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失われた30年が意味するもの [グローバルな問題]

バブルが破裂した後、失われた10年という言葉が使われたが、実際は「失われた30年」である。というか、このままだとずっと日本は失われ続けるかもしれない。まあ、現時点では「失われた30年」であろう。さて、なぜそう思うのか。それは、この30年で欧米といった先進国とは大きな経済的格差が広がってしまい、また後進国には猛烈な勢いで追いつき、追い越される過程にあるからだ。マラソンで言えば、皆が走っている時に歩いたり、立ち止まったりしているような状況だ。いや、よくよく考えれば、別にマラソンで一生懸命走らなくてもいいじゃないか、と思わなくもないが、そうすると国際経済的には落ちこぼれになって、とても若者が住みたくなるような国じゃあなくなっていくような気がする。
 なぜ、そう思うのかというと、今、アメリカでいろいろと取材調査をしているからだ。今日はシアトルの市役所の職員と話をしていたのだが、シアトルは低所得者層向けの住宅への申請資格が年収80000ドルだそうだ。これって年収900万円以上に相当する。つまり、シアトルであれば、ほとんどの日本人は低所得者層向けの住宅に申請する資格があるということだ。なんてこったい!驚いた私に、この職員は「何を驚いているんだ。サンタクララ(シリコンバレーにある自治体)だったら、年収100,000ドルから申請できるぞ」と言われてさらに驚いた。
 私がアメリカで生活をしていた1990年代前半、日本より高いものはアメリカではほとんどなかった。多くの日本人が強い円でいい気になって海外旅行を楽しんでいる時代である。今は弱い円と安い物価を目当てに多くの外国人が訪れる国になってしまった。
 このような格差、明らかな経済的な負け状況を目の当たりにすると、本当、脱出できる若者は日本を脱出するべきだなと思わずにはいられない。私のゼミの卒業生も気の利いた奴は脱出しているし、私の長女もそうする計画のようだ。本当、団塊の世代がいい気になっていると、若者がいない国になってしまうぞ。人口減少しているのに移民を入れるのはどうのこうのと言っているうちに、日本が移民を排出する国になってしまうぞ。そのような状況になってしまった背景が海外の経済状況を知るにつけよく理解できる。

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コロナウィルスはアメリカでは流行らないだろうな、と勝手に推測する [都市デザイン]

現在、アメリカにいる。コロナウィルスへの危惧から株も大暴落をしているが、さて、アメリカではそれほどコロナウィルスが流行らないだろうな、という気分になっている。これは、日本と比べて遙かに人口密度が低いからだ。そもそも人と接しない。いや、ニューヨークのマンハッタンのようなところであれば、流行るかもしれない。しかし、私が今回、訪れたデンバー、アトランタ、シアトルだとそれほど流行らないような気がする。この三都市の中ではシアトルが圧倒的に人口密度は高いが、それでも京都や東京とは比べものにならない。コンサートやスポーツ・イベントに行けば、それなりにウィルスも広まっているかもしれないが、日常的な移動も自動車が主体だし、なんか日本とは状況が違うのではないかなと思ったりする。伝染病が流行する危険度は都市度を測る一つの指標ではないだろうか。

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アメリカの大学の学費について [教育論]

アトランタにあるジョージア工科大学の先生にジェントリフィケーションに関して、取材をした。そこで、話が横にそれて大学の学費について話をした。というか、あちらから質問があったのでいろいろとやり取りをしたのだ。
 ジョージア工科大学は公立大学(州立大学)なので相当、安いのだが、それでも州内の出身の学生は一年で17000ドル(おおよそ200万円ぐらい)で、州外だと34000ドルとなる。これが例えばアイヴィー・リーグのプリンストン大学だと60000ドル(おおよそ700万円弱)ぐらいになる。4年間通ったら240000ドル、つまり2700万円ぐらいだ。とても私の稼ぎでは払えない。
 25年前、私はカリフォルニア大学バークレイ校の大学院に通っていたが、その時は一年間で120万円であった。留学生だったので最も高い授業料を支払っていたかと思うが、その程度である。ちなみに、ジョージア工科大学の先生はプリンストン大学に通っていたそうだが、その当時は9000ドル(90万円ぐらいか。当時は1ドル=100円ぐらいだったので)だったそうだ。
 日本の国立大学は年間52万円、私立大学はおよそ100万円ぐらいであることを考えると、アメリカはちょっとあり得ないぐらい高くなっている。ちなみに、私の長女はデンマークの大学院に通っているが、授業料は170万円だ。デンマーク人だとむしろ生活費として月6万円支給(年間で72万円)されるので、これは随分と差があるが致し方ない。とはいえ、アメリカの大学院に行くよりかはずっとましかなと思う。
 日本の大学の授業料が高いという批判もあるが、私の日本人の友人などは、授業料を高くしてもしっかりと教育してくれればいい、と言うものもいる。私は自分が奉職する龍谷大学政策学部は、お世辞抜きに、アメリカのどんな大学よりも教育サービスがいい(というか、良すぎて教員が疲弊しているという問題はあるが)と思うので、値段を上げたいぐらいだなと思ったりもするが、肝心の受験生にその良さが伝わっていないので、まず、そこから取り組みたいと思ったりもする。授業料が高ければ、教育サービスが優れている訳ではないのが、大学だからだ。

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地域通貨「さるぼぼコイン」 [サステイナブルな問題]

地域通貨がバブルの後に流行ったことがある。なぜか、エコマネーという変な日本語がつけられていた。なにがエコなのか、よく分からなかったが確か経産省(当時は通産省)の役人が命名者だ。それはともかくとして、各地でエコマネーがつくられた。早稲田大学そばの商店街でつくられたアトム通貨、滋賀県の「オウミ」、千葉県のピーナッツなどである。
 私もその先進事例であるオーストラリアのマレーニのレッツ・システムの創始者、ジル・ジョーダンに取材をするなど、その仕組みなどを調査したことがある。その後、日本ではあまり地域通貨という言葉を聞かなくなる。地域通貨のポイントは幾つかあるが、レッツ・システムなどは貨幣の流通などはなく、単にやり取りの記録(台帳)で管理されるのに対して、日本の多くの地域通貨は子供銀行のように紙幣を発行した。紙幣を発行すると、それによって流通量が制限されるし、その場に紙幣がないとやり取りができない。レッツ・システムなどに比べていると地域通貨というシステムを分かってないんじゃないか、と思わせられたりしたが、案の定、その後、あまり進展することはなかった。
 私は、大学はレッツ・システムのような地域通貨を流通させるコミュニティとしては適当だなということと、携帯アプリの普及は、そのやり取りの記録管理に使えることに気づき、前任校では学長に学内での地域通貨の導入に関する企画書を提案したが、なんか学長は「ううむ、面白いアイデアだね」と頷くだけで実行に移されることはなかった。まあ、前任校はアイデアを潰すというのがほとんど組織文化に近いから今更愚痴を言っても仕方ないが、その後、会津大学が導入したというのを聞いた時は悔しく思ったりはした。
 さらに、この会津大学だけでなく、最近、再び地域通貨が注目されるようになっている。それは、地域における人口減少によってコミュニティが弱体化していることと、前述したようなインターネットや携帯の普及が地域通貨のインフラとして極めて使い勝手がよくなっていることである。そのようなネオ地域通貨でも特に注目されているのが飛騨高山の「さるぼぼ」である。ということで、「さるぼぼ」の生みの親でもある飛騨信用組合の古里さんに取材をしに行った。
 「さるぼぼ」は2017年3月にリリースされるのだが、その二年ぐらい前からプロジェクト・チームがつくられ検討がされていた。なぜ地域通貨にしたかというと、域内でお金を回したかったらだ。高山も人口がすごい勢いで減っている。そして地域の商店などがビジネスを畳むと、そこに域外資本がどんどん入ってきて、さらにお金が外に流れてしまい、地域にお金が残らない。地域で循環するような経済をつくりたい、というのが大きな目的であった。一方で、高山は観光地としても人気がある。年間470万人の観光客が来るが、これは人口単位でみると、全国でも2位ぐらいの観光地である。そこで、いかに歩留まり高く、お金を落としてもらうか、ということが課題となるが高山市の観光地としての課題は「買い物しづらい」こと。これは、多くの店舗でクレジットマネーも電子マネーも使えないからだ。「さるぼぼ」コインは、そのような問題の解決策の一つとしても位置づけられた。これは決済のインフラをつくるということで、地域通貨というよりかは電子マネーという取り組みになるが、そのようなインフラをつくるミッションが地方信用組合にはあると考えたそうだ。
「さるぼぼ」をつくるうえでの背景として、組合をちょっと改革しようという流れがあった。そこで2012年の9月に「さるぼぼ倶楽部」というものをつくった。これは、組合の事業所で構成される会員組織であり、組合員の中でお金をやりとりしましょうというのが趣旨であった。例えば、飲食店だと倶楽部のメンバー内ではビール一杯が無料になるなど、販売促進の特典付けをしたのだ。
 そして、しばらくして、加盟店で使える割引券を配ろう、という話になる。これもよく回り、お客さんにも喜ばれるようにした。決算賞与も現金だけでなく、さるぼぼ割引券を配るようにした。組合の中での経済循環ができるようになった。そのような素地があったので、CSV(Creating Shared Value)の考え方も加わって、組合員に閉じていたものをさらに地域にまで広げていこうという、そういう素案ができたのである。
一方で電子通貨を発行するためのコストが低くなっていき、QRコードの決済ができるようにする。QRコードのアイデアは、なぜ、これだけの観光客が来るのにクレジットカードで決済ができないのか、というプレッシャーから必要に迫られて出てきた。加盟店にコストをかけないようにするにはQRコードしかない。信用組合はユーザーからの発想ではなくて、加盟店からの発想でシステム構築などを考えるのだ。
この導入に関しては自治体や他の企業関係者さんも、うまくいかないと指摘した。ただ、実際やってみたらそれほど問題もなかった。
地域通貨の仕組み自体は加盟店には理解しやすい。域外資本で買い物をするより、自分のところで使ってくる。加盟店は右肩上がりで伸びている。ただし、かなり高齢の事業所さんがやられているところはアレルギー反応がある。電子マネーとかは本当に辞めてくれ、と言ってくるそうだ。
一方で苦労しているのはユーザーの方。加盟店の実利とは違う世界。よさが分かってもらえない。加盟店で「さるぼぼコイン」をいい仕組みだと応援している方も、自分が決済する時には「さるぼぼコイン」ではなく、ペイペイを使う。これは還元率がペイペイの方がいいため。
 また、「さるぼぼコイン」が使えない域外と指定されたお店との対応も課題の一つであるそうだ。そのようなお店は地元の商工会議所に入っていたりする場合もあり、組合としては入ってもらいたいところがあるが、そうすると域内の競合する加盟店からの反発が大きい。
 あとユーザーサイドにいかにチャージをしてもらうかも大きな課題であるのだが、2020年4月からセブンイレブンでチャージができるようになり、またチャージ機も設置される計画である。ここらへんが利用の促進に繋がるのではないかと期待されている。
 「さるぼぼ」を導入することのメリットは幾つかあるが、そのうちの一つとして一物二価が挙げられる。「さるぼぼ」で購入した場合は割引価格で購入できるというものだ。キューバなどでは行われているが、観光地であればこそ、その導入は有効であろう。一物二価というと、そんな公平性に欠けることをしていいのか、と思われるかもしれないが、この出張で宿泊したホテル。同僚の先生が海外のウェブサイトであるBooking.comで予約をしてくれたのだが、この価格は国内のウェブサイトであるじゃらん・ネットより随分と割高であった。もう既に一物二価の制度は実質的には一般化しているのだ。
 地域通貨「さるぼぼコイン」がこれからどのように展開していくのか。それには人々のこの地域通貨への信頼が極めて重要な役割を担うことになるであろう。加盟店の立場だと応援しても、利用者の立場だと使わない。また、我々も駅前の酒屋さんで「さるぼぼコイン、使えます」と質問したら、加盟していないとのこと。加盟するメリットが分からない、と言い放ったお店の人は、でも我々に対して「さるぼぼコインって便利なの?」と尋ねたりもしてきた。加盟しないお店も、それほど確信をもって駄目だと思っているわけではない状況が透けて見えたような印象も受ける。
 よく考えれば、我々だって日々、日本銀行が発行する紙っぺらに1万円という価値を見いだしているのだが、それは信頼だけをベースにした極めて不安定なものである。地域通貨はコミュニティ力を強化する力を持っているが、逆にコミュニティ力が地域通貨を機能させる極めて重要な条件であるともいえる。飛騨高山にそのコミュニティ力があるのか。非常に興味深い、地域通貨の最新事例である。

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トランプ大統領の弾劾裁判に無関心なアメリカ在住の台湾人 [トランプのアメリカ]

大学院の後輩である台湾人の友人と食事を一緒にする。もう25年以上の付き合いだ。彼女はアメリカのランドスケープ事務所で働いていて、アメリカの国籍も取得している。その彼女にトランプ大統領のことを尋ねると、共和党もひどいが民主党も酷いという。いや、悪いけど民主党の酷さと共和党の酷さは比較にならないから。事実を無視して、大統領はやりたいことは何でもできる(「五番街で人を殺しても、一票も失わない」と公の前で言い放つのがトランプ大統領だ)といい、そのデタラメを支持しているのが共和党である。もはや、民主主義ではなく、北朝鮮なみの酷さである。
「何でそれが平気なの?」と尋ねるとニュースをフォローしていないそうだ。え!こんな大変な事態なのに!とはいえ、実際、日々、仕事に追われていたらそうそうニュースをフォローしないというのも分からない訳ではない。私も研究職であるし、研究に関しては自分が管理者であるので、思わず、そちらに気が向いてしまってトランプ・ウォッチしているが、普通の仕事だとそうそう追いかけられないだろう。
 それでも、トランプ大統領が再選したら、彼女のような人こそ差別の対象になる。サンフランシスコとかに住んでいると、まさか人種差別をあからさまに受けるとは思っていないのかもしれないが、あのデタラメなトランプ大統領が支持されている二大要因は、有色人種排斥と堕胎禁止である。いや、高収入者の税金軽減というのもあったが、これは既に達成している。私の友人などは、トランプが再選したら、恐ろしい逆風が吹くと思うし、とんだもないことが起きるのかもしれないのに、そういうのの問題意識が薄いのにはちょっと驚いた。
 その前日に日系二世の女性とこのことについて話をしていたのだが、この人はトランプの再選が彼女にとっては相当、生きにくくなるだろうということを推測していた。日系二世というアメリカ人はこのような危機を分かるが、アメリカに25年住んでいて国籍を取っていても、一世はそこらへんの危機意識が薄いというのは興味深い。もちろん、日系人はアメリカの移民の中でも唯一、人種差別政策で隔離されたことがあるから、この点での問題意識が違うのかもしれないが。そうそう、台湾人の友人はメキシコとの国境で親から隔離された子供が既に数人、死んだというニュースも知らなかった。まあ、これが彼女の性格なのかもしれないが、牧歌的な人々こそが、まさにトランプイズムを増長させてしまう。安倍政権にも似たところがあるが、アメリカも日本もいろいろと心配だ。

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トランプ大統領が再選したら内戦が起きるかもしれない [トランプのアメリカ]

大学院時代の友人と久しぶりに会って話す。いや、大学の新しいプログラムをつくるうえでの協力を仰ぐためだったのだが、どうしても話題はトランプ政権に及ぶ。この彼は、デービス大学で教員をしているのだが、トランプ大統領が再選したら内戦(Civil War)が起きるかもしれないと言っていた。確かに、トランプ大統領だけでなく、それを支持する共和党連中のデタラメさ加減もとんでもないレベルで、北朝鮮なみだ。いや、北朝鮮というのは大げさかもしれないが、中国より下手したら不味いんじゃないだろうか。というのは国内での対立構図が極めて先鋭化しているからだ。というか内戦しなくて、どうやってアンチ・トランプの人々の不満を収めることができるのだろうか。
 そもそもトランプ大統領の支持基盤がなぜ、トランプを支持しているのか。それは、もうこれまでの調査でほぼ明らかになったが、移民排斥、有色人種の差別という白人高齢者層の醜悪なる願望と、福音派の堕胎禁止である。堕胎禁止などは、個人の権利への極めてお節介な干渉であり、こういうことを主張し始めると宗教もおしまいだなと思う。キリスト教は仏教と違って、これまで多くの戦争の原因となってきたが、それは他人への本当に迷惑な干渉に基づいている。「人々の魂を救わなくては」とポア(殺人)をしようとするオウム真理教とあまり変わらない気さえする。
 自分の身体のことぐらい、自分で管理させろ!って私は女性ではないが、そう思う女性を支持したい。
 つまり、そもそもトランプ政権と、それを支持する人達のデタラメにあと4年間、付き合わされるのはたまらないだけでなく、そのデタラメの延長は真剣に民主主義の崩壊をみることになるのではないだろうか。下手したら第三次世界大戦に突入することになる危険性もトランプの再選は孕んでいる。そして恐ろしいことに第三次世界大戦では、当然、ロシアはアメリカとは対立しないのだ。というか、ロシアは戦争をせずにして、見事にアメリカを内部から崩壊させることに成功した。恐ろしい国である。こんな国がまともに北方四島を返却してくれる訳がない。
どうやって、このような難しい状況を、これから生きていけばいいのか。日本人にとっては大変むずかしい課題が眼前にある。「働き方改革」とか言っている暇があるのか。って、もしかしたら「働き方改革」もロシアの差し金か?まさか、それはないだろうけど。とにかく、トランプの再選がないことを今は一日本人として願っている。トランプの選挙スローガンである「Make America Great Again」の待遇は「Make Other Countries Not Great」であることを日本人は強く自覚した方がいい。某大臣が得意気に「Make America Great Again」の帽子をかぶっていたが、日本の大臣であることを強く意識しないと、とんでもないことが起きる気がする。

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ヴィレッジ・ホームスの管理について [都市デザイン]

ヴィレッジ・ホームスの設計者の一人であり、開発当初からの住民にお話をする機会があった。彼女は、ビレッジ・ホームスの考案者であるマイケル・コーベット氏の事務所で、まさにヴィレッジ・ホームスをつくる時に働いていたので、気になる話を聞かせてもらった。まず、コーベット氏は「NOを受け付けない人」だと表現していた。ヴィレッジ・ホームスという極めて斬新でユニークな開発をするうえでは、役所はもちろんだが、金融機関はほとんど駄目出しをする。しかし、その駄目出しを全然、真に受けなかったそうである。こういう新しい事業を具体化するうえでは必要なメンタリティなのかもしれない。信念の人だったのだな、ということを改めて知る。
 また、やはりポイントは維持管理ということだ。道路自体は市役所が管理したりしてくれるが、公共的な空間(芝生)などは三名から四名ぐらいの人を雇って管理しているそうだ。これらはホームオーナーズ・アソシエーションが雇用をしているそうである。このアソシエーションは他にもコミュニティ・センターなどを管理している。一方で、プラムシア(Plumshire)という不動産管理会社もあって、ここはヴィレッジ・ホームス内にあるオフィス、レストランなどの不動産を管理しているそうだ。このプラムシアはヴィレッジ・ホームス以外には物件を持っていないそうである。
 あと、この方は45年もここに住んでいるが、最近では、このヴィレッジ・ホームスで育った子供達が一度はここを出るが再び、戻ってくるという傾向がみられるそうだ。確かに、ここは子供を育てるには相当、いい環境ではないかと思われる。自動車の通過交通はないし、自転車で移動しやすいし、果実はそこらへんに育っているし、自家菜園での健康的な野菜を食べることができる。ある意味で、アメリカの理想的な郊外像を提示しているのではないか、と思ったりする。公共交通の問題などはあるが、自転車で市内であればほぼどこでも快適に移動できるし、ある意味、レッチワースより田園都市的かなという印象も覚える。

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ヴィレッジ・ホームスのコミュニティ・パーティに参加する [都市デザイン]

サステイナブル・コミュニティの代表的事例であるヴィレッジ・ホームスに滞在しているのだが、ちょうど日曜日にコミュニティのポットラック・パーティが開催されたので参加させてもらった。ヴィレッジ・ホームスはサステイナブル・コミュニティを具体化させることを意図したのだが、そこで何しろ重視したのは、コミュニティという共同体をいかにつくりあげるのか、ということである。これは、ヴィレッジ・ホームスを設計したマイケル・コーベット氏に以前、取材した時に、彼が特に強調していた点でもある。
 さて、しかしヴィレッジ・ホームスがつくられたのは1975年。つくられた当初の高邁な理念は徐々に風化してしまい、共同体意識も薄れていったような印象を覚えたりした。いや、私は1993年に初めて訪れてから、その後、それこそサンフランシスコに住んでいた時はもちろん、帰国後も1997年、2003年、2005年、2008年と訪れていたので、時系列的な変化を観察していたので、そのような変化を感じていたのだ。実際、1975年に30歳ぐらいで移り住んだ住民達も70歳を越え、子供達も大人になってここを出た。住民の高齢化はここでも一つの課題である。
 このようなトレンドの中、ふたたび共同体としてのコミュニティを強化しようといった動きが見られつつある。このポットラック・パーティーはまさにそのような試みの一つで、数年前にここに住むようになったフランス出身の絵描きが提案して一年ぐらい前に始まったイベントのようである。
 ポットラック・パーティーはヴィレッジ・ホームスのコミュニティの象徴でもあるコミュニティ・センターで行われた。このコミュニティ・センターの中に入ったのは初めてだったのでそういう意味でも個人的には興味深かった。
 私はおばさん住民の間に座らさせられ、なんかまったく話題もなく、相当浮いたが、たまたま前に座った人がマイケル・コーベットの事務所で働いていたことがあり、つくられてすぐコーベット氏にヴィレッジ・ホームスの家を買わされてから住んでいるヴァージニアという方だった。そこで、つくった時の苦労話や、コーベット氏の話、ヴィレッジ・ホームスの運営管理の話などを聞かせてもらった。
 郊外住宅はコミュニティをつくることが大きな課題である。コミュニティという共同幻想をどうやって支えるかは住民のコミットメントが必要だが、ほとんどの郊外住宅地ではそれができていない。いや、郊外どころか家族という郊外においては核となるべき幻想でさえ、もはや蜃気楼のような状況になっていて共有できていない。これはアメリカでも似たようなことかと思うのだが、移民国アメリカは、この幻想を強化しなくては、という意識が強いような気がする。というか、強い人がヴィレッジ・ホームスのようなコミュニティに住むのだろうが。どちらにしと、面白い経験をさせてもらった。

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サステイナブル・コミュニティの雄、ヴィレッジ・ホームスに生まれて初めて滞在する [都市デザイン]

アメリカはカリフォルニアのデービスに来ている。デービスでは、サステイナブル・コミュニティの草分けとしてよく知られている。私もシーサイドやケントランド、ラグナ・ウェストといった、いくつかのサステイナブル・コミュニティを訪問したことがあるが、このヴィレッジ・ホームスがもっとも持続可能というコンセプトに忠実であると捉えている。実際、設計者のマイケル・コーベット氏に取材をしたこともあり、その結果は拙著『衰退を克服したアメリカの中小都市のまちづくり』(学芸出版社)にまとめている。ヴィレッジ・ホームスに関してはこの本でまとめているし、三浦展氏が洋泉社から出したムック本でも、詳細な解説を書いたりしたことがある。
 さて、しかし、実際、そこにある家に泊まったことはなく、今回が初めてである。大学院時代の同級生宅なのだが、4泊ほどさせてもらった。マイケル・コーベット氏の話を聞いた時に、印象を受けたのは微気候を意識した省エネ住宅をつくることに随分と神経を使ったということだが、友人は結構、改造していた。この友人宅はコーベット氏本人ではなく、彼のところで働いていた女性建築家が設計したそうだが、実際、生活すると窓が少ないなどの点で住み心地はあまりよくないそうだ。コーベット氏は断熱を考えると窓がない方がいいと言っていたが、住民からすると、やはり明るい方がいいという考えになるようだ。
 とはいえ、建設されたのが1975年ぐらいの筈だから、既に45年経っている筈だが、住宅もなかなか悪くなく快適だ。ただ、やはり住宅より感心したのは周囲の環境である。狭い自動車道路、自動車道路側ではなく、歩道側に玄関を設置した空間構成。塀を設置しないで個人より共同体を優先するというコンセプト。そして、歩道に植えられた街路樹は果樹で食べられる。いわば、エディブル・ランドスケープの嚆矢である。実際、朝食では友人がこれらの街路樹から落ちているグレープフルーツを拾ってきて出してくれたが、なかなか美味であった。また、友人はこれらの果樹(梅やオレンジ)をもとにジャムをつくっているのだが、砂糖を少なめにしているので個人的にはとても美味しい。さらに、杏もシロップ漬けにしていたりしたが、これもなかなか箸が止まらない美味しさであった。このエディブル・ランドスケープだが、基本、その木のある人達が管理しているのだが果実は、木から落ちたものはもらっていい、というのが友人の個人的なルールだそうだ。
 そして、エディブル・ランドスケープより感心したのは共同農園である。ほとんど無料のようなお金で(確か50ドルぐらい年会費で払うことを言っていたが、正確な数字は忘れてしまった)借りることができる。友人はカリフラワー、ブロッコリー、アーティチョーク、サラダ系の野菜、じゃがいも、ニンジンなどを栽培しており、鳥さえ飼えば自給自足できると言っていた。ちなみに、鶏を飼っている家もあった。
 このように食べものに関しては、コーベット氏が以前、私に言っていたように、相当、自給自足でサステイナブルな暮らしが出来ているなと感心したのだが、もう一つのエネルギー。友人はこの家を買った時に、さらに太陽光パネルを増設したので黒字である、すなわちプラス・エネルギー・ハウスになっていると述べていた。デービスはちょっと暑いので、冷房が必要かなと思ったりするが、友人宅は屋根も高く、特にその必要はないようだ。
 そして移動に関してだが、自動車は所有していた。この友人は、大学院時代は車を所有していなく、私が結構、自分の車に乗せて大学院のフィールドワークなどには連れて行ったりしたが、現在はシェブロレの電気自動車に乗っていた。そうそう、電気自動車もこのデービスで生まれて初めて運転したが悪くない。今、私は「自動車を持たない贅沢」などとのたまっていたのに自動車を所有している。おそらく買い換えることはないような気はするが、もし買い換えるのであれば電気自動車にしようかなと思ったりもした。環境にはやはり電気自動車の方がいいし、なんせ動く蓄電器は地震の時などには随分と心強いからである。
 ということで、デービスのヴィレッジ・ホームスの理解が、より進んだという点で非常に有り難い経験をさせてもらった。つくづく、学生時代の友人のネットワークというものは有り難い。

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<ヴィレッジ・ホームスにある友人宅>

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<鶏を飼っている家もある>

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<道ばたに育つグレープフルーツの木から落ちた果実を拾う友人>

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<友人の自家菜園で育つ野菜>

参考までに「ヴィレッジ・ホームス」に関しては、下記のHPでも説明しているので宜しければ参考にしてもらえればと思う。
https://www.hilife.or.jp/cities/?p=1071
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