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コービー・ブライアントの悲報に接して思うこと(3) [教育論]

コービー・ブライアントの突然の訃報から4日ほど経ち、NBAの関係者を始め多くの人がその追悼を述べている。高校生のコービーを発掘して、レイカーズに入れたジェリー・ウエストを始め、マジック・ジョンソン、シャキール・オニール、レブロン・ジェームズといったレイカーズ関係者、ポール・ピアース、ドック・リバース、グレッグ・パパヴィッチといったライバル達、トレイ・ヤング、チャールス・バークレイ等である。
 これらの人達の言葉を聞いて分かったのは、コービー・ブライアントはイチローと非常に共通したところが多いな、ということだ。若い時からプロの世界に入り、周りからは生意気だと思われ、しかし、実際のアウトプットを出し続けることで認められる。練習の鬼で、バスケ中心の生活を送る。そして、引退した後、ブライアントもイチローも子供達のコーチに力を入れる。
 コービー・ブライアントはどうも一日4時間しか睡眠を取らなかったそうである。しかも、2時間睡眠を2セット。目的を設定すると、その達成に向けてがむしゃらに努力する。体質を改善してまでも努力をする。それは、ちょっとクレイジーと傍からは見えるかもしれないが、その姿は眩しい。「働き方改革」という旗印のもと、やりたい仕事の時間を削られるような状況下では、なかなかコービーのような人間は出てきにくいだろう。仕事はパッションであることが望ましい。人はパッションを持ったら、その限られた一生という時間の中で悔いなく、そのパッションのために時間を使いたいと思う筈だ。「働き方改革」ということより、「働く」ことをパッション(情熱)にするような生き方改革をすることが重要であろう、とパッションを持たず、しかし文句を言う若者に日々、接している私は思ったりする。コービー・ブライアントのような生き方をするべきである。それは、後悔しない生き方であるし、失敗しても自己責任として受け入れられる生き方でもある。そして、世の中に必要なことは「働き方改革」ではなく、コービー・ブライアントのような頑張る人の足を引っ張るのではなく、その可能性を切り開けるように支える社会システムであろう。頑張れない人には厳しいかもしれないが、頑張る人をしっかりと支援する。そんな世の中こそが、結局、若者にとっても生きがいを感じられるのではないだろうか。



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コービー・ブライアントの悲報に接して思うこと(2) [教育論]

今、アメリカにいる。そして、アメリカでコービー・ブライアントの訃報に接した。そういうこともあり、アメリカのメディアはブライアントの偉大さをいろいろな側面から報じている。そのような報道の中で、私の心を打ったのは、彼の「目的を実現させるためには、周囲のサポートは必要であるが、何より重要なのは、そのために自分が出来うる限りコミットメントすることだ」という、人生に対する姿勢である。「(自転車の)ペダルを一生懸命踏まなくてはならない」という言葉で彼はその姿勢を表現していた。
 高校卒業をして、すぐNBAの厳しい世界に飛び込んだブライアントは、頂点を目指すために人々の想像を絶するような努力を積み重ねる。ブライアントの知り合いがテレビで彼についてコメントする時、彼が成し遂げた成果というよりかは、彼の努力する姿勢を賞賛していた。そして、ブライアントはなぜ、そのように若い時代に自分の才能を信じて努力できるのかと聞かれた時、「自分は若いとき、多くの同世代の人間が理解していなかったことを自覚していた。それは、ある目的を達成しようとする時、周りからいろいろなプレッシャーを受け、自分が信用できなくなり、ポテンシャルを持っているにも関わらず、自ら潰してしまうことを回避しなくてはいけないということだ。ただ、努力をせずに成功できると思ってはならない。死に物狂いで頑張らなくては目的を達成することはできない」と回答する(https://www.youtube.com/watch?v=nbvmTyxpFSA)。そして、それを若者にしっかりと伝えなくてはいけない、とも言う。
 私は仕事柄、多くの若者と接する。驚くのは、多くの若者が本当に努力を嫌うというか、回避しようとすることだ。いや、全員ではないが、そういう若者が多い。勉強とかも頑張れない。要領よく単位を稼ぎ、とりあえず卒業しようと考える若者のなんと多いことか。名古屋の大学では、期末テストのレポートの〆切りが間に合わなかったので「単位を上げない」と言った教員が学生に刺される事件もあった。単位は自分が努力をして取得するものであろう。
 そこで甘やかしても学生のためには全然ならない。もちろん、才能を活かすような環境をつくってあげることは必要であろう。しかし、その才能を高みに上げるのは本人以外の何者でもない。
 受験の時期である。私も受験には失敗しているので、偉そうなことは言えないが、この受験の壁を前にして、是非とも怯むのではなく、自分の力を伸ばしてくれるチャンスぐらいに捉えてもらえればと思う。そのようなチャンスを指定校推薦とか、エスカレーター式の学校に行くことで回避するのは、得をしているようで実は損をしているのではないか。
 私の次女も高三で大学受験である。国立大学一校に絞って受験をする。それは、その大学が唯一無二であるからだが、例え失敗しても、その努力は後の人生において活きると思うのである。コービー・ブライアントは、娘の才能を活かすために第二の人生を賭けていた。実際、ジニの才能が特別なものであることはYouTubeの動画を観ると分かる。親によって子供の育ち方も異なる。私はブライアントの足下にも及ばないが、ブライアントの人生への姿勢を参考にして、次女の才能が開花できるようにサポートしたいと思っている。
 私と私の娘の最も大きな違いは親であると私は思っている。


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コービー・ブライアントの悲報に接して思うこと(1) [都市デザイン]

アメリカのプロ・バスケットボールのスーパースターであったコービー・ブライアントがヘリコプター事故で亡くなった。享年41歳。同乗していた13歳の次女のジジも一緒に亡くなり、今、アメリカでこの訃報を聞いたのだが、アメリカ中が喪に服しているような状況にある。さて、コービー・ブライアントのこの悲報に接して深く考えさせられたことが二つある。
 一つは、コービー・ブライアントを殺したのはロスアンジェルスの悲惨な道路渋滞、そしてその原因であるお粗末な交通システムであるということだ。コービー・ブライアントは、この道路渋滞を回避するために日常的に、移動にヘリコプターを使っていた。どのように、ヘリコプターを日常的に使っているのかという質問に対して、ブライアントはウェブ記事の取材に次のように回答している(https://toofab.com/2020/01/27/heartbreaking-reason-kobe-bryant-insisted-on-flying-in-helicopters-in-his-own-words/)。
「朝早く、筋トレ。子供を学校に(車で)送る。ヘリコプターに乗る。きちがいのように練習する。メディア関係や、その他のしなくてはいけない仕事をこなす。ヘリコプターで帰宅する。車で子供を迎えに行く」。
 そして、ヘリコプターを使うのは、家族と過ごす時間を1分も無駄にしたくないからだとも回答している。
 コービー・ブライアントが亡くなった事故は、ロスアンジェルスの南に位置する自宅があるニューポート・ビーチから、彼のスポーツ学校であるマンバ・スポーツ・アカデミーのあるロスアンジェルスの北西のサウザンド・オークスまでヘリコプターで移動している時に起きた。確かに、ニューポート・ビーチからサウザンド・オークスに自動車で運転していくのはちょっと考えたくない。ヘリコプターで行きたい気持ちも分からなくもない。
 ただ、ロスアンジェルスは自動車を前提に都市づくりをしたので、低密度で広大な面積にいろいろな都市機能を分散させ過ぎた。人口が少ない時はそれでも、ある程度機能していたのかもしれないが、これだけ大きくなり、しかも公共交通の使い勝手が極めて悪いような状況下では、ブライアントのように時間価値が高い人が金に糸目をつけずにヘリコプターで移動したくなる気持ちはよく分かる。
 しかしなあ、もっと都市をコンパクトにして、また東京のように公共交通での移動がしっかりとできる都市であれば、このような事故も起きなかったのかもしれない、と思ったりもする。ヘリコプターで移動しなくてはならない、というかそういう選択肢を日常的に採る人が出た時点で、もう都市が機能していないということを理解すべきであろう。
 逆にいえば、ヘリコプターで移動できるから、ブライアントもマンバ・スポーツ・アカデミーを自宅から遠く離れたサウザンド・オークスに立地させたのかもしれない。どちらにしても、NBAのスーパースターと才能溢れる次女の命を奪ったのは、ロスアンジェルスという都市の構造であることは間違いない。ブライアントはロスアンジェルス・レーカーズ一筋のスーパースターであり、その都市のアイコンである。恩を仇で返すとはこのことだ、と思わずにはいられない。
 二つ目の点は、また後日、書かせてもらう。

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『柳川堀割物語』 [映画批評]

スタジオジブリの作品。3時間に及ぶ大作である。福岡県柳川市に張り巡らされる水路。これが近代化と土木国家によって汚され、その結果、蓋をされ消滅させられそうになったのだが、一人の柳川市職員の問題提起によって、水路の下水道工事計画が白紙に戻り、それを役所と住民の共同で再び清い水が流れる水路を復活させた経緯、そして、その流れの中で伝統的なコミュニティの紐帯が再び強化されていったというノン・フィクションの物語である。美しい映像、アニメを交えた水路の仕組みを分かりやすく説明する工夫、キーパーソンである広松伝氏や古賀元市長への取材、丁寧な構成と柳川市の堀割を再生した過程、背景がよく理解できる内容となっている。ある意味で、スタジオジブリ作品の中でもノン・フィクションのしっかりとした記録といった側面から大変、重要な価値を有するものかもしれない。
 広松氏はこの映画の中で「成功できたのは過去を共有できるだけの「思い出」の資源があったからだ」という。人々が蘇らせたい過去を共有できたことが、成功の原因であるというのは示唆的である。組織がまとまってある方向に行くには、共有する価値が必要だと考えるが、その共有する価値をこの柳川市は幸い、有していた。
そして、下水道工事を中止した後、役所と住民は協同してヘドロに覆われた水路の浚渫を進めていく。この住民の愛、コミットメント、そして住民達と役所の連帯があって初めて柳川の堀割は再生できたのである。貴重な記録である。
貴重な記録という点では、「川や堀は私たち市民すべての共有財産」ですと柳川の市報に書かれたのをみて、県や国は目くじらを立てて怒ったことが映画では示された。彼らからすると、川は国や県のものだそうだ。こういう馬鹿な人達がいるから、日本の美しい風土は壊されてきたことがこの映画からも分かる。そのようなトレンドに見事に抗い、柳川はその環境、風土、そしてコミュニティの連帯を維持することに成功したのである。柳川市の人々の「煩わしい水」との共存する姿勢にも頭が下がるが、これを見事、映像として記録に残したスタジオジブリ、そして高畑氏にも頭が下がる。素晴らしい作品で、多くの人に見てもらえるといいかと思う。


柳川堀割物語 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2003/12/05
  • メディア: DVD



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宮台慎治の『まぼろしの郊外』 [書評]

今更ながらだが、宮台慎治の『まぼろしの郊外』を読む。郊外論の研究をしようと誘われたのだが、今更、郊外ってどうよ、と思ったりしたので、積ん読状態であったこの本を読んだのである。さて、この文庫本は『まろしの郊外』というタイトルであるが、大きく二つの内容に分類でき、前半は「テレクラ少女論」がほとんどで、あまり郊外論的ではない。いや、この「テレクラ少女」の背景に郊外的な課題があるのはもちろんなのだが、どちらかというと郊外というよりかは、東京vs.地方都市(青森)といった構図で語られていた。そして、彼の論では地方都市は東京に比べて、売春女子高生という点では「郊外化」していない。ふうむ、都心と郊外を対比するというのは定義からして当然だが、彼の論的には東京がすでに郊外なのかもしれない。というか、全体的に郊外化しているということか。
 後半は「現代の諸像」ということでインターネットのマイナスの側面、恋文の意味の喪失、差別論、オウム信者の「良心」などが語られる。これらも郊外的な現象ではあるかもしれないが、必ずしも郊外という概念に収まらないし、郊外を形作る要素でもなく、現代社会を分析する一つの視座を提供する現像である。そして、最後に「酒鬼薔薇聖斗のニュータウン」というエッセイがあり、これは相当、読み応えのある密度の高い郊外論である。
 などと書いたら、私のこの浅薄さを予め察したかのように「あとがき」には次のように書いてあった。
「(前略)したがって『まぼろしの郊外』と題される理由は自明であろう。成熟した近代において、(1)幻想の共有度合いが低下するとともに(2)社会の不透明さが増大し(3)実存を脅かされた人々が非自明的な幻想に固執する、という動きを代表する空間こそが「郊外」であるからだ」。
 ううむ、つまり「郊外」を論じる本ではなく、社会の「郊外化」を論じる本であったということですか。すなわち「郊外」を何かが分かっていないと、よく見えてこない本でもある。とはいえ、流石、そのフィールドワーク、透徹な論理力はすさまじく、その思考には引き込まれる。
 

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『死刑台のエレベーター』 [映画批評]

1958年に公開されたフランス映画。ジャンヌ・モローが主演で、マイルス・デービスのトランペットが映画に哀愁を漂わせることに成功しているが、ストーリーは完全犯罪が、ちょっとしたミスと不運で雪だるま式に悲惨な方向へと転がっていくドタバタ悲劇である。ジャンヌ・モロー演じる大会社の社長夫人が、旦那の会社で働く不倫相手の若いハンサム男に、年老いた旦那を殺させる。そこまではよかったが、ちょっとした隙に、この男の車はチンピラに盗まれ、このチンピラが衝動的に観光客を殺してしまったことで濡れ衣を着させられる。この男は男で、犯行に使ったロープを取り忘れたのでそれを回収しようとして乗ったエレベーターが止まってしまったので、その濡れ衣を晴らすことができない。という、もう見ててイライラするような不合理の連続で、本当、人間アホだよな、と思わずにはいられない。しかし、まあ、こういうアホが多い世の中で、どのように生き延びるのか、ということを考えるきっかけは提供してくれる。まあ、この社長夫人の愛人の男性の場合は、社長夫人とそのような関係にならなければいいのだが、ううむ、これはちょっと拒むことは難しいかもしれない。あとは、社長夫人の旦那殺しの依頼をしっかりと断れることかな。どちらにしろ、人はアホばかりだということをしっかりと映画で表現できる国で、原発をあれだけ稼働させているのは驚くべきことだ。この映画を観たら、原発で何か小さい問題が起きても、それが大爆発にまで至るように悪いことが重なりそうだ、ということには気づきそうなものだが。


死刑台のエレベーター HDリマスター版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 株式会社アネック
  • 発売日: 2017/06/21
  • メディア: DVD



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京阪電車という公共空間でのマナーが分からないアメリカ人 [グローバルな問題]

京阪電車に乗っていた時のことである。京阪電車は出町柳や河原町、伏見稲荷などが沿線にあるので海外の観光客が多く乗る。今日も対面にどうも取材スタッフらしきアメリカ人のトリオが座っていた。アジア系男性、白人系女性、アフリカ系男性の3人だ。話している英語の発音からほぼアメリカ人である。この人たちが、ロングシートの車内で食事をしている。サンドイッチやポテトチップスだが、我が物顔で食べており、においもこちらに漂ってきて不愉快だ。とはいえ、こういうことは女子高生とかもするからな、と我慢していたら、食後、iPhoneを取り出して、音を出して動画を見始めた。これは、ちょっとひどい。注意をしようかとちょっと考えたが、最近のアメリカのトランピズムのような人だと関わらない方がいいかなと思い直して、車両を移った。
 アメリカは公共空間が貧しいから、また、大都市とかに限定されてあるので、日本のような狭い国土で協働して生活するマナーとかエチケットを知らない人が多い。ヨーロッパでも本当、それは感じるが、日本だとさらに、土足で家に上がられたような不愉快な気分になる。

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明けましておめでとうございます [その他]

明けましておめでとうございます。最近、ブログの更新をしていなくて申し訳ございません。コンピューターを新しくしたことで、ネットの設定に手間取ってしまっていました。正月休みでようやく、ここらへんを整理できた次第です。

さて、2020年は東京オリンピック、そしてアメリカの大統領選があります。東京オリンピックは、これからの日本の衰退の契機となる可能性が大ですし、アメリカの大統領選は、その結果によっては大きく民主主義が瓦解していく可能性を秘めています。どちらにしろ、大変な時代を迎えるような気配が空気を覆っているように感じるのは私だけでしょうか。などと思ったら、年が明けたら、いきなりトランプはイランの司令官を殺害するし、北朝鮮はICBM実験を示唆しています。

このような状況下、国は頼りになりません。個人で生き延びる術を考えないとならない時代に突入したと考えた方がいいでしょう。日本は移民に対して、いろいろと制約を課していますが、実態としては、日本から他国に移民をしなくてはいけないような状況になりつつあることを自覚しないといけないかと思います。しかし、他国に移民をするには何しろ教育レベルを高めることが必要です。そうでないと、日本を出ることもできませんから。

なぜ、そこまで悲観的になるのか。それは、日本という国が抱えている借金の大きさからです。消費税を8%から10%に上げるのもその借金の大きさからすれば仕方ないと言えるかもしれませんが、安倍政権は増えた税収入をまたもやばらまきに使っています。福祉に使うのではなかったのか。ほとんど詐欺的なことを行っているのに、それでも安倍政権を選んだのは国民ですからね。そういう国民の国は滅びることになるかもしれない。それはとても個人的には辛いことですが、私の寿命が尽きる前に、日本は悲惨な状況、第二次世界大戦の敗戦と同じようなひどい事態になり得るかなと思ったりもしています。

新年の挨拶で、まったくおめでたくないことを書いてしまい恐縮ですが、大学教員、そして研究者のはしくれとしては、せめて迫り来る危機に対して、いたずらに危機感を煽るのではなく、冷静に客観的な情報を発信する責任があるかなと思ったりします。私の二人の子供は、日本を出ることになると思いますが、私は日本という国を愛しているので心中する覚悟ではおります。引き続き、よろしくお願いします。
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