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デーリッチュ(Delitzsch)という旧東ドイツの中小都市を訪れる [都市デザイン]

デーリッチュ(Delitzsch)というライプツィヒとハレとの中間にある旧東ドイツの都市を訪れる。なぜなら、ここは1990年の東西ドイツが統合されてから、人口が減少しては急増し、減少しては急増するという不思議な動きをしているからだ。どんな都市だろうと、この人口増減から興味を持ったのが行くことになった理由である。
さて、デーリッチュには駅が二つある。ObとUnterである。日本語でいえば、上デーリッチュ、下デーリッチュという感じであろうか。ライプツィヒから来るとUnterの駅につき、ハレから来るとObの駅に着く。両駅は400メートルぐらいは離れている。Unter駅の方がバスターミナルもあって、駅舎もあって、ちゃんとしている感じである。この駅からは商店街のようなハイ・ストリート的な道も延びている。
 デーリッチュの人口は2万5000人。東西ドイツ統一後の人口推移では、徐々に人口が減少しているが1996年と2004年に急激に増加し、そして2011年に急激に減少している。最近は安定から徐々に増加するような推移をしている。さて、1996年と2004年の急激な増加は周辺の集落を合併したためという人工的要因であることが判明した。そして、2011年であるが、これはそれまでの人口調査があまり精度が高くなく、実際、住んでいない人までもカウントしていたためそれを是正したことで大幅に減ったということが分かった。この2011年はドイツ全体の統計でもみられることのようで、なんか日本の統計調査と同じような事態だ。そういうことで、実際は、数字ほどには極端な自治体ではないことが分かったのだが、視察をしていていろいろと興味深いことを発見した。
 まず、駅からのハイ・ストリートであるが、現在、車道を狭めて歩道を拡幅する工事をしている最中であった。日本だと京都の四条がやっているようなことを、人口25000人で観光客などほとんどいない小都市でやれていることに驚く。四条だって、未だに多くの反対意見が出ているのだ。都市に賑わいをもたらすための方策はドイツ人はよく分かっている。
火曜日の昼前であるが結構、人が多く出歩いている。いや、それどころか広場前では30歳ぐらいの男性がピアノの演奏を大道芸人のようにしている。知り合いのドイツの先生によれば、ほとんど中心市街地の店舗は空き家だと言っていたのだが、実際はほとんど空き家がないような状況であった。ただ、このハイ・ストリートに賑わいをもたらしている個店、特に食堂はトルコ系やベトナム系などの移民によって営まれている。ドイツの人口縮小都市は移民によって活力をもらっている。これは、貧血で倒れそうな病人が「移民」という輸血をしてもらっているようなものではないだろうか。
 今回のドイツではコットブス市役所などでも取材をしたが、縮小都市において移民は天からの贈り物というような表現を聞いたが、確かに縮小都市においては移民がほとんど唯一の特効薬である。そういうことを、このデーリッチュのハイ・ストリートでは理解できる。
 また、郊外というか旧市街地周縁部には結構、広大なプラッテンバウ団地が存在した。前述したドイツの先生によれば、これらの多くは倒壊されたとの話であったが、倒壊された跡は多少、見つかったが倒壊率は決して高くない。私は旧東ドイツの様々なプラッテンバウ団地を見ているし、その倒壊を都市計画的にどう位置づけてきたのかに関する論文で博士号を取得しているぐらいなので、倒壊した跡かどうかはほぼ分かるのだ。
 ふうむ、事前に聞いていた話とは結構、違う印象を受けた。あと、新たに投資をして改修された戸建て住宅なども散見され、これはおそらく、このデーリッチュがハレとライプツィヒから鉄道で30分弱というベッドタウンとしては極めていい立地にあることと無縁ではないだろう。ハレもライプツィヒも人口減少が著しかったが、最近では人口増加に転じ、ライプツィヒなどは人口増加率をみればドイツでもフランクフルトなどの成長都市よりも高くなっている。このような状況が、それまでずるずると人口減少をしていたデーリッチュの立ち位置を大きく変えているのではないだろうか。
 この5年間ぐらいは、難民と移民という外力によって支えられているところがあったかもしれないが、今のデーリッチュはライプツィヒとハレのトーマス・ジーバーツが指摘するところの「ツヴィシュンシュタット」として位置づけられることで成長しているような印象を受ける。そうであれば、それまでの人口減少という課題から、郊外的開発というまったく違う課題に近い将来、直面するような気がする。

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<デーリッチュの駅前道路>

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<車道を狭めて歩道を拡幅している>

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<幅員が広く歩きやすい歩道>

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<多くのお店は移民系の人によって営まれているようだ>

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<ハイ・ストリートには人が結構、多く出ている>

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<なんと平日であるにも関わらず、大道芸人がピアノを演奏していた>
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