サステイナブルな問題]

日本ではPCR検査数が圧倒的に少ない。その少なさの異常さは、イギリスのBBCなどで報道されている。桁が違う、という指摘である。このBBCの記事では、日本に滞在する外国人がPCR検査を受けるまでいかに酷い目に遭ったかとの報道もされていて、「日本、おかしいぞ」という論調で書かれている。

https://www.bbc.com/news/world-asia-52466834

私は日本のニュースはみなくてもCNNとMSNBCは毎日、チェックしているので世界的なコロナウィルス対策はある程度、理解しているが、そのような目でみると確かに日本は否定的な意味で「例外的」であり、ちょっと「異常さ」も感じる。

さて、しかし、日本ではあまり、この「異常さ」を自覚しているとは思えない。例えば、次はある総合病院のブログではあるが、PCR検査をしないことの理由が書かれている。橋下元大阪市長などの意見もほぼ同じようなものだ。

「新型コロナウイルスのPCR検査の陽性率(感染している人を調べた場合、陽性と出る確率)は70%と言われております。また、陰性率(感染していない人を調べた場合、陰性と出る確率)は99%ほどと言われております。
つまり、感染していても30%の人は陰性となり見過ごされてしまい、感染していなくて1%の人は陽性と誤った診断を下されてしまうのです。これがPCR検査の限界でそれを知った上で検査に望まなくていけません。
例えば、日本人の人口1億人をPCR検査で調べたとします。そして感染している人の割合を0.1%と仮定して、10万人としましょう。(5月10日時点で全国で15000人と発表されております。多めに見積もって10万人とします)すると、1億人の1%である100万人の人が感染していないのに陽性と診断を受けて、場合によっては入院やホテル待機になります。
100万人に対して全国の病床を合わせても13000ベッド程度です。これにホテルの部屋を合わせても到底足りませんよね。
そして10万人の30%である3万人の方が感染しているのに陰性と診断を受けて、街を出歩くことになるのです。
日本国民全員がPCR検査を受けるのはかなり大げさな話ではありますが、その100分の1の100万人が検査を受けたとしても1万人が不要な病院のベッドやホテルの部屋が必要となります。全国のベッドが13000に対してかなり大きな割合を占めしまいますね。
このような理由から、保健所は現時点では検査を絞っているのです。」

 ちょっとこの引用元は、武士の情けで上げないでおくが、この議論のおかしさは、PCR検査を実施することのデメリットだけ述べていて、PCR検査を実施しないことのデメリットを考えていないことである。PCR検査を実施することで問題は100%解決できないことは分かる。しかし、実施しないことの弊害の方が遙かに大きいのではないか。PCR検査を実施しないことのデメリットは下記の通りである。
 まず、陰性での誤差(1%)の場合は、これは安全側を考えれば、ホテル待機してもらえばよい。そもそも、まったくの健常者にまで検査をしろとは言っていない。もちろん、そこまでやれればいいが、それはPCR検査の最先端を行っている人口30万人ちょっとのアイスランドでも全国民検査はやっていない。ここで、いきなり1億人という数字を出すのはあまりにも乱暴で、悪意さえ感じる。現状の検査数は人口1000人当たり1.4である。つまり、ちょっと前のデータだがイタリア、ドイツは22.1, 20.9とBBCが指摘するように一桁違っている。日本は、1億人に換算しても14万にしか過ぎない。それをいきなり1億に上げて、そんなことをしたら医療崩壊だと指摘されてもな。問題は発熱をしたり、明らかに症状が出ていたりしていても、このような議論によって、結果、検査もされずにコロナウィルスによって死者が出ている(大阪の元ラガーマン)ような状況をもたらしていることである。もしくは、もう少し早く検査されれば死ななくても済んだのに、重篤化されてから検査をしたので亡くなってしまっりもしている(28際の力士のケースとかはこれだろう)。亡くなった人達は検査をされたり、早くされていれば治療されたかもしれない。これは、亡くなった家族からすれば、裁判に訴えるに相当する判断ミスであると思う。
 このブログでは「100万人に対して全国の病床を合わせても13000ベッド程度です。これにホテルの部屋を合わせても到底足りませんよね」と書いているが、全国のホテルの部屋数は162万室ある。宿泊客の大幅な減少を考えれば、もしかしたらホテルの部屋を提供してもらうことで対応できるかもしれない。また、家族がいなくて一人暮らしであれば、自宅待機という選択肢もあり得るかもしれない。ホテルの数字なんて、簡単に調べられるのに、この病院のブログを書いた人は勝手に、少ないだろうと思ってこのように書いているのだろう。これは、出来ない理由を探す人にありがちなミスで、問題を解決しようと考えたら、こんな無責任なことはとても書けない(しっかりと調べるから)。
 もう一つの「そして10万人の30%である3万人の方が感染しているのに陰性と診断を受けて、街を出歩くことになるのです」ということだが、もしPCR検査の陽性率の70%が低くて気になるのであれば、例えば、症状的にこれは誤りではないかと思う人は再検査をして、その結果が出るまで待機させればいいのである。70%という確率は確かに低いが、二回やって両方とも陰性と出る確率は9%、すなわち信頼度は91%ほどになる。それでも高すぎるというのであれば三回やればいいだろう。そうすると誤差は2.7%(信頼度97%)になる。
 PCR検査をしなくてもいいと主張する人達の背景には、医療崩壊への危惧というのが考えられる。確かに医療崩壊は大変な問題である。しかし、PCR検査なくして、コロナウィルス以前の社会を復活させることは不可能である。電車やバス、飛行機で隣に座った人がコロナウィルスである確率が1%以下(個人的には0.1%以下が望ましい)であろうと信頼できるような状況でなければ、多くの人々は外食にもいかねければ、ライブハウスや野球観戦にも行かないであろう。
 そもそもTransmittable Rateがたかだか1.3のインフルエンザでも、罹患すると会社や学校を休まなくてもいけないような社会規範を有していた国が、TRが2で、しかもワクチンもないコロナウィルスが蔓延している状況下で、それ以前の状態に戻れる訳がないことはよく考えなくても理解できることである。
 医療崩壊を防ぐことは極めて大切なことであるが、社会システムを正常に戻すためには、PCR検査は不可欠であり、欧州だけでなく、アメリカも民主党系はそのように強く主張している。「一にもテスト、二にもテスト、三にもテスト」である。これは、一人の患者が他人と接触しただけで、あっという間にコロナは広がってしまうからであり、この一人の患者が他人との接触をいかに抑えられるか、という点が、復帰には何よりも不可欠である。アメリカでトランプがPCR検査を最近、嫌がっているのは、ロックダウンに抵抗する人達の支持を受けて、今秋の大統領選に臨もうとする選挙戦略である(下記のCNNの記事を参照)。ただし、このトランプの賭けはアメリカ人の生命をチップにした、極めて危険なものである。そのようなトランプの論説を真に受けて、あたかも我が意を得たり(PCR検査は必要ない)というように日本の識者とかマスコミが報道しているのを見ると、本当、呆れ果てる。呆れ果てて、ブログに書く気力も失せたが、今日は土曜日でよく寝たこともあり、頑張って書いた。

https://edition.cnn.com/2020/05/02/opinions/president-trumps-reelection-strategy-is-taking-shape-zelizer/index.html

タグ:日本 PCR検査
nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感