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パリは本当に美食の都なのか? [B級グルメ雑感]

パリは「美食の都」というイメージがある。しかし、私はこの説に30代中頃から疑いを持っていて、それはパリを訪れるたびに確信に近くなっている。ただ、私がそう主張すると、ほとんどの人が「それはお前の舌の方が間違っている」と批判するので、もしかしたら私の方が間違っているのかもしれないな、と謙虚な気持ちになり、パリに来るとたまに美食体験を試みたりする。
パリは最近では一昨年の夏、先月(2月)と来ているが、パリ市内はバリアフリーではないし、宿も異様に高いので、前回の二回はシャルル・ド・ゴール空港のそばにて泊まった。したがって、パリ市内で食事をするのは昼だけにしていた。しかし、今回は他の大学の先生と一緒なので、久しぶりにパリ市内に滞在することにして、この先生がグルメということもあり、結構、美味しいものを二人で探索することにしたのである。一応、仕事もあったりしたので、仕事先のカフェテリアで昼ご飯を食べたりもしたが、それ以外は比較的有名店を訪れた。ちょっと、その外食体験を通じた感想のようなものをここに記したいと思う。
宿はパッシー地区で取った。パッシー地区はオスマンがパリの都市大改造をした時に、開発されたブローニュの森そばの住宅地である。最初の晩は、ホテルそばのオイスター・バーで牡蠣と白ワインを注文した。店名はLe Lallye Passyで、カウンターにはオヤジしかいない店であった。オヤジしかいない店は、大抵、美味いと相場が決まっているが、ここは牡蠣は悪くはないが、とりたてて美味しいというものでは決してなかった。日本で食べる方がずっと美味しいし、先月訪れたバーリの生ムール貝の方が遙かに美味しい。その後、ちょっとオイスターだけではお腹が空いたままなので、またホテルそばにあるAero Restaurantに行った。ここでは、チキンを焼いたものを注文したのだが、日本の気の利いた定食屋の方が美味しいような代物であった。添えられたサラダもフライドポテトも今一つだったが、ワインはそんなに悪くはなかった。
二日目は、朝食は近くのカフェでクロワッサンとタルト、そしてカフェオレを注文する。カフェオレは機械でつくるので評する必要性もないが、クロワッサンは流石、パリと言わさせるだけの美味しさであった。バターがちょっと日本とは違うのかもしれない。というか、バターが相当ふんだんに入っている?洋なしのタルトも梨とバターがふんだんに使われていて、これは美味しかった。というか、パリ4日間でもっとも美味しかった可能性もある。
昼食は、旧証券取引所のそばにあるレストラン、Vaudervilleに行った。これは特に行こうと思っていた訳ではないのだが、たまたまお昼時にこのお店の前を通ったら、えらい繁盛していたので、これは外さないだろうと判断して入ったのである。注文したのはクロック・ムッシュ。これは、本場のクロックムッシュが食べたかったからである。これは、トーストが3枚のものにハムが挟んであり、上にチーズがどかんと乗っているもので、なかなかの食べ応えがあった。最初は美味しいと思ったのだが、だんだん飽きてきた。まあ、とても洗練されているとは言い難いが、チーズはなかなか美味しいと思った。
さて、その日の夜は、パリ在住10年という人に夕食に連れて行ったもらった。これは、絶対期待できると胸を躍らせたのだが、連れて行ってもらったのは、なんとビストロ・ヴィヴィアンヌであった。ビストロ・ヴィヴィアンヌは個人的にパリで最も好きな空間であるヴィヴィアンヌ・ギャラリアの入り口に位置するビストロでとてもお洒落である。前から気になっていたのだが、夏にパリに来ると凄い長蛇の列でほとんど入る気をなくす。しかし、先月(2月)に来た時は全然、空いていたので念願叶って初めて昼に入ることができた。白ワインとエスカルゴ、そしてシーザーサラダを注文した。流石、エスカルゴは美味しかったし、シーザーサラダも悪くはないが、パリは美味い料理があるなあ、と感心するほどではなかった。この程度であったら、日本のフランス料理屋の方が美味しい。とはいえ、白ワインのコスパは悪くはなかった。とはいえ、パリ滞在10年の方が満を持して?一緒に夕食に連れて行ってもらった店がここであるのはちょっとショックであった。というのは、ここはパリ在住10年でも美味い店として認識されていることに落胆したからである。というのも、パリ在住10年であれば、私のような輩が見つけられないようなお店を教えてくれるのではと期待したからである。ここで注文したのは、エッグ・ベネディクトとフォアグラがラーメンのつけ麺のスープのようなものに入った料理であった。つけ麺のスープと同様に葱がなかなかいい味を出していた。悪くはないけど、ちょっと肩透かしであった。とはいえ、パリの美味しいお店を未だに発見できていない私としては、ここは他のお店よりはずっと親しみが持てる。加えて、ワインのコスパはよかった。ただ、このお店がリモージュとかリールであったら納得だが「美食の都」とその名を知られるパリの名店かというと、やはりがっかりしてしまう。日本のフランス料理の方が美味しいとずばり、思う。
 その次の晩は池波正太郎がパリ滞在時によく行く店としてエッセイに書いていたりして知られるAu Pied de Cochonを訪れる。これは、新しく整備中のネルソン・マンデラ公園の前にある。パリジャンヌにも人気であるという解説であったが、土地柄か観光客が多い気がする。フランス語よりも英語の方が聞こえる。そして、サービスがまあ感動的に悪い。というか、パリのレストランは決してサービスがよくないがそれらに比べても驚くほど悪い。これは日本人だからなめられているのかもしれない。注文したワインはクレームをするまで来なかったし、また周りのテーブルには来ていた付け足しのオリーブも督促するまで来なかった。赤ワインと豚肉のコンフィを注文する。赤ワインは流石にそれほど値段の割には悪くない。豚肉のコンフィもまあ悪くはないが、有り難がるほど美味しくはない。ドイツのハクセンシュヴァインや日本の豚の角煮の方が美味しいくらいだ。庶民的な定食屋という雰囲気は悪くはないかもしれないが、インテリアの趣味はどちらかというと無粋で洗練されていない。池波正太郎の味覚も店の意匠センスをも個人的には疑う。
ということで、今回のパリ滞在も食事に関しては悲惨であった。というか、本当、パリには10回は来ていると思うが、唸るように美味しいものに出会ってない。納得するものはワインとチーズだけだ。しかも、チーズはどちらかというとフランスの田舎の方がパリのものよりも美味しい。そうそう、今回は日本人にも大人気のチョコレート屋、ジャック・ジュナンにも訪れ、お土産用に1万円ほど買ったのだが、買った直後に「生チョコなので2週間以内に食べて下さい」と言われて、しょうがなく家族以外のお土産で買ったものは自分で食べたのだが、これはなかなか美味しくて流石と思ったが、この値段であったら日本でもほぼ同じものは入手できる。自由が丘のパティスリー・パリセヴァイユも負けていない。とはいえ、ここのチェコレートは不味いとは決して言えない。そういう意味では、ワイン、チーズ、チョコはパリの美味いものであるとは言えるかもしれない。あと、クロワッサンかな。今回、滞在したパッシー地区の総菜屋デパートに入っているパン屋のクロワッサンはバターがたっぷり使われていて美味しかった。とはいえ、これだけで「美食の都」というのは看板に偽りありだと思う。

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<オイスターバーの生牡蠣>

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<Aero Restaurantのチキン>

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<ビストロ・ヴィヴィアンヌのエッグ・ベネディクト料理> IMG_0073.jpg <Au Pied de Cochonの豚のコンフィ> IMG_0074.jpg <唯一、サービスがよかったシャルル・ド・ゴール空港内のレストランでのサラダ料理>
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